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自称、非戦闘員令嬢は報酬に釣られる
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「おい、此処を通せ!!」
「招待状のない方は通せません、お引取りを」
ガッション!! と本日の相棒キリエと息を合わせて槍をクロスさせる技術もお手の物。
……初めてやるのに、我ながら本当に巧すぎるわ。
「無礼な!!」
「では名乗るがいい! 名乗りもせず、我が王の居城に踏み込もうなどと、当に! 無礼千万の賊である!!」
「わ、私は……」
てかお前、やたら高そうないい生地の偽庶民服着てるけど、隣国の皇子だろ。
何でテンプレ通りに乗り込んで来てんだ! 顔くらい隠しなさいよ! マジ万死だわ!!
私の名前は、ルーキア・ジョーサイド。
誇り高きジョーサイド男爵家の四女にして、第三騎士団所属!
只今は誇り高き門番中!
……何で令嬢が門番やってんのかって?
フル板金鎧にバイザーもごっつい兜フル装備で?
そりゃーアレよ。
本当に本来は、事務方で勤務してるのだけどね。本来の門番である同僚ジドが、犬に足を噛まれた挙げ句、異国風煮込み(激辛)を頭から被って頭にコブを作って軽症……いや、ある意味重症かしら。
兎に角、洗おうが擦ろうが石鹸を3つ使おうが、全身から謎煮込み臭が取れなかったらしいの。お見舞いに行ったキリエが悶絶してたわ。
アレが隣りにいたら飯テロだ、仕事になるか! だって。
……そんなに美味しそうだったのかしら。激辛好きの世界は意味不明よね。
「いっ、良いから通せ!! 私を誰だと心得る!! 早く会場へ行かねばならんのだ!!」
「黙るがいい不審者め!!
そのようなくだらん脅しに乗る我々だと思うのか!?」
はー、煩いわね!!
そして今! 何故か! 私が!! 門番業務を替わる羽目になってしまったの!!
おかしくね!? 何でジドの穴埋めを私がするのよ!! 兵士でローテーションしろってのよ!!
私は身長が少しばかり高めで、ちょっぴり声が低めの、健気で可憐でか弱い職業婦人に過ぎないのに!!
同年代が学園がヒラヒラ~、茶会がフワフワ~、なーんてポワポワしてる最中、真面目に勤労している!健気で! 可憐で! か弱い!! 職業婦人なのに!!
と! 己の不遇を嘆いていたら、なーんか地味にジワジワと思い出してきたのよね。
これ、どっかで聞いたなって。
いや、見た?
「私はこの中で行われている夜会に行かねばならんのだ!!」
「捕縛せよ!!」
コレ、激ムズで有名な乙女ゲームじゃ無かったかしらってね。
えーと、タイトルが……『愛しき百夜のラストダンス』略称、イモダン。
ダセえわー。
……攻略とかサッパリ忘れたけど、変な事ばっか覚えてるわあ。
と言う事は、一応私は転生者なのかしら。
……うーん、記憶が薄いなー。
イモ……芋…………夜勤明けの朝食は近くの喫茶店朝メニュー、ハッセルバック風なポテトにしよう。名前は違えどパリパリホクホクは揺るがぬ正義よ!!
「離せええええ!!」
あら仕事が早い。あっという間に、控えてた兵士達に捕まって行く隣国の皇子の縄ミノムシ姿が哀愁を誘うわねえ。
確かあの人、遭遇率が一桁を切るレベルで会えない隠しキャラよね。何でこんな所で見る事になるのかしら?
……確か、ゲーム自体は……えーと、そうだわ。
軒並み攻略対象と百回夜会で意味のないスカスカでローテーションの歓談をして、最後の夜会で軒並みいる令嬢を出し抜き、ラストダンスをもぎ取って踊らにゃならんのでしょ?
