12 / 13
ドリームRプロジェクト
7
しおりを挟む
蓮と父の隆は、工場に入庫してきた車の点検作業をしていた。その矢先の出来事だった。
「失礼します」
作業の手が止まった二人の目の前に、スーツ姿の二人組が立っていた。一人は、白髪の初老の男、もう一人は若い背の高い男だった。
「お宅らは?」
「作業中に突然お邪魔してすみません。私達は、日本トランスミッション株式会社で企画をしております下尻と申します。彼は部下の市村です」
怪訝そうな顔をして、隆がこう答える。
「悪いんだけど、営業とかそういうのはお断りしてるんだよね」
「すみません、突然こう押しかけてこられては、そう思われても仕方ありませんね。私たち、トランスミッションの製造を行っているメーカーの物でして、今日はその、ドリームRプロジェクトの件で来ました」
蓮と隆は、一瞬顔を見合わせた。
「大変失礼、そういうことならうちに上がってください。蓮、この人たちを居間に案内してあげなさい。お茶もお出しするように」
お湯が沸騰する音がキッチンから聞こえると、蓮はその音に耳を傾けながら、茶葉を急須に入れる。お茶を用意して、居間に戻ると、その背の高い男が名刺を渡してくる。
「改めまして、日本トランスミッションの市村です」
「はじめまして。僕は、橋本蓮と申します」
「君がこのプロジェクトの立案者かい」
初老の下尻と名乗るその男が、笑顔でそう尋ねる。
「はい。監督をしております」
「そうですか」と答えた下尻は、笑顔のまま居間の座布団に腰を掛ける。
「クラウドファンディングの近況ボードを読ませてもらったけど、トランスミッションが必要なようだね。うちは、長いことトランスミッションの製作をしている会社なんだけど、よろしければ、弊社のトランスミッションを提供させて欲しいのだが」
「本当ですか!ぜひお願いします」
「君たちは、レースに出たいとは思わないかい?」
「思います。」
市村と下尻は顔を見合わせ頷いたあと、市村がこう言う。
「うちのミッションを使ってレースで勝ってくれれば、うちらにも宣伝効果が見込まれる。より多くの人に、うちの作ったミッションのことを知ってもらえるし、他社との差別化を図ることで市場での位置を強化できる。そしてあなた達は、無料でトランスミッションを使うことが出来る。」
市村は頂きますとひとこと言うと、お茶を啜った。
「こうして協賛をしてくれる企業は今回で二社目なんです」
市村と下尻は力強く頷く。
「君たち、SNSも活用してみたら良いと思う。我々のように興味関心を持つ企業はきっとあるはずです。なんども申し上げますが、このプロジェクトが有名になればなるほど、協賛してくれる企業も有名になるんです」
企業がプロジェクトに協賛することで自社のブランド名やロゴが広く露出し、認知度は高まる。特に今回のプロジェクトではSNSを活用することで、さらに多くの人々の目に触れる機会が増える。それは、まさしく的確な意見だった。蓮は、今度のミーティングでそれをみんなに提案して見ることにした。
「失礼します」
作業の手が止まった二人の目の前に、スーツ姿の二人組が立っていた。一人は、白髪の初老の男、もう一人は若い背の高い男だった。
「お宅らは?」
「作業中に突然お邪魔してすみません。私達は、日本トランスミッション株式会社で企画をしております下尻と申します。彼は部下の市村です」
怪訝そうな顔をして、隆がこう答える。
「悪いんだけど、営業とかそういうのはお断りしてるんだよね」
「すみません、突然こう押しかけてこられては、そう思われても仕方ありませんね。私たち、トランスミッションの製造を行っているメーカーの物でして、今日はその、ドリームRプロジェクトの件で来ました」
蓮と隆は、一瞬顔を見合わせた。
「大変失礼、そういうことならうちに上がってください。蓮、この人たちを居間に案内してあげなさい。お茶もお出しするように」
お湯が沸騰する音がキッチンから聞こえると、蓮はその音に耳を傾けながら、茶葉を急須に入れる。お茶を用意して、居間に戻ると、その背の高い男が名刺を渡してくる。
「改めまして、日本トランスミッションの市村です」
「はじめまして。僕は、橋本蓮と申します」
「君がこのプロジェクトの立案者かい」
初老の下尻と名乗るその男が、笑顔でそう尋ねる。
「はい。監督をしております」
「そうですか」と答えた下尻は、笑顔のまま居間の座布団に腰を掛ける。
「クラウドファンディングの近況ボードを読ませてもらったけど、トランスミッションが必要なようだね。うちは、長いことトランスミッションの製作をしている会社なんだけど、よろしければ、弊社のトランスミッションを提供させて欲しいのだが」
「本当ですか!ぜひお願いします」
「君たちは、レースに出たいとは思わないかい?」
「思います。」
市村と下尻は顔を見合わせ頷いたあと、市村がこう言う。
「うちのミッションを使ってレースで勝ってくれれば、うちらにも宣伝効果が見込まれる。より多くの人に、うちの作ったミッションのことを知ってもらえるし、他社との差別化を図ることで市場での位置を強化できる。そしてあなた達は、無料でトランスミッションを使うことが出来る。」
市村は頂きますとひとこと言うと、お茶を啜った。
「こうして協賛をしてくれる企業は今回で二社目なんです」
市村と下尻は力強く頷く。
「君たち、SNSも活用してみたら良いと思う。我々のように興味関心を持つ企業はきっとあるはずです。なんども申し上げますが、このプロジェクトが有名になればなるほど、協賛してくれる企業も有名になるんです」
企業がプロジェクトに協賛することで自社のブランド名やロゴが広く露出し、認知度は高まる。特に今回のプロジェクトではSNSを活用することで、さらに多くの人々の目に触れる機会が増える。それは、まさしく的確な意見だった。蓮は、今度のミーティングでそれをみんなに提案して見ることにした。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる