【完】太陽の王が愛する妖精王の寵児

奏直

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22.狂った歯車の回る馬車

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揺れる馬車の中ぼんやりとした意識で流れる風景を見ていた。
ガタガタと進む馬車に揺られていると意識がまた遠のいていく。
遠のく意識に瞳が閉じかけた時、一台のすれ違う馬車がいやにゆっくりと窓から見えた。
閉じかけた目が開く。
その瞳に映る光景に涙が自然と流れる。
声を出したくても掠れた声しか出てこない。
その声も直ぐに出てこなくなる。
馬車がゆっくり過ぎていき見えなくなる。
体を動かしたくても指一本動かすことができない。
喉が渇いて引き攣るような痛みに、あげられない叫び声に絶望する。
次第に意識が保てなくなり気を失ってしまう。



(私が気づいていれば…)

◆◆◆◆◆◆◆

あの日の後悔に自然と眉間に皺がよる。
閉じていた瞳を薄く開くと睨んでいるように見えるだろう。

「へ…陛下よろしいですか?」

「よい。だが全ての資料を提出しろ。」

「す…全てですか?」

「そうだ。全てだ。」

「いや…しかし…はい。かしこまりました。」

「本日の朝議会はこれで終了する。」

席を立ち自身の執務室へと向かう。
私の後には側近の者たちがついて来る。

ネイト宰相の息子…つまりフィアの兄である次期宰相候補のルドルフ・フォンス・オーウェンと近衛騎士のウィリアム・レノス・オーウェン。
2人は私と同じ18歳。
従兄弟のゼノーディス・レダ・マーキスは文官候補。
ゼノスは16歳になったばかりだ。
王の諜報員で伯爵令息のレオンハルト・イオ・ヴェルドは19歳。
そして彼らを取りまとめるのはダニエル・ジル・マーキス。
ダニーは現在23歳となり私の専属執事となった。
執事と言っても私の右腕として政務に携わっている。

5人は私が自ら選んだ。
ダニー以外は本来であればラピスラズリの誓いについて知らされる年齢ではないが、私の側近となるのと同時に詳しく話した。
公私の別ができる彼等は年も近く気安い性格で付き合いやすい。
それに彼等は私と共にフィアを探してくれている。
兄である2人はもちろんフィアの姉と結婚したダニーは率先して捜索を行っている。
中でもウィルには鬼気迫るものがある。
それも仕方ない事だが。

執務室に入り自身の椅子に腰掛ける。
扉の閉まる音と共に砕けた口調で彼等は話始める。

「最後のダバル伯爵は黒と見ていいな。」

「資料どのくらい出すかな?」

「全部出したかなんて僕が見れば直ぐに分かるから隠しても無駄なのに。」

「レオンが諜報活動していることは極秘事項なんだから自重しろ。」

「分かってますよダニー執事長。」

「ところでジーク、朝議会中に何を考えていた?」

「さすがウィルよく気付いたね。まぁ、もうすぐフィアが連れ去られてもうすぐ7年だ。だから…昔のことを思い出して後悔していた。」

「すまない。」

「ウィルのせいではないと何度も言っているだろう。あの時ウィルも大怪我を負ったのだから。それに、私の腕のラピスの紋章がフィアが無事であることを教えてくれている。"ラピスラズリノ紋章ハ伴侶ナル者ガ死スレバ変異ス。ソレガ非業ノ死トナラバ伴侶ナル者ノ怒リデ身ヲ焼ク。"と記録がある。紋章の変異はない。フィアは無事だ、必ず助ける。」

私の言葉に皆が力強く頷く。

「あの日起きたことを私は忘れない。フィアを連れ去った奴らを絶対に許さない。」

あの日、私が間に合っていれば…


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