そもそも会えないんじゃ、攻略不可能ね。無理だわ。
でもそうか、舞台裏では平の兵士とかが、こんな攻防を繰り広げていた訳なのか……。
何で私が捕物に関わらなきゃならないのか、滅茶苦茶不本意で不服だけどね。
しかし、今は……細かいイベント関係サッパリ覚えてないけど、あの隠しキャラ皇子、ちゃんと夜会に出没しようとしてたんだわ。
……いや、ちゃんとも何も、招待状のない不審者だったわね。
ちゃんと門番が仕事してたら通してないだろうし、総欠席かな。何で正当に招待状を持って来ないのかしら。何でだっけ?
でも、他のキャラも中々会えなかった筈……。えーと、何でだっけかしら。
「おい、ルーク」
「何だ」
因みに『ルーク』は私ことルーキアの門番ネームなの。代理とは言え、か弱き乙女をこんな所に置いたら外聞が悪い! だから男の名前で通してね! らしいわ。
……ふざけんな。
そんな気遣いは要らんから、今夜会に出席してる兵士か騎士を此処に置けボケが。
そんな風に、ちょっと強めに兵士長に抗議したら、特別残業代を出してくれたから、渋々やるけどさー。臨時収入の為に誇り高き門番もやってやるわよ! か弱いけど!
「お前、何でそんなに鎧兜似合うんだよー。普通に初めて着て、立ってらんねーだろ。俺も脱ぎてー。しんどー」
「我が所領は高地に有るからな」
高地トレーニングって言うのかしら?
田舎で人口少なくて、だからフツーに使用人が少ないもの。力仕事も家族総出でやるのよね。
……ええ、鎧兜アリでの狩り位なら嗜むわよ。仕方ないじゃないの。ウチの領地は過疎なのよ。ジーさんバーさんだらけなのよ。
「マジか……。スゲーな高地……」
「無駄口を叩かずに職務に邁進せよ」
「……いや、スミマセン……。……こんな子だっけ?」
だって何時もの口調で女バレしちゃったら、臨時収入に響くじゃないの。王都で騎士やってる伯父様の真似よ。はー、威厳がまだまだ足りないけど、うら若い乙女だから仕方ないわね。
「招待状のない方は通せません、お引取りを」
ガッション!! と本日の相棒キリエと息を合わせて槍をクロスさせる技術もお手の物。
……初めてやるのに、我ながら本当に巧すぎるわ。
「無礼な!!」
「では名乗るがいい! 名乗りもせず、我が王の居城に踏み込もうなどと、当に! 無礼千万の賊である!!」
「わ、私は……」
てかお前、やたら高そうないい生地の偽庶民服着てるけど、隣国の皇子だろ。
何でテンプレ通りに乗り込んで来てんだ! 顔くらい隠しなさいよ! マジ万死だわ!!
私の名前は、ルーキア・ジョーサイド。
誇り高きジョーサイド男爵家の四女にして、第三騎士団所属!
只今は誇り高き門番中!
……何で令嬢が門番やってんのかって?
フル板金鎧にバイザーもごっつい兜フル装備で?
そりゃーアレよ。
本当に本来は、事務方で勤務してるのだけどね。本来の門番である同僚ジドが、犬に足を噛まれた挙げ句、異国風煮込み(激辛)を頭から被って頭にコブを作って軽症……いや、ある意味重症かしら。
兎に角、洗おうが擦ろうが石鹸を3つ使おうが、全身から謎煮込み臭が取れなかったらしいの。お見舞いに行ったキリエが悶絶してたわ。
アレが隣りにいたら飯テロだ、仕事になるか! だって。
……そんなに美味しそうだったのかしら。激辛好きの世界は意味不明よね。
「いっ、良いから通せ!! 私を誰だと心得る!! 早く会場へ行かねばならんのだ!!」
「黙るがいい不審者め!!
そのようなくだらん脅しに乗る我々だと思うのか!?」
はー、煩いわね!!
そして今! 何故か! 私が!! 門番業務を替わる羽目になってしまったの!!
おかしくね!? 何でジドの穴埋めを私がするのよ!! 兵士でローテーションしろってのよ!!
