この世界で私は

れんほう

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第1章

冒険者都市

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 街に向かって足を進めていた朱音。時折街の人と思われる人達とすれ違ったりしたが、見慣れない服装だった。そして街の人達もそれは同じなのか不思議そうな顔をする人、怪訝そうな顔をする人、興味津々な顔をする人と様々だ。数分歩いたところで街の入り口についた。そして街の中にいる人たちの持っている物を見てギョッとした顔をした。

「け、剣…持ってる…」

剣を持つ人、斧を持つ人、弓を持つ人、杖を持つ人。他にも色々な武器を持っている人達が街の中に溢れかえっていた。

「ここ…どこなんだろう…」

人に声をかけて聞こうとしても、みんな目をそらしてそそくさとどこかへ行ってしまう。

「困ったな…」

朱音はあたりを見渡し、住宅とは違うような扉をしている建物を見つけた。とりあえずそこへ行ってこの世界のことを聞いてみようと再び足を進める。

「扉結構大きめなのね…」

 扉の前に到着するとやはり大きめなのが分かる。扉は朱音の身長の約倍ほどの大きさだ。朱音は深呼吸をした後、扉に手をかけた。

 ギギギッと軋むような音を鳴らしながら扉を開け、中を覗き込む。やはり住宅ではないようで、人で賑わっていた。おずおずと中に入り、改めてあたりを見渡す。中には大きな掲示板のようなものがあり、そこに人が集まっているようだった。少し離れた場所にはどこかに行った帰りだろうか、土汚れなどが付着した服を着た人達が酒盛りをしている。

「…ほんとにファンタジー世界みたいなところ…」

正面を向くと朱音を不思議そうな顔をして見つめている女性と目があった。朱音はとりあえずその女性にこの世界のことを聞くことにし、近づいた。

「あの…」

「はいはーい。どうされました?」

 女性はなんとも軽い感じの受け答えをしたあと、ニコッと微笑んだ。パッチリとした瞳、ぷっくりとした柔らかそうな唇、華奢な身体。朱音はその女性の容姿に思わず見惚れてしまった。

「どうされました?私の顔になにかついてます?」

「え?あぁ!?すみません!かわいいなと思って…!」

 慌てて謝る朱音を見て、女性はクスクスと笑う。顔を赤くしながら俯く朱音に女性は再び声をかける。

「珍しい装備してますけど、冒険者さんではないですよね?どちらからいらしたんですか?」

「冒険者?なんですか、それ?」

 女性は呆気に取られたような顔をしている。朱音もその顔に驚き、少し焦り始める。

「え、なんかおかしいこと言ったでしょうか…?」

「あ、あぁ、すみません。まさか冒険者を知らないとは思わなくて。」

 女性はコホンと1つ咳払いをすると、説明を始める。

「冒険者とは簡単に言いますと、街の外に出てモンスターを討伐に向かったりする方々のことを言います。もちろんモンスターにも強弱はありますが、みなさん自分に合ったモンスターを討伐しながら徐々にランクを上げていくんですよ。」

「ランク?」

「そこに掲示板があると思うんですが、そこに張り紙がしてあるのわかりますか?」

女性は掲示板を指差しながら説明を続ける。

「その張り紙はモンスターの討伐依頼なんです。簡単なネズミ狩りからドラゴン退治まで様々な依頼がありますね。あとあるのは、森の奥まで行かないと取れない木ノ実や薬草の採取依頼なんかもあったりします。」

「採取なんかもあるんだ。」

「はい。けれど、森の奥は強いモンスターがいたりして、初心者の方にはあまりおすすめしないんですよ。」

 女性は朱音に向き直るともう1度ニコッと微笑んだ。

「そしてここは、そんな依頼をまとめて冒険者さんにお伝えしている冒険者ギルドです。私はここで受付をしているカリンと申します。」

「あ、私は本宮朱音です。」

「珍しいお名前ですねぇ。異国の方ですか?」

「あ、ええと…そんなもんです。突然この近くにある森の前にでてきてしまって…ここがどこなのかさっぱりで…」

 しどろもどろになりながら朱音は掻い摘んでカリンに説明する。一通り説明をした朱音を見てカリンは少し考えるような素振りをした。そしてある提案をする。

「不思議なこともあるんですねぇ。そういうことでしたら、尚のこと冒険者登録した方がよろしいと思います。こちらのお金はもちろんですけど、住まいなんかもないでしょうし。この建物の隣に宿があります。冒険者なら格安で泊めていただけるはずですよ。」

「ほんとですか!?」

「はい。あぁ、それからここの街の名前と国の名前でしたね。この街の名前はトエルン。サンダルシアの国にある冒険者都市です。朱音さん、ようこそトエルンへ!」

 満面の笑みでカリンは笑う。その顔にホッとしながら朱音も笑った。
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