【完】太陽の王が愛する妖精王の寵児

奏直

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9.葛藤

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あれから5ヶ月が経った。
私達は毎日あの庭で会っては、他愛のない事を話した。
日々の中のほんの一時だけど、フィアと過ごす時間は私にとって何よりのご褒美だった。

フィアとの約束の時間までは、王になるのに必要な事を学んでいる。
焦らずに着実に知識を着けようと決めていた。
叔父が作ってくれた時間を無駄にしないために、それでも早く政務に携われる様に。
それに、少しづつだが叔父から書類が届く様になった。
それが嬉しかった。
ダニーは3ヶ月ほど前、王立学園に戻った。
あの時は漸く安心してもらえた安堵と、信頼できる兄がいなくなる不安とで複雑な気持ちになったなと思い出す。
私はマーキス公爵邸に来て、冷静に考え、客観的に物事を捉える事ができる様になったと思う。
それだけ心が落ち着いたのだ。
それにはフィアの存在が大きい事は間違いない。
フィアと出会えた事は私にとって、それ程までに大きな出来事だったのだ。

そうそう。今では打ち解けて話す様になったから分かったのだが、フィアは思ったよりも元気な令嬢だった。
所作は淑女教育をきちんと受けているだろうことが伺えるんだけどね。
この間フィアに聞いた話では私に会いに来るために邸の使用人達を、撒いてきていると誇らしげに言っていたな。
草むらに隠れたり、時には木に登ったりしていると言っていた。
初めの頃は大人しい令嬢だと思った彼女は、大きな猫をかぶっていた様だ。
だが、そういった一面を知れるのも仲が深まっているからと思えるから嬉しくなる。

私達2人が会っていて気付いた事だが、何故か邸の誰もフィアと会っていることを知らなかったのだ。
知らないと言うよりも気付いていないと感じる。
これもフィアが突然現れる事と関係があるのかもしれない。
でも今のところは誰にも邪魔されずフィアと過ごせるから良しとした。
分からないことをただ先送りにしたとも言えるか…

ーいや…ただ真実を暴きたくなかったのかもしれない。

私は最近になってある事を自覚していた。

ーフィアが好きだ

私はフィアに恋をしている。
フィアを愛しく思っているのだ。
初めは理解し難い状況からフィアに出会い、そのフィアの言った事で泣き、心が軽くなった。
衝撃的な出会いだったのもあって興味を持った。
その後、会って一緒に過ごすうちに元気で可愛いフィアに惹かれていった。
それに気付いたのは本当に最近だった。
だからこそ今の状態のままで良い思っている自分がいる。

それに私だって自分の姓がラディウスだと伝えていないし、国王であることも伝えていない。
早く王都に戻らなければと思う一方で、フィアと離れたくないと思って葛藤している自分がいる。

ー早く本当の事を言わなければ……でも………

毎日そう繰り返していた。

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