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6巻
6-3
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人間的な仕草とともに言葉を紡ぐ探女の顔は、先からずっと無表情でそのアンバランスさは滑稽に思えるほどだった。
式神は親しみや愛情などという感情を持ち合わせてはいない。オブラートに包む、という言葉も知らなければ冗談を言うこともない。真顔でからかうなんて気の利いた真似もできない。彼らが持つのは、術者に対する忠誠心だけだ。その口から出る言葉は彼らの認識する全てである。
(つまり、こいつにとって俺は幼児のようなものなんだろうぜ)
小さく、舌打ち。問いを飲み込んだ理由は、答えが分かっていたからだ。面白くない事実を確認して、更に不機嫌になる自分の姿が目に浮かぶようだった。
「まったく、お前まで俺のことをガキ扱いしやがって」
「申し訳御座いません」
謝りつつも、やはり否定の言葉はない。辰史は唇を歪めて「まあいい」と呟いた。
「その様子だと依頼人を見つけて来たんだろう? 早く話せ」
すぐ近くに転がっていた万年筆とレポート用紙を手に取る。表紙を開けば最初の数ページは丑雄の神経質そうな字でびっしり埋められていた。見難い、と眉を顰めながら内容を確認。片付けても良さそうだと判断して、切り取っておく。変なところで大雑把なあの従兄は、時折こうしてメモを片付け忘れることがある。
――やれやれ。世話のかかる奴だ。
肩をすぼめながら、辰史は新しいページに日付を書き込んだ。その様子を見ていた探女が、頃合いを見計らって口を開いた。
事の仔細は、こうである――
新興宗教。
それは古来信仰を集める伝統的な宗教とは異なった、新しい宗教のことを指す。その中には霊感商法による悪質な勧誘、救いを盾にした犯罪行為などで世間を騒がせる団体もあり、昨今ではカルト教団と同一視されることも少なくない。これを嫌う宗教家たちは、新興宗教・カルト教団と区別をつける意味で〈新宗教〉という呼称を用いているようだ。
輝広教も、近年創始された新しい宗教の一つである。
団体はここ十年ほどで急成長し、メディアに取り上げられることも少なくない。尤も、それはマスコミや世間からの好意を意味するわけではなかったが――
「人類の幸福と繁栄、地上の楽園化、神々との決別を目指して!」
今時、ファンタジーやゲームの中でも叫ばれないような思想だ。大衆が向ける興味は、そんな非現実的な主張を声高にする彼らへの冷やかしだった。オカルトマニアや宗教研究者から見ても彼らの活動は馬鹿馬鹿しく、またその教義は突拍子もなかったのである。輝広教は「地上にあまねく輝きをもたらす」という漠然とした教義を掲げ、〈ヘイレル〉と呼ばれる存在を主と仰いでいた。
ヘイレル。Heilel――
ラテン語ではLucifer――ルシファーという。
一般的にもそちらの呼び名が有名だろう。光を掲げる者、の意を含む堕天使である。キリスト教において、神と人類の敵であるとされる悪魔サタンの同義語ととられることもしばしばである。ルシファーはその名が示す通り、明けの明星或いは金星にも例えられる光の天使であった。かつて彼は創造主たる神に反逆し、地に堕とされたとされている。
「ヘイレルが天から堕ちたことにより、地上には光が溢れるようになりました。また、彼はその際、人間に知性と炎をももたらしているのです。それは何を意味するのでしょうか? すなわち、今日の人間があるのはヘイレルの導きによるものなのです。地に堕とされた彼は、それでも猶、人間を横暴な神の支配から解放しようと活動しています。創造主たる神こそが絶対であると洗脳された人類はそれに気付いておりませんが、ヘイレルこそが真に人類の味方なのです。ヘイレルの徒である我々は、無邪気にも敵を崇める同胞の目を覚まそうと日夜布教に励んでおります」
駅前でそんな演説をする輝広教の信徒を、辰史も見たことがあった。
目に痛い黄丹色の衣服で身を固め、
「我々は今こそ自立の道を歩み、真の楽園を勝ち取るべきなのです」
と口を揃えて言う光景を思い出す。非現実的な世界を知る辰史の目にさえ、彼らの行動は異様に映ったのだった。
「……わざわざ日本でやる必要があるのか? その活動」
本人たちの前では呑み込んだ指摘を、探女に問う。
