門番令嬢は舞台裏で治安維持したくない

宇和マチカ

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詩的な人攫いからの脱出

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「折角邪魔なお姉様とあの勘違い聖女を始末したのに……。ああ、ミシエレ。つれないミシエレ。
 どうして貴方はそんなに魅力的なの」

 ……お姉様、とは誰なのか分からないけど。
 勘違い聖女とは、まさか……。ミシエレ様のお姉様な聖女様の事、かしら。
 いきなり繰り出してきたポエムが気持ち悪いわね。何なのよ。まさかミュージカル仕様なの? 突然歌と踊りが始まるの? そんなミニゲーム、ショボい選択肢としんどいパラメータ上げがメインのイモダンに無かったわよね?

「でも仕方ないわよね。汚いメス共に蹂躙された美しい貴方を慰めるのはわたくし……。私達の美しい愛は、悍ましい泥濘の中から生まれゆくの」

 ……聞きたかないけど、このミシー様を貶める下品ポエム垂れ流しから察するに。
 滅茶苦茶犯人だわ。それも、被害者の前で犯行を自供して悦に入る気持ち悪いタイプの。

 しかし汚いメス? の単語が気になるわ。
 ……それって腹立たしいけど私の事!?
 ……いえ待って。メス共って、複数形だわ。
 ……さっき、午前中から午後にかけて四阿から湧いて出て捕えた、女官達の事も指すのかしら。

 ……王族の差し金かどうかは微妙な所だけど。
 女官をそそのかして、王族の非常事態用脱出門を送り込んだのは、きっと、ほぼコイツ確定ね。
 このポエム女はミシー様に気持ち悪い偏愛を向けているってことで、確定!

 さーて、何時動こうかしら。
 この場で私を刺したり埋めたりしようとすると面倒ね。向こうは武器が有るでしょうし……。

 服の下に盾とか武器でも忍ばせておけば良かったわ。でも流石に余所様のお宅にお邪魔……門番しに行くのに武器持参はねえ……。非常識ぽいしなー。門番のマナーと言うかドレスコードって何なのかしらね。いや、門番を極めたくはないけど!

「さて、足からちょん切るか」
「さっせるかあっ!!」

 あっぶない! イチイチ行動を説明してくれるタイプの犯人で良かったわよ!
 敵がちゃんとした縄を用意してなくて、本当に助かったわ!

「ごはっ!」
「うりゃあっ!」

 ふふっ、我ながら両足払いからのドロップキックが、キレイに敵の顎に決まってしまったわ! あまりの華麗さに、拍手が鳴りそうね!

「足が長くてごめん遊ばせ! ウホホホッ!」
「こっ、この下賤な害獣の舌を切り取ってしまいなさい! わたくしの可愛い鯉の餌にしてくれるわ」

 偉そうにポエムを垂れ流しつつ、指示してた女の顔が見えた! くるくるの金髪に、黒いマント……の下に白いドレス……。目の色は松明だけでは暗くてハッキリ分からないわね。顔は……意地悪系ね。
 ……掃き溜めに鶴のハリボテって感じの女だわ。

「ず、図体の割に素早い!」
「お褒め頂き光栄だわ!」

 だけど、足に縄が絡んで動き難いわ!
 解きたい!

 でも、ドアまで近い! 安普請そうね! これなら勢いを付けて、外へ出られそう!

「うおりゃっ!!」

 ……って、此処……路地裏!?
 まさかの街の真ん中で誘拐事件! よく起こってるけど、まさかの当事者になるなんて!

 だけど、走らなきゃ!! 此処では狭すぎて敵相手に立ち回りすら不可能だわ!

「……こっち」
「えっ、ええ!?」

 それで、今、ドッキドキな壁ドンもどきに!!
 ミシー様と密着して、路地裏よ! 
 うわあああ、こんな展開……!
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