門番令嬢は舞台裏で治安維持したくない

宇和マチカ

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来てしまった侯爵家

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 私、第三騎士団所属ルーキア・ジョーサイド男爵令嬢。田舎から出てきた可憐な乙女かつ、真面目な事務官なの。

 何時もは温厚に騎士団員(偶に絡む)や兵士達(寧ろこっちが絡むの多い)と書類上で格闘しているわ。
 因みに、肩コリにはストレッチしてから腕立て伏せと身長と同じ位の槍を使った素振り100回がお勧めよ!体質にもよるから、用法用量を守ってお医者様と相談してね! ……因みに、勧めても誰もしてくれないのよね。もしや、凄い肩コリにはそんな位の素振りじゃ効き目が足りないのかしら。

 ……とまあ、現実逃避したくなる立派なお屋敷だわー。
 首が痛くなる程高い位置の風見鶏……にしては丸っこいわね。カブトムシ? いえ、亀かしら? 
 兎に角、何だか判らないのが東風でヒラヒラ揺れているわ。凝ってるわね。

 そんな此処は、ティナー侯爵家のタウンハウスなの。
 メインの館は領地に有るそうだから、別邸ってことね。
 ……白い……いえ、クリーム色の壁に美しい青い屋根瓦が映えるわ……。
 どっちかと言うと前時代的……いえ、質実剛健気味な王宮よりも優雅な建物ね。月並みだけど、お姫様が住んでそうだわ……。

「当家に何か御用ですか?」
「こんにちは、門番さん……。もっ、門番さん!?」
「う、はい?」

 おるじゃないの!! 滅茶苦茶、本物の門番さんおるじゃないの!! 軽装というかパーツだけ鎧だけど、ちゃんとした本気の本番の門番さんじゃないの!!
 人手不足だから王宮の備品……いえ、職員である私を使える立場とやらでも、腹立つけど!! 人手不足ならって!! 昨日溢れ出る理不尽さを飲み込んで……!!
 この重くて邪魔な鎧持参で……!!

 それ、なのに!!

「その赤煉瓦色の髪はジョーサイド嬢ですね。ご子息がお待ちです」
「うっ、あ、ハイ」
「随分沢山のお荷物ですね。お預かり……重っ!!」

 まあ、荷物を持ってくださるなんて……何て紳士的な門番さんなの。でも、申し訳ないわ。重いのに。
 罰則中のキリエの鎧をテキトーに鍋で消臭して借りてきたけど……。アイツ、まさか鎧を魔改造してるんじゃないかしら。偶に鎧のパーツをパクって金属屋さんに売るヤツが居るのよね。廉価品を代わりにして誤魔化して……でもそれだと大体軽い筈だけど。

「いらっしゃい、ルーキア」

 お、おお。玄関ホールで御自らお出迎えとは。
 相変わらずお美しいのに何か……。こう、悪そうなオーラを背負っておいでで。
 それなのに……紫色を胡散臭くなく着こなしてる殿方を初めて見たわ。イケメンってお得ね。

「あの、ティナー侯爵令息様」
「ミシーでいいよ」
「ミシー様、門番の件ですが……立派な方がおられますのね。私の出る幕が無いですわ」

 めっちゃ居ましたよ! 本職が! 私を御召しにならなくてもオッケーよね!? 私を解き放って! 帰らせて!!
 と願う視線をモノともされないわ。
 ……結構眼力強めでお願いしたのに……。

「家の門じゃなくて、守ってもらう門はこっち」

 ……室内へズンズン入っていかれるわね。
 ……まさか、家の中に門が有るのかしら。何の為に? 厄除け? まさかの改築マニア?
 ……お金持ちの家造り計画は訳分からないわね。

 田舎だと土地は有ってもお金が無いから、新築は狭い家が多くて……。まあ、滅茶苦茶旧い建物は、軒並み広くて……。
 掃除やらメンテナンスが行き届いて無いから、限られたスペースのみに住んでんだけど。世知辛いわ。このお屋敷は何処もピカピカしてるなー。

 しかし、何処なのかしら、門とやらは。
 実家なら家を抜け出してお隣に突っ込んでいく距離を歩いてる気がするわ。
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