「敵を崇めるも何も、日本人の多くは西洋宗教に無関心だろう。学術的な興味を抱いて研究している奴は少なくないかもしれないが。困ったときに祈る相手だって神道系の神がほとんどだ。ああ主よ、なんて十字を切ってみせる奴なんかそうそういないぜ」
辰史は大仰に肩をすぼめた。返す式神の言葉は淡々としている。
「だからこそ、でしょう。無関心だからこそ乗せられやすい。吹き込まれた知識を偏ったものであると認識することができずに、納得してしまう。一方でそういった胡散臭い団体を迫害するような者はこの日本には存在しないのですから、活動するにはもってこいだというわけです」
「ふうん」
そういうものか。辰史は相槌を打つ。探女は、更に説明を続けた。
「輝広教において、教祖は〈明星〉と呼ばれます」
彼らの崇めるヘイレルが明けの明星に例えられるためだろう。
現在の〈明星〉は名を石垣直央という。二十二歳の青年であるとのことだった。得体の知れないカルト教団をまとめるには随分と若い。しかも彼が〈明星〉になったのは更に今から四年も前の話である。
「石垣直央の父親は輝広教の開祖であり、先代〈明星〉でもありました」
世襲か。と、辰史は呟く。
「けど、それにしてはおかしいな」
「おかしい、とは?」
探女が義務的に問い返す。
「それくらいの歳なら、まだ父親だって健在だろう。よっぽど遅くに子供を作ったんじゃなければ、うちの親父と同年代かもう少し若いはずだ」
「でしょうね」
「婿養子で何かと風当たりの強いうちの親父でさえ、まだ当主を降りるつもりはないと言っているんだ。まして開祖として宗教団体を興したような熱意ある人物が、そんなに早く教祖の座を譲ると思うか? 人を集めるためのパフォーマンスにしても無謀すぎる。高校生教祖と言えば注目は集まるかもしれない。が、それを頼りなく思う奴も出てくるはずだ」
言った後で、辰史は苦い顔をする。
――まるで、自分自身を否定しているようだ。
人を集めるためのパフォーマンス。注目は集まるかもしれない。しかし縋るには、頼りない。何気なく口にしたそれらの言葉は、他人から見た自分を的確に表しているように思われた。
そんな辰史の微妙な表情には気付かなかったのだろう。式神は淡々と答えるのみである。
「いいえ。譲らざるを得なかったのです」
「譲らざるを得なかった?」
理由が分からずに、辰史は小首を傾げた。語尾を上げて続きを促す。
「不慮の事故――と、依頼人は申しておりました」
探女の手が懐から古びた新聞を取り出した。発行年は四年前になっている。辰史は新聞を受け取ると、紙面を眺めた。小さな赤枠で囲われた記事を見つけて読めば、飲酒運転の男がガードレールに衝突し死亡とある。
「〈氏は新興宗教団体、輝広教の責任者だった〉ね。成程、それで息子が急遽親父の跡を継ぐことになった、と。そういうわけか」
「はい。石垣直央は元々、信者たちから〈明星の子〉と呼ばれ慕われていたようです」
「〈明星の子〉か。そのまま、教祖の子を意味するわけではないんだろう?」
「はい。石垣直央は幼い頃に一度だけ心肺停止からの生還を果たしているそうです。この出来事は輝広教信徒たちの間で〈ヘイレルの奇跡〉と呼ばれました」
――これこそがヘイレルの意思である。
開祖も息子の生還をそう喧伝して回ったのだろう。
――主は我らを救うため、私の息子を地の底から再びこの地上へ使わした、と。
こうして石垣直央はヘイレルの子と同義である〈明星の子〉として再誕した。それを知る信者たちにしてみれば、開祖の死と若すぎる〈明星〉の誕生も何ら問題ではなかったのだ。むしろ先代の醜聞とさえ言えるその死は、新しい〈明星〉に悲劇的なエピソードと新たなカリスマ性を与えたとも言える。
「主は全てを知っていた。ゆえに相応しくない先の〈明星〉を見捨て、自らの子を救世主として立てたのだ」
「しかし大いなる父に愛されたが故に〈明星の子〉は地上における父を失った」
「天から堕ちた。それゆえに〈明星〉の進む道は険しい。我々は信徒として新たな〈明星〉を支えてゆかねばならない」
こうして輝広教は以前より一層、熱心な布教活動に励むようになったのだという。
「薄ら寒い話だな」
まるで別世界の話だ。辰史は理解不能といった風に眉を顰めた。
「何でそんな電波な宗教にハマる奴がいるのか、俺には分からない」
「何かを拠り所にすることで、心の平穏を得たいのでは? 何も信じることなく生きる人間の行動には、自己責任という言葉が付きまといます。人生に対する不満も、失敗も、全て自分自身が招いたこと――他人のせいにするだけの横暴さや、力のない人間は常にそう考え続けなければなりません。自己を持つ人間にとって、自分自身を否定しなければならない状況は何より辛いものでしょう」
