【完】太陽の王が愛する妖精王の寵児

奏直

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14.鈍感のち喧嘩

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フィアと想いが通じ合ってからの日々は穏やかに過ぎて行った。
私は想いが通じ合ったからと言って、直ぐにラピスラズリの誓いをしようなんて思わなかった。
何故ならフィアはラピスラズリの誓いを、本当の意味では分かっていないと思ったからだ。
誓いをしたらフィアを一生涯縛り付ける事になるのだから、私の考えだけでは進められない。
私はフィアを本当に愛している。
今フィアが離れていったとしても、私は他の女性を愛することはないと確信している。
でもフィアが同じ様に感じているかは分からない。
だから今は穏やかな時が過ぎるのを楽しんでいた。
のだが…

「ねぇ、ギル?」

「ん?何だいフィア。」

今日も2人仲良くお茶をしながら話をしていると、フィアが質問をしてくる。

「ギルは…その…」

「どうしたのフィア?気になることがあるなら言って?」

「私ずっと気になってて…。」

「いいよフィア。言って。」

意を決した様にフィアが勢いよく口を開く。

「ギルは妖精の加護持ちですか?」

「はい…。」

勢いに押されて答える。

「そうなのですね…。ありがとうございます。」

なぜか肩を落とし小さくなるフィア。

ーおかしい…フィアにあるはずのない耳に尻尾まで垂れて見える。それにフィアは私が加護持ちだと知って何故落ち込むんだ?

「フィア?何か気に入らなかった?」

「え?あっ、そうじゃないの。ただ…。」

「ただ?」

「あのねギル。私も妖精の加護を持っているの。」

「うん。」

ーあっ、また垂れた。何故?フィアが加護を持っているのは知っていたよ。前にフィアが呟いていたからね。それで何故、落ち込むんだ?

「フィア?」

「……………………………。」

「フィア?」

「私も妖精の加護を持っているのに………。私じゃ…ギルの……に…なる…は……ないの?」

フィアの最後の呟きは声が小さすぎてよく聞こえなかった。
でもさっきよりも更に落ち込んでしまったことはよく分かる。
フィアが何を気にしているか気になった。

「フィア?ちゃんと話して。」

「…いいの。」

「フィア話して。」

「ううん。大丈夫だから…」

「フィア‼︎」

頑ななフィアに私もつい大きな声を出してしまう。
びくりとしたフィアを見て、しまったと思う。
軽く息を吐き自分を落ち着けてから言葉を続ける。

「フィア。ちゃんと話してほしい。」

「ギル…。ギル、私も妖精の加護を持っているの。」

「うん。それはさっきも聞いたよ。」

「ギルも妖精の加護を持っているでしょ?」

「うん。そう言ったね。」

「……ギルって…鈍いのね。」

フィアの周囲の温度が下がったと感じた。
どことなく辺りも暗くなった気がする。

「フィア? 怒ってる?」

「今日はもう帰る‼︎」

「フィア‼︎」

「……。また明日。」

「あっ…」

フィアは帰ってしまった。
怒っていたが明日も来てくれる事だけに安堵の息を漏らす。
フィアが来てくれなければ私達は会えないのだから…
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