門番令嬢は舞台裏で治安維持したくない

宇和マチカ

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特に何も無かったけどサプライズ

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「うう……」

 勤労乙女ルーキアは、いつもと同じく朝8時に目が覚めてしまうの。
 魘されもせず、爽やかな目覚めだったわ。郷里だともうちょい早いのよ。寝るのも田舎で油代をケチる為にもっと早いけど。王都と違ってお店も少ないし、夜遊びスポットなんて皆無だしね……。都会って凄いわよね。まあ、夜遊びに明け暮れて遊び回れるお給与じゃないけど。真面目な我が身が悲しいわ……。

 でも、昨日は!
 郷愁に浸ってて、すわ私も王都のレディとして夜遊びデビューかと思いきや……。

 ……うん、私の部屋だわ。
 此処は……騎士団女性職員宿舎よね。この端が毛羽立ったピンクの毛布は紛れもなく私の部屋。何の間違いも起こらない……フツーに私の部屋だわ。良かったのか悪かったのか。だーれもお隣にいなくて、ひとりだしシングルだしボッチだし。

 ……いやあ、昨日は大変だったなあ。夢オチだと良かったのだけど。
 予備動作なくドロップキックしたお陰で、ちょっと腰に違和感があるわ……。ストレッチしときゃ良かったな。足も疲れちゃったし。

 ……しかし、思い出すだけで心臓が高鳴るド気まずい事を聞いちゃったなぁ。
 アレ、ドッキリだったりしないかしら。

 そもそも、アンナ様が本物でないとか……。
 元王女が実は王家の血を引いてなくて、市井で暮らしてるとか、小説じゃないんだからさぁ……。ハメられた?
 私を何の為にハメるのかも意味不明ね。
 ジョーサイド一族をハメたいなら、嫡子の大兄様とか大姉様とか……いや、伯父様の所の嫡子である従弟のメロディ(8歳)かしら。……メロディに手を出したら伯父様は激怒して大暴れするし、王宮は壊滅しそうね……。無いかも。

 それに、侯爵令息であらせられるミシー様にハメられる理由も無いし……愉快犯ならどうしようかしら。ウチのお偉い上司こと騎士団長に、いえ伯父様に連絡を取るべきかしらね。うーん……。どっちも頼りないなあ……。

「そもそも、……今日はミシー様の所に出勤なのかしら。聞くの忘れてたわね」

 もう疲れたし、お休みしてたいなあ。
 私、都会に染まってか弱いから、この頃そんなにスタミナ無いのよね。

 でも、朝ごはんもないわ。パン籠に買い置きもない。
 仕方ないわ、……何か食べに行きましょう……。
 ついでに果物とかパンとか仕入れるべきね。
 この国のパンって……平たくて硬いのよねえ。前世の食パン食べたいわぁ……。
 ああ、懐かしのピーナッツバターと林檎バター……。
 転生した悲しみって、ご飯問題よねえ。
 白米はベタッとしたお粥モドキが有るから、特に懐かしくはないけど。

「んん?」

 あら、ドアの下に手紙が挟まってる。
 どれどれ。

「あ、……アンナ様……?」

 何と……アンナ様からのお手紙とは。
 流石に王宮で使ってる紙(偶に処理することもあるのよ)とは違うけど、お高そうな紙だわ。何時も相手にしてるガッサガサの藁半紙モドキとは格が違う……!

「なになに……マダム・チャレーナで指定の品を受け取れ……?」

 ……指定の品とは。
 マダム・チャレーナは……私の憧れのドレス店……の筈よね。
 私の薄給では、セールでしかドアを潜れない……オシャレかつお高めのお店なのよ。

 ……ドレス。

 そう、ドレス店。
 まさか、まさか!!
 あの夢オチにしたかった4日後いや、3日後の夜会デビュー(潜入)の為の、ドドド、ドレスを貸して頂けるとか!?

「う、うおおおおおおおう!? うぼおおおおお!!」
「きゃあっ!? 何!?」
「逞しい叫び声が!!」
「あの部屋はルーキアちゃん!? すわ襲撃か!?」

 ……寮母さんから男泣きは止めろと滅茶苦茶怒られてしまったわ。呻き声か啜り泣きにしろと。
 ……それもかなり結構怖くないかしら。ホラーはちょっとご勘弁願いたいわ。私、オバケにはちょっと弱いのよ。
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