端から人間の心理を理解する気のない式神は、酷く辛辣だ。
身も蓋もない。そう思いつつも、返す言葉を見つけられずに辰史は口を噤んだ。丑雄がこの場にいたのなら、そんな探女の言葉に「それこそ救いがない」と憤慨しただろう。得意の救いだとか報いだとかいう言葉を使って、神に救いを求めるしかない人間の心情を説明してくれたのかもしれない。
(俺も無神経さでは探女のことは言えんからな……)
胸中で呟く。人情の機微に疎いことは自覚しているのだ。ただ、今まであまり気にせず通り過ぎてきた分野だけあって、少し意識をしてみたところで理解できるものではない。
――まあ、気が向いたら丑雄に訊いてみるか。
辰史は珍しくそんなことを思いつつも、質問を変えた。
「依頼者は?」
「開祖の時代から輝広教の運営を手伝う九人の幹部。そして一部の信者です」
急な話題の転換にも、式神は淀みなく答える。
「多いな。新しい教祖はワンマンなのか?」
「そう表現するのも――間違いではないのでしょうね。彼らは〈明星〉のやり方に失望した、と申しておりましたから」
「失望?」
と訊き返したとき、丁度用紙の一枚目が埋まった。「おっと」辰史は呟き、万年筆を置く。それに気付いた探女も唇を閉じた。しばし問答を中断して、内容を確認。書き漏らしはないようだった。辰史の手がページをめくり、再び万年筆を取る――と同時に探女も話を再開する。
「はい。彼らの話では、新しい〈明星〉は入信者に多額の入会金と会費を要求し私腹を肥やしているとのことです。元々、輝広教には入会金や会費を取るといったシステムは存在していませんでした。依頼人たちは特に熱心な信者で、それゆえに石垣直央の裏切りが許せないようです」
「裏切りねえ」
「自分たちは純粋にヘイレルの教えを信じ、人類を救うために活動してきた。そのために家族や友人からの信頼を失った者も少なくない。であるというのに、主の代弁者たる〈明星〉が信徒を苦しめている。これは許されることではない――とのことです」
不正に金を搾り取られる信者たちを救おうにも、頼るべき者がいない。本来彼らを救うべき教祖が、敵対者となってしまっているのだ。それでも盲目的に教祖を信奉する信者の一部は、法に背くような行為で資金を得ているようである。
――彼らのやっていることは許されることではない。が、それも元はと言えば〈明星〉の強欲さが招いた罪である。信者のほとんどは根が善良で、人類の繁栄と幸福を心から願っている。だからできれば、警察を頼って彼らを売るような真似はしたくない。
それが依頼者の言い分だった。
胡散臭い、と辰史は思う。教祖を排除できるような人間たちが、道を外れた仲間を粛清できないはずがない。逆に言えば、仲間を許せる寛大な人間たちが、自分たちの教祖を許せないとも思えない。そこには矛盾が存在する。
――ということは、依頼人たちにも警察に頼れない理由があるということだ。
「へえ。報復屋に依頼するような奴らが善良ねえ……」
辰史は皮肉っぽく唇を歪めた。
「〈ヘイレルは傲慢な神の手から人類を救う為に、天使の翼をもぎ取り堕天した。自分たちも教団の膿を出し、一般信者を救うために手を汚す覚悟である〉と、彼らはそうも言っておりました」
探女は眉一つ動かすことなく依頼者の言葉を代弁する。辰史には苦笑することしかできない。
「よく分かった。つまり、かかわりあうだけ無駄だってことだろう」
ぱちん。
聞いた話を全て書き終えた辰史は、万年筆にキャップをすると、レポート用紙とともに卓袱台の上へ放った。咎めるような探女の視線が突き刺さる。
「こんなのを御祖父様が相手にするかよ」
「しかし――」
唇を尖らせる辰史に、探女が何かを言おうとしたときである。ガラッと引き戸の開く音がした。そこに、尊と丑雄の声が続く。
「ただいま、辰史」
「帰ったぞ。大人しく留守番をしていたか?」
辰史がそれに答えるより早く、丑雄の顔がひょいと広敷から覗いた。
「何だ、探女もいたのか。依頼か?」
向き合っている辰史と探女の姿を認めたその瞳に、深刻な色が浮かぶ。
「依頼というほどのものでもないさ」
そう。依頼というほどのものではない。
胡散臭いカルト教団。金儲けの道具として人の信仰心を利用する悪徳経営者。己の利を優先するがゆえに対立する教祖と幹部。どこにでもあるような構図だ。
彼らは報復屋という存在を知らなければ、内部分裂を起こしただけだっただろう。そうして、世の中にまた一つ新しいカルト教団が増えていた。依頼を受けなければ今からそうなる。ただ、それだけの話だった。
辰史はレポートを丑雄に渡してやりながら、掻い摘んで話した。
従兄は静かに経緯を聞いている。最低限の説明と相槌。説明は淡々と進み、ものの十分程度で二人の間には会話がなくなる。
「もし彼らの訴えが真実だとすれば、見過ごしてはおけない」
話を聞き終えた丑雄が、気難しい顔でそう言った。見逃していることがないか確認しているのだろう。レポートの上を往復する瞳は、獲物を品定めする猛禽類のように鋭い。そんな従兄の顔を眺めつつ、辰史は答える。
「いや、まあ確かにカルト教団は見過ごして良いものじゃァないのかもしれない。信仰を餌にした悪徳商法も然りだ。お前の言う通り、こいつらみたいな稼ぎ方は良くない。けど、俺たちが関わるような相手ではないと思うぞ。仮に信仰が本物だったとしても、こいつらは救世主ごっこに酔ってるだけだ」
従兄の台詞を予想していなかったわけではないが。
主張する辰史を、丑雄は冷たく見返した。
「いつもは俺に感情的になるなと言うお前が、珍しく決めつけるじゃないか」
皮肉めいた言葉に、辰史は口を噤む。
「判断をするのは、お前じゃない」
丑雄はぴしゃりとそう言った。その手が、いつの間にか広敷に腰掛けていた祖父に、レポートを渡す。辰史は従兄の動作につられるようにして、祖父に視線を向けた。
「……どうなさいますか? 御祖父様」
沈黙で従兄の指摘を肯定しながら、問う。
渡されたレポートに目を通していた尊はやがてスッと顔を上げた。
「探女」
深い憂いを帯びた声が式の名を呼んだ。じっと沈黙を守り、主人の命令を待っていた式の姿は、その瞬間再び黒蝶に戻った。年齢のわりには皺の少ない指先が式神を誘う。ゆらゆらと中空を飛んでくる蝶の姿を見守る瞳の色は、優しい。
やがて、蝶が静かにそこへ舞い降りたのを見届けると尊は口を開いた。
「依頼者から話を聞いてみることにしよう」
口元を彩るのは、奇妙な笑みだった。依頼者への同情ではない。苦笑でもない。辰史は怪訝に思いながら、真意を探ろうと祖父の顔をじっと見つめようとした。
それが出来なかったのは、次の瞬間に側頭部を小突かれたからだ。
「あだっ」
間抜けな悲鳴を上げて、辰史は思わず尊から視線を外してしまった。隣では元凶の従兄が肘を突き出しながら「ほら、言っただろう」と、口元をにやつかせている。妙に得意気な、腹の立つ顔だ。そんなことを思いながら、辰史はすぐさま広敷に座る従兄の背を蹴り上げた。
浅く座っていた丑雄の姿が、視界から消える。胸の空く思いだ。ついでに頭の中からは、祖父の浮かべていた奇妙な笑みへの疑問もすっかり消し飛んでいた。
「辰史っ、お前というやつは……!」
腰のあたりを押さえながら、丑雄が立ち上がった。
「何だよ。先に手を出してきたのはお前だろうが」
「お前には軽い冗談も通じないのか」
「通じてるさ。だから可愛い冗談で返してやったんだよ」
ふん、と台詞とは裏腹に可愛げなく鼻を鳴らす辰史に、丑雄の顔が引き攣った。
「そうか」
低い声が頷いた。引き攣った唇を無理やり笑みの形に歪める。そんな従兄の表情には気付かずに、辰史は「そうさ」と胸を張って答える。ぴしっと空気がひび割れるような音が聞こえた気もするが、現実的に考えて不可能なので気の所為だと思うことにした。
「やはり、俺には冗談の素質がないらしい」
「ああ。素質ゼロだ。もっと励めよ」
「そうだな。俺も、たまにはお前を見習った方が良いのかもしれないな」
不吉な宣告とともに長い腕が伸びて、辰史の足を掴んだ。抗議は間に合わない。視界の端では祖父がやれやれといった顔をしている。辰史は引き摺られないよう畳に爪を立てたが、従兄の方が力は強い。両手は容易く宙に浮き、次の瞬間目の前に火花が散った。背中から胸へと突き抜ける重い衝撃に、息が詰まる。
「な……!」
痛みに声も出ない。背中から土間に落ちた辰史は、したり顔で見下ろす丑雄を睨み付けた。
「てめえ……! やりやがったな、丑雄のくせに!」
「怒るな。可愛い冗談だ」
唇が満足げに微笑む。先までの自分も同じような顔をしていたことは忘れて、辰史はカッと眦をつり上げた。他人の勝ち誇った笑みというのは、どんなに自分と似ていても無性に腹が立つものだ。
「上等だ。表に出ろ。泣くまでぼっこぼこにしてやる」
