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求婚者様と私
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「……ほ、本日は御日柄も良く……だな……その」
「は、はい……」
おかしいですわねー。
あちらの瑕疵とは言え、結局ズガタカ侯爵家をクビになった私が……。
何故、この……美しく整えられた国立公園のカフェにて、元お仕えした方の婚約者であらせられるロイド様とお見合いをしているのでしょうか。
お父様が要らん事を吹き込んだから、でしょうか。その線が濃厚ですわね……。
「わ、若い者でと言われたが何をすれば……」
「ぞ、存じませんが……あの、良ければお使いくださいませ」
額から滝のような汗が流れ落ちていらっしゃいますわ……。多分私もですわね。
さっき何処からか散って飛んできた赤い花びらが鼻にくっついてましたもの。気付いて良かったですわ。
「……一体、これはどういう事でしょう。まさか、父が何か……」
父は……公爵家に毎日仕事帰りに寄ってくださるのですが、聞きたい事をはぐらかし、フワーっとした話しかしませんのよ。
……本当にのらくらとした人格ですわ。本当に公爵家嫡男でいらしたのかしら。
「いや、その、だな。あの後……父、ホワー伯爵にだな」
「は、はい」
「カルバート殿から齎された話が本当か確かめたのだ。そうしたら……みるみる内に顔色が変わってしまってな」
「え、ええ」
「力無く同意された。どうも、爵位を継ぐ者のみ知る情報らしいのだ。
迂闊に漏らせば御家断絶モノの、機密保持前提の話だと……最後はブチキレてしまわれてな」
げっそりとしたお顔がお芝居でなければ……本当だったって事ですのね……。未だ壮大なドッキリと思わなくも……ですもの。ええ、現実逃避で御座いますわ。
「それで、あの。ズガタカ侯爵家には嫡子がその、メリリーンしかおらず。あちらのご両親や、俺の親の期待も有り……俺が婿養子となって盛り立てて……仲良くやっていく予定、だった。結果はその、御覧の通りだがな……」
「え、ええ」
目に見えて凹んでいらっしゃるわ……。
「その、差し出口ですが。短い間でしたが……ホワー伯爵令息様は誠実でいらっしゃいましたわ。少なくとも私は」
「……その、ロイドと」
え、急にどうされましたの? フォローに必死ですのに呼び名の変更ですか?
正直混乱するんですけれど。いや、心の中では呼んでおりますけれど……。
「ええとその、失礼では」
「俺は貴女に婚約を申し出た身だ。対等で、その、頼みたい」
「うっ……」
うぉええええ⁉ って声が出そうになりましたわ!! ……淑女ならあらまあ! とかな悲鳴ですのに!!
「その、だな。さぞかしメソメソと見苦しい所ばかりを見せて申し訳ない。
貴女の雰囲気がその、頼りがいが有るというか、話し易くて」
「は、はい」
ビジネスライクとは言え、誠実な方に誠実に接していて良かったわ。ちょっとあのクソガキ元令嬢には塩が効いてしまったかもしれませんけれど。
な、何なんでしょう。この……ちょっとガチな、甘い雰囲気。
あの、元お嬢様には……こんな態度取ってらっしゃらなかったのに。
ほ、本当に婚約を……本人のご意思も込みで、お申込みになったと……さ、錯覚してしまいそうですわ。
何と言うか、見知らぬ豪華なお庭のお花も相まって……童話のように、高貴なお姫様になった気分です。
「そう言えばジャネットに会ったよ。態々家を抜け出したようだね」
「は、はぁ⁉」
……そんな甘やかな空気に浸っていたら、お父様がまた爆弾発言を……!!何時いらっしゃいましたの⁉
お姉様、いえジャネットさんは何をしていらっしゃるのあの人!! 王都に出る資金はどうやって⁉
「勿論ちゃんと言い聞かせて叩き出して帰したよ。困るねえあの子は」
「た、叩き……あの、馬車ですか?」
「歩いて帰らないだろうし、荷馬車に簀巻きで」
……お父様の目が怒りに満ちてますわね。
お姉様、いえジャネットさん……この分ではかなりやらかされたよう。何を為さったのかしら。
「は、はい……」
おかしいですわねー。
あちらの瑕疵とは言え、結局ズガタカ侯爵家をクビになった私が……。
何故、この……美しく整えられた国立公園のカフェにて、元お仕えした方の婚約者であらせられるロイド様とお見合いをしているのでしょうか。
お父様が要らん事を吹き込んだから、でしょうか。その線が濃厚ですわね……。
「わ、若い者でと言われたが何をすれば……」
「ぞ、存じませんが……あの、良ければお使いくださいませ」
額から滝のような汗が流れ落ちていらっしゃいますわ……。多分私もですわね。
さっき何処からか散って飛んできた赤い花びらが鼻にくっついてましたもの。気付いて良かったですわ。
「……一体、これはどういう事でしょう。まさか、父が何か……」
父は……公爵家に毎日仕事帰りに寄ってくださるのですが、聞きたい事をはぐらかし、フワーっとした話しかしませんのよ。
……本当にのらくらとした人格ですわ。本当に公爵家嫡男でいらしたのかしら。
「いや、その、だな。あの後……父、ホワー伯爵にだな」
「は、はい」
「カルバート殿から齎された話が本当か確かめたのだ。そうしたら……みるみる内に顔色が変わってしまってな」
「え、ええ」
「力無く同意された。どうも、爵位を継ぐ者のみ知る情報らしいのだ。
迂闊に漏らせば御家断絶モノの、機密保持前提の話だと……最後はブチキレてしまわれてな」
げっそりとしたお顔がお芝居でなければ……本当だったって事ですのね……。未だ壮大なドッキリと思わなくも……ですもの。ええ、現実逃避で御座いますわ。
「それで、あの。ズガタカ侯爵家には嫡子がその、メリリーンしかおらず。あちらのご両親や、俺の親の期待も有り……俺が婿養子となって盛り立てて……仲良くやっていく予定、だった。結果はその、御覧の通りだがな……」
「え、ええ」
目に見えて凹んでいらっしゃるわ……。
「その、差し出口ですが。短い間でしたが……ホワー伯爵令息様は誠実でいらっしゃいましたわ。少なくとも私は」
「……その、ロイドと」
え、急にどうされましたの? フォローに必死ですのに呼び名の変更ですか?
正直混乱するんですけれど。いや、心の中では呼んでおりますけれど……。
「ええとその、失礼では」
「俺は貴女に婚約を申し出た身だ。対等で、その、頼みたい」
「うっ……」
うぉええええ⁉ って声が出そうになりましたわ!! ……淑女ならあらまあ! とかな悲鳴ですのに!!
「その、だな。さぞかしメソメソと見苦しい所ばかりを見せて申し訳ない。
貴女の雰囲気がその、頼りがいが有るというか、話し易くて」
「は、はい」
ビジネスライクとは言え、誠実な方に誠実に接していて良かったわ。ちょっとあのクソガキ元令嬢には塩が効いてしまったかもしれませんけれど。
な、何なんでしょう。この……ちょっとガチな、甘い雰囲気。
あの、元お嬢様には……こんな態度取ってらっしゃらなかったのに。
ほ、本当に婚約を……本人のご意思も込みで、お申込みになったと……さ、錯覚してしまいそうですわ。
何と言うか、見知らぬ豪華なお庭のお花も相まって……童話のように、高貴なお姫様になった気分です。
「そう言えばジャネットに会ったよ。態々家を抜け出したようだね」
「は、はぁ⁉」
……そんな甘やかな空気に浸っていたら、お父様がまた爆弾発言を……!!何時いらっしゃいましたの⁉
お姉様、いえジャネットさんは何をしていらっしゃるのあの人!! 王都に出る資金はどうやって⁉
「勿論ちゃんと言い聞かせて叩き出して帰したよ。困るねえあの子は」
「た、叩き……あの、馬車ですか?」
「歩いて帰らないだろうし、荷馬車に簀巻きで」
……お父様の目が怒りに満ちてますわね。
お姉様、いえジャネットさん……この分ではかなりやらかされたよう。何を為さったのかしら。
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