私は身長が少しばかり高めで、ちょっぴり声が低めの、健気で可憐でか弱い職業婦人に過ぎないのに!!
同年代が学園がヒラヒラ~、茶会がフワフワ~、なーんてポワポワしてる最中、真面目に勤労している!健気で! 可憐で! か弱い!! 職業婦人なのに!!
と! 己の不遇を嘆いていたら、なーんか地味にジワジワと思い出してきたのよね。
これ、どっかで聞いたなって。
いや、見た?
「私はこの中で行われている夜会に行かねばならんのだ!!」
「捕縛せよ!!」
コレ、激ムズで有名な乙女ゲームじゃ無かったかしらってね。
えーと、タイトルが……『愛しき百夜のラストダンス』略称、イモダン。
ダセえわー。
……攻略とかサッパリ忘れたけど、変な事ばっか覚えてるわあ。
と言う事は、一応私は転生者なのかしら。
……うーん、記憶が薄いなー。
イモ……芋…………夜勤明けの朝食は近くの喫茶店朝メニュー、ハッセルバック風なポテトにしよう。名前は違えどパリパリホクホクは揺るがぬ正義よ!!
「離せええええ!!」
あら仕事が早い。あっという間に、控えてた兵士達に捕まって行く隣国の皇子の縄ミノムシ姿が哀愁を誘うわねえ。
確かあの人、遭遇率が一桁を切るレベルで会えない隠しキャラよね。何でこんな所で見る事になるのかしら?
……確か、ゲーム自体は……えーと、そうだわ。
軒並み攻略対象と百回夜会で意味のないスカスカでローテーションの歓談をして、最後の夜会で軒並みいる令嬢を出し抜き、ラストダンスをもぎ取って踊らにゃならんのでしょ?
そもそも会えないんじゃ、攻略不可能ね。無理だわ。
でもそうか、舞台裏では平の兵士とかが、こんな攻防を繰り広げていた訳なのか……。
何で私が捕物に関わらなきゃならないのか、滅茶苦茶不本意で不服だけどね。
しかし、今は……細かいイベント関係サッパリ覚えてないけど、あの隠しキャラ皇子、ちゃんと夜会に出没しようとしてたんだわ。
……いや、ちゃんとも何も、招待状のない不審者だったわね。
ちゃんと門番が仕事してたら通してないだろうし、総欠席かな。何で正当に招待状を持って来ないのかしら。何でだっけ?
でも、他のキャラも中々会えなかった筈……。えーと、何でだっけかしら。
「おい、ルーク」
「何だ」
因みに『ルーク』は私ことルーキアの門番ネームなの。代理とは言え、か弱き乙女をこんな所に置いたら外聞が悪い! だから男の名前で通してね! らしいわ。
……ふざけんな。
そんな気遣いは要らんから、今夜会に出席してる兵士か騎士を此処に置けボケが。
そんな風に、ちょっと強めに兵士長に抗議したら、特別残業代を出してくれたから、渋々やるけどさー。臨時収入の為に誇り高き門番もやってやるわよ! か弱いけど!
「お前、何でそんなに鎧兜似合うんだよー。普通に初めて着て、立ってらんねーだろ。俺も脱ぎてー。しんどー」
「我が所領は高地に有るからな」
高地トレーニングって言うのかしら?
田舎で人口少なくて、だからフツーに使用人が少ないもの。力仕事も家族総出でやるのよね。
……ええ、鎧兜アリでの狩り位なら嗜むわよ。仕方ないじゃないの。ウチの領地は過疎なのよ。ジーさんバーさんだらけなのよ。
「マジか……。スゲーな高地……」
「無駄口を叩かずに職務に邁進せよ」
「……いや、スミマセン……。……こんな子だっけ?」
だって何時もの口調で女バレしちゃったら、臨時収入に響くじゃないの。王都で騎士やってる伯父様の真似よ。はー、威厳がまだまだ足りないけど、うら若い乙女だから仕方ないわね。
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