「それよりも先にお前が泣き出すだろうな。鏡で見てみろ。もう涙目だ」
良く似た二つの顔が睨み合い、罵り合い、終いには取っ組み合いが始まる――
式神は親しみや愛情などという感情を持ち合わせてはいない。オブラートに包む、という言葉も知らなければ冗談を言うこともない。真顔でからかうなんて気の利いた真似もできない。彼らが持つのは、術者に対する忠誠心だけだ。その口から出る言葉は彼らの認識する全てである。
(つまり、こいつにとって俺は幼児のようなものなんだろうぜ)
小さく、舌打ち。問いを飲み込んだ理由は、答えが分かっていたからだ。面白くない事実を確認して、更に不機嫌になる自分の姿が目に浮かぶようだった。
「まったく、お前まで俺のことをガキ扱いしやがって」
「申し訳御座いません」
謝りつつも、やはり否定の言葉はない。辰史は唇を歪めて「まあいい」と呟いた。
「その様子だと依頼人を見つけて来たんだろう? 早く話せ」
すぐ近くに転がっていた万年筆とレポート用紙を手に取る。表紙を開けば最初の数ページは丑雄の神経質そうな字でびっしり埋められていた。見難い、と眉を顰めながら内容を確認。片付けても良さそうだと判断して、切り取っておく。変なところで大雑把なあの従兄は、時折こうしてメモを片付け忘れることがある。
――やれやれ。世話のかかる奴だ。
肩をすぼめながら、辰史は新しいページに日付を書き込んだ。その様子を見ていた探女が、頃合いを見計らって口を開いた。
事の仔細は、こうである――
新興宗教。
それは古来信仰を集める伝統的な宗教とは異なった、新しい宗教のことを指す。その中には霊感商法による悪質な勧誘、救いを盾にした犯罪行為などで世間を騒がせる団体もあり、昨今ではカルト教団と同一視されることも少なくない。これを嫌う宗教家たちは、新興宗教・カルト教団と区別をつける意味で〈新宗教〉という呼称を用いているようだ。
輝広教も、近年創始された新しい宗教の一つである。
団体はここ十年ほどで急成長し、メディアに取り上げられることも少なくない。尤も、それはマスコミや世間からの好意を意味するわけではなかったが――
「人類の幸福と繁栄、地上の楽園化、神々との決別を目指して!」
今時、ファンタジーやゲームの中でも叫ばれないような思想だ。大衆が向ける興味は、そんな非現実的な主張を声高にする彼らへの冷やかしだった。オカルトマニアや宗教研究者から見ても彼らの活動は馬鹿馬鹿しく、またその教義は突拍子もなかったのである。輝広教は「地上にあまねく輝きをもたらす」という漠然とした教義を掲げ、〈ヘイレル〉と呼ばれる存在を主と仰いでいた。
ヘイレル。Heilel――
ラテン語ではLucifer――ルシファーという。
一般的にもそちらの呼び名が有名だろう。光を掲げる者、の意を含む堕天使である。キリスト教において、神と人類の敵であるとされる悪魔サタンの同義語ととられることもしばしばである。ルシファーはその名が示す通り、明けの明星或いは金星にも例えられる光の天使であった。かつて彼は創造主たる神に反逆し、地に堕とされたとされている。
「ヘイレルが天から堕ちたことにより、地上には光が溢れるようになりました。また、彼はその際、人間に知性と炎をももたらしているのです。それは何を意味するのでしょうか? すなわち、今日の人間があるのはヘイレルの導きによるものなのです。地に堕とされた彼は、それでも猶、人間を横暴な神の支配から解放しようと活動しています。創造主たる神こそが絶対であると洗脳された人類はそれに気付いておりませんが、ヘイレルこそが真に人類の味方なのです。ヘイレルの徒である我々は、無邪気にも敵を崇める同胞の目を覚まそうと日夜布教に励んでおります」
駅前でそんな演説をする輝広教の信徒を、辰史も見たことがあった。
目に痛い黄丹色の衣服で身を固め、
「我々は今こそ自立の道を歩み、真の楽園を勝ち取るべきなのです」
と口を揃えて言う光景を思い出す。非現実的な世界を知る辰史の目にさえ、彼らの行動は異様に映ったのだった。
「……わざわざ日本でやる必要があるのか? その活動」
本人たちの前では呑み込んだ指摘を、探女に問う。
「敵を崇めるも何も、日本人の多くは西洋宗教に無関心だろう。学術的な興味を抱いて研究している奴は少なくないかもしれないが。困ったときに祈る相手だって神道系の神がほとんどだ。ああ主よ、なんて十字を切ってみせる奴なんかそうそういないぜ」
辰史は大仰に肩をすぼめた。返す式神の言葉は淡々としている。
