門番令嬢は舞台裏で治安維持したくない

宇和マチカ

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逃亡先では圧が掛かる

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「まさか拐われるとは思わなかったよ」
「ぐはひ……」

 ……とととと殿方と組み手以外でこんなに密着したことない、私は無垢でピュアな乙女ルーキアなのよ。

 お約束通りにピンチに殿方が駆け付け……いやまあ、少しだけ自力で脱出したけどね!
 誤差よ! 救出はね、タイミングがバッチリ合うばかりじゃないのよ!
 それに、怪我をさせられたとかね! 危うい目に、有ってないしね!
 セーフセーフ!

「足は早い方?」
「いええい?」
「……大丈夫? 殴られた?」
「い、いええ! 殴られておりませんわあつっ!」

 問答無用で撫でられた!? 
 こ、後頭部がモワッと光ったわ。……派手に光らないで良かったけど……回復魔術って若干熱いのね。知らなかったわ。

「声が大きい」
「すみ、すみません……。あの、ミシー様。助けに来てくださったんですわよね? 有難う御座います」
「黒幕確認が有るしな」

 そ、そっかあ……。
 そ、そっちの方が大事よね。うん。
 ……くうっ! 何から何までセオリー通りじゃ無くて泣けるわ!

「うう、あのお……」
「何? もう少し潜んでた方がいい。とっ捕まるよ」
「いえ……ひとりなら何とか」

 ……行けないかしら。
 でも未だウロウロしてるわね。何処だー! とか大声も聞こえるし……。危険ね。どうしたもんかしら。
 流石に多数を相手にするのはなあ。伯父様や兄様達じゃあるまいし、私ったらか弱いしなあ。

「取り敢えずこっちに来て」
「へはっ!?」

 ててててて手! 手を! 繋がれてしまったわぁ!? て、手汗……! 手汗!!

「この中に入って」
「どわっ!? ……え、ええっぶへっ!?」

 何この変な壁……いえ、ドア!? 何かに当たって木の欠片が口に入ったわ!! 

「えっ」
「あらぁ?」
「御免なさい!? って、ど、どあれ!?」
「あら、元気な子」

 ど、ドレス!? いや、ボリューミーなお胸に腰が細くて……いえ、ゴージャスなドレススタイルの似合うお姿! が、一杯!
 ……何、此処。私は何処。この方誰。

「早く入って」
「え、あの、ミシー様……」

 ぐ、グイグイ押さないで頂きたいわ。目の前のゴージャスさんを抱きしめてしまうじゃないの。

「あら、ミシエレ。いらっしゃい。お散歩?」
「久しぶり」

 ……え、お知り合い? このゴージャスなレディと?
 ……どういうことかしら。
 まさか、恋人? そ、それともあ、愛人……!?

「あの、あ、あの……あう……」
「まあ、毛色の違う番亀ちゃんを連れてるのね」
「番亀……」
「違う。門番令嬢だ」
「……何それ。変な役職を押し付けては駄目じゃない」

 フフッて笑う吐息まで……いい匂いがする女性だわ……。何てこった人種レベルが10ランク上そうな女性……。
 ……滅茶苦茶綺麗な方ね。栗色のくるくるな巻き毛は、暗めの照明でもツヤッツヤだし、見たことのない濃いピンク色の瞳だし……。
 しかもボリューミーなお体で……滅茶苦茶眼力強いわね。私より小柄なのに圧が強い……。何故……。
 周りのお姉さん達がこの方を囲んで控えていく……。何事なの。

 ああ、椅子まで用意して頂いて……え、座れるの? 平伏すんじゃなくて。

「で、誰が糸を引いていたのかしら?」
「3番目でした」
「あら、そうなの。分不相応ね」

 何なのよ、3番目とは。
 ……内輪トーク止めてくれないかしら……。
 でも、何か邪魔出来ないわ……。漂うオーラがこう、ビリビリ怖いというか。

「あ、あのう。ミシー様……。此方はどちら様なんでしょう」
「あら、御免なさいね。ミシエレの番亀ちゃん」
「る、ルーキア・ジョーサイドで御座います……」

 あ、圧が強いわ……。
 目が有っただけなのに……ま、睫毛がバッシバシね。羨ましい。

「まあ、ジョーサイドの。……凄い小亀ちゃんを番亀にしたのね」
「門番令嬢だって」

 ど、どっちも嫌だわと言えないこの圧よ……。
 何というか、椅子から降りて平伏したい気になるのよね。一体何なのよ、この場所は!?

「ウチの愚妹が御免なさいね、ジョーサイド嬢」
「いえ、ひえ?」

 グマイ……グマイとは。ええと、愚妹? でオッケー?
 って、それも誰……。
 ミシー様にもお姉様いらっしゃるそうだけど、妹ではないし。さっきくっついたら結構鍛えてらっしゃるお体は殿方で……きゃっ! 

「顔ヤバいけど、頭大丈夫? 痛むの?」
「ひ、そ、とんでもない! あつっ!」

 か、顔がデレデレしてたかしら!? やだわ……。真面目に考えなきゃ!!
 ……ちょっと待って……。さっき、掘っ立て小屋で姉だの妹だの言ってた女がいたわよね。
 ……顔は、似てない? わよね。違うかー。そうよね。くるくるの髪が似てるだけではね。くるくる髪の人が親戚だらけになるわよね!

「まさか、あの金髪の子じゃないですわよね?」
「そう、あのくるくる金色頭の馬鹿な子はこの私の異母妹なの」

 ……何と。
 …ぴ、吃驚しすぎてミシー様がヨシヨシ撫でて来られる驚きを凌駕してしまったんだけど。

「私の名前はアンナ。昔、王女をやっていたわ」
「あ、アンナ事件……!?」
「そう、そのアンナよ」

 ちょ、ちょっと待って……。
 何故、お姉様の敵である元王女アンナが、ミシー様と親しげ? に喋ってるの!?

 そ、それに……。

「も、元王女様のい、妹って、現在王女殿下では」
「その内失脚する、現王女だよ」

 ……お、驚きすぎて……。椅子を勧められて無ければ地面にめり込んで座り込んでいたわ……。

「ふふ、ジョーサイド嬢。少し位お喋りする?」
「し、しても我が家に大丈夫なお喋り、でしょうか」

 ……笑顔が滅茶苦茶怖い……。
 だ、誰か……助けてええええ!!
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