「だからこそ、でしょう。無関心だからこそ乗せられやすい。吹き込まれた知識を偏ったものであると認識することができずに、納得してしまう。一方でそういった胡散臭い団体を迫害するような者はこの日本には存在しないのですから、活動するにはもってこいだというわけです」
「ふうん」
そういうものか。辰史は相槌を打つ。探女は、更に説明を続けた。
「輝広教において、教祖は〈明星〉と呼ばれます」
彼らの崇めるヘイレルが明けの明星に例えられるためだろう。
現在の〈明星〉は名を石垣直央という。二十二歳の青年であるとのことだった。得体の知れないカルト教団をまとめるには随分と若い。しかも彼が〈明星〉になったのは更に今から四年も前の話である。
「石垣直央の父親は輝広教の開祖であり、先代〈明星〉でもありました」
世襲か。と、辰史は呟く。
「けど、それにしてはおかしいな」
「おかしい、とは?」
探女が義務的に問い返す。
「それくらいの歳なら、まだ父親だって健在だろう。よっぽど遅くに子供を作ったんじゃなければ、うちの親父と同年代かもう少し若いはずだ」
「でしょうね」
「婿養子で何かと風当たりの強いうちの親父でさえ、まだ当主を降りるつもりはないと言っているんだ。まして開祖として宗教団体を興したような熱意ある人物が、そんなに早く教祖の座を譲ると思うか? 人を集めるためのパフォーマンスにしても無謀すぎる。高校生教祖と言えば注目は集まるかもしれない。が、それを頼りなく思う奴も出てくるはずだ」
言った後で、辰史は苦い顔をする。
――まるで、自分自身を否定しているようだ。
人を集めるためのパフォーマンス。注目は集まるかもしれない。しかし縋るには、頼りない。何気なく口にしたそれらの言葉は、他人から見た自分を的確に表しているように思われた。
そんな辰史の微妙な表情には気付かなかったのだろう。式神は淡々と答えるのみである。
「いいえ。譲らざるを得なかったのです」
「譲らざるを得なかった?」
理由が分からずに、辰史は小首を傾げた。語尾を上げて続きを促す。
「不慮の事故――と、依頼人は申しておりました」
探女の手が懐から古びた新聞を取り出した。発行年は四年前になっている。辰史は新聞を受け取ると、紙面を眺めた。小さな赤枠で囲われた記事を見つけて読めば、飲酒運転の男がガードレールに衝突し死亡とある。
「〈氏は新興宗教団体、輝広教の責任者だった〉ね。成程、それで息子が急遽親父の跡を継ぐことになった、と。そういうわけか」
「はい。石垣直央は元々、信者たちから〈明星の子〉と呼ばれ慕われていたようです」
「〈明星の子〉か。そのまま、教祖の子を意味するわけではないんだろう?」
「はい。石垣直央は幼い頃に一度だけ心肺停止からの生還を果たしているそうです。この出来事は輝広教信徒たちの間で〈ヘイレルの奇跡〉と呼ばれました」
――これこそがヘイレルの意思である。
開祖も息子の生還をそう喧伝して回ったのだろう。
――主は我らを救うため、私の息子を地の底から再びこの地上へ使わした、と。
こうして石垣直央はヘイレルの子と同義である〈明星の子〉として再誕した。それを知る信者たちにしてみれば、開祖の死と若すぎる〈明星〉の誕生も何ら問題ではなかったのだ。むしろ先代の醜聞とさえ言えるその死は、新しい〈明星〉に悲劇的なエピソードと新たなカリスマ性を与えたとも言える。
「主は全てを知っていた。ゆえに相応しくない先の〈明星〉を見捨て、自らの子を救世主として立てたのだ」
「しかし大いなる父に愛されたが故に〈明星の子〉は地上における父を失った」
「天から堕ちた。それゆえに〈明星〉の進む道は険しい。我々は信徒として新たな〈明星〉を支えてゆかねばならない」
こうして輝広教は以前より一層、熱心な布教活動に励むようになったのだという。
「薄ら寒い話だな」
まるで別世界の話だ。辰史は理解不能といった風に眉を顰めた。
「何でそんな電波な宗教にハマる奴がいるのか、俺には分からない」
「何かを拠り所にすることで、心の平穏を得たいのでは? 何も信じることなく生きる人間の行動には、自己責任という言葉が付きまといます。人生に対する不満も、失敗も、全て自分自身が招いたこと――他人のせいにするだけの横暴さや、力のない人間は常にそう考え続けなければなりません。自己を持つ人間にとって、自分自身を否定しなければならない状況は何より辛いものでしょう」
端から人間の心理を理解する気のない式神は、酷く辛辣だ。
身も蓋もない。そう思いつつも、返す言葉を見つけられずに辰史は口を噤んだ。丑雄がこの場にいたのなら、そんな探女の言葉に「それこそ救いがない」と憤慨しただろう。得意の救いだとか報いだとかいう言葉を使って、神に救いを求めるしかない人間の心情を説明してくれたのかもしれない。
(俺も無神経さでは探女のことは言えんからな……)
胸中で呟く。人情の機微に疎いことは自覚しているのだ。ただ、今まであまり気にせず通り過ぎてきた分野だけあって、少し意識をしてみたところで理解できるものではない。
――まあ、気が向いたら丑雄に訊いてみるか。
辰史は珍しくそんなことを思いつつも、質問を変えた。
「依頼者は?」
「開祖の時代から輝広教の運営を手伝う九人の幹部。そして一部の信者です」
急な話題の転換にも、式神は淀みなく答える。
「多いな。新しい教祖はワンマンなのか?」
「そう表現するのも――間違いではないのでしょうね。彼らは〈明星〉のやり方に失望した、と申しておりましたから」
「失望?」
と訊き返したとき、丁度用紙の一枚目が埋まった。「おっと」辰史は呟き、万年筆を置く。それに気付いた探女も唇を閉じた。しばし問答を中断して、内容を確認。書き漏らしはないようだった。辰史の手がページをめくり、再び万年筆を取る――と同時に探女も話を再開する。
「はい。彼らの話では、新しい〈明星〉は入信者に多額の入会金と会費を要求し私腹を肥やしているとのことです。元々、輝広教には入会金や会費を取るといったシステムは存在していませんでした。依頼人たちは特に熱心な信者で、それゆえに石垣直央の裏切りが許せないようです」
「裏切りねえ」
「自分たちは純粋にヘイレルの教えを信じ、人類を救うために活動してきた。そのために家族や友人からの信頼を失った者も少なくない。であるというのに、主の代弁者たる〈明星〉が信徒を苦しめている。これは許されることではない――とのことです」
不正に金を搾り取られる信者たちを救おうにも、頼るべき者がいない。本来彼らを救うべき教祖が、敵対者となってしまっているのだ。それでも盲目的に教祖を信奉する信者の一部は、法に背くような行為で資金を得ているようである。
――彼らのやっていることは許されることではない。が、それも元はと言えば〈明星〉の強欲さが招いた罪である。信者のほとんどは根が善良で、人類の繁栄と幸福を心から願っている。だからできれば、警察を頼って彼らを売るような真似はしたくない。
それが依頼者の言い分だった。
胡散臭い、と辰史は思う。教祖を排除できるような人間たちが、道を外れた仲間を粛清できないはずがない。逆に言えば、仲間を許せる寛大な人間たちが、自分たちの教祖を許せないとも思えない。そこには矛盾が存在する。
――ということは、依頼人たちにも警察に頼れない理由があるということだ。
「へえ。報復屋に依頼するような奴らが善良ねえ……」
辰史は皮肉っぽく唇を歪めた。
「〈ヘイレルは傲慢な神の手から人類を救う為に、天使の翼をもぎ取り堕天した。自分たちも教団の膿を出し、一般信者を救うために手を汚す覚悟である〉と、彼らはそうも言っておりました」
探女は眉一つ動かすことなく依頼者の言葉を代弁する。辰史には苦笑することしかできない。
「よく分かった。つまり、かかわりあうだけ無駄だってことだろう」
ぱちん。
聞いた話を全て書き終えた辰史は、万年筆にキャップをすると、レポート用紙とともに卓袱台の上へ放った。咎めるような探女の視線が突き刺さる。
「こんなのを御祖父様が相手にするかよ」
「しかし――」
唇を尖らせる辰史に、探女が何かを言おうとしたときである。ガラッと引き戸の開く音がした。そこに、尊と丑雄の声が続く。
「ただいま、辰史」
「帰ったぞ。大人しく留守番をしていたか?」
辰史がそれに答えるより早く、丑雄の顔がひょいと広敷から覗いた。
「何だ、探女もいたのか。依頼か?」
向き合っている辰史と探女の姿を認めたその瞳に、深刻な色が浮かぶ。
「依頼というほどのものでもないさ」
そう。依頼というほどのものではない。
胡散臭いカルト教団。金儲けの道具として人の信仰心を利用する悪徳経営者。己の利を優先するがゆえに対立する教祖と幹部。どこにでもあるような構図だ。
彼らは報復屋という存在を知らなければ、内部分裂を起こしただけだっただろう。そうして、世の中にまた一つ新しいカルト教団が増えていた。依頼を受けなければ今からそうなる。ただ、それだけの話だった。
辰史はレポートを丑雄に渡してやりながら、掻い摘んで話した。
従兄は静かに経緯を聞いている。最低限の説明と相槌。説明は淡々と進み、ものの十分程度で二人の間には会話がなくなる。
「もし彼らの訴えが真実だとすれば、見過ごしてはおけない」
話を聞き終えた丑雄が、気難しい顔でそう言った。見逃していることがないか確認しているのだろう。レポートの上を往復する瞳は、獲物を品定めする猛禽類のように鋭い。そんな従兄の顔を眺めつつ、辰史は答える。
「いや、まあ確かにカルト教団は見過ごして良いものじゃァないのかもしれない。信仰を餌にした悪徳商法も然りだ。お前の言う通り、こいつらみたいな稼ぎ方は良くない。けど、俺たちが関わるような相手ではないと思うぞ。仮に信仰が本物だったとしても、こいつらは救世主ごっこに酔ってるだけだ」
従兄の台詞を予想していなかったわけではないが。
主張する辰史を、丑雄は冷たく見返した。
「いつもは俺に感情的になるなと言うお前が、珍しく決めつけるじゃないか」
皮肉めいた言葉に、辰史は口を噤む。
「判断をするのは、お前じゃない」
丑雄はぴしゃりとそう言った。その手が、いつの間にか広敷に腰掛けていた祖父に、レポートを渡す。辰史は従兄の動作につられるようにして、祖父に視線を向けた。
「……どうなさいますか? 御祖父様」
沈黙で従兄の指摘を肯定しながら、問う。
渡されたレポートに目を通していた尊はやがてスッと顔を上げた。
「探女」
深い憂いを帯びた声が式の名を呼んだ。じっと沈黙を守り、主人の命令を待っていた式の姿は、その瞬間再び黒蝶に戻った。年齢のわりには皺の少ない指先が式神を誘う。ゆらゆらと中空を飛んでくる蝶の姿を見守る瞳の色は、優しい。
やがて、蝶が静かにそこへ舞い降りたのを見届けると尊は口を開いた。
「依頼者から話を聞いてみることにしよう」
口元を彩るのは、奇妙な笑みだった。依頼者への同情ではない。苦笑でもない。辰史は怪訝に思いながら、真意を探ろうと祖父の顔をじっと見つめようとした。
それが出来なかったのは、次の瞬間に側頭部を小突かれたからだ。
「あだっ」
間抜けな悲鳴を上げて、辰史は思わず尊から視線を外してしまった。隣では元凶の従兄が肘を突き出しながら「ほら、言っただろう」と、口元をにやつかせている。妙に得意気な、腹の立つ顔だ。そんなことを思いながら、辰史はすぐさま広敷に座る従兄の背を蹴り上げた。
浅く座っていた丑雄の姿が、視界から消える。胸の空く思いだ。ついでに頭の中からは、祖父の浮かべていた奇妙な笑みへの疑問もすっかり消し飛んでいた。
「辰史っ、お前というやつは……!」
腰のあたりを押さえながら、丑雄が立ち上がった。
「何だよ。先に手を出してきたのはお前だろうが」
「お前には軽い冗談も通じないのか」
「通じてるさ。だから可愛い冗談で返してやったんだよ」
ふん、と台詞とは裏腹に可愛げなく鼻を鳴らす辰史に、丑雄の顔が引き攣った。
「そうか」
低い声が頷いた。引き攣った唇を無理やり笑みの形に歪める。そんな従兄の表情には気付かずに、辰史は「そうさ」と胸を張って答える。ぴしっと空気がひび割れるような音が聞こえた気もするが、現実的に考えて不可能なので気の所為だと思うことにした。
「やはり、俺には冗談の素質がないらしい」
「ああ。素質ゼロだ。もっと励めよ」
「そうだな。俺も、たまにはお前を見習った方が良いのかもしれないな」
不吉な宣告とともに長い腕が伸びて、辰史の足を掴んだ。抗議は間に合わない。視界の端では祖父がやれやれといった顔をしている。辰史は引き摺られないよう畳に爪を立てたが、従兄の方が力は強い。両手は容易く宙に浮き、次の瞬間目の前に火花が散った。背中から胸へと突き抜ける重い衝撃に、息が詰まる。
「な……!」
痛みに声も出ない。背中から土間に落ちた辰史は、したり顔で見下ろす丑雄を睨み付けた。
「てめえ……! やりやがったな、丑雄のくせに!」
「怒るな。可愛い冗談だ」
唇が満足げに微笑む。先までの自分も同じような顔をしていたことは忘れて、辰史はカッと眦をつり上げた。他人の勝ち誇った笑みというのは、どんなに自分と似ていても無性に腹が立つものだ。
「上等だ。表に出ろ。泣くまでぼっこぼこにしてやる」
「それよりも先にお前が泣き出すだろうな。鏡で見てみろ。もう涙目だ」
良く似た二つの顔が睨み合い、罵り合い、終いには取っ組み合いが始まる――
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