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下っ端侍女は夢の世界へ護送される
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ズガタカ侯爵家。
図書館なんて洒落たものが皆無の領地で、古新聞を集めて必死に情報収集した結果……150年位前の御先祖が隣国との戦争のガッティ中洲戦争で名だたる活躍をなさったらしいの。
それから軍人として位を上げられて……今の御当主様も陸軍に属しておられるそうですの。
貴族の中では中の上のポジションなのね。
因みに我がシュートックは男爵界隈でも最弱で下の下ですのよ。泣きたいですわね。
気を取り直して……。その方とウチの御先祖とニアミスしたのもその戦争だか次の紛争だったかだと思いますわ。ですけれど、その頃から貧乏男爵なら……階級を越えた友情……いえ、きっと舎弟ですわね。絶対そうですわ。
ですので薄い繋がりだなー、と思いますわよ。……寄り親関係だったのかも怪しいですわね。
あの後……私は何故か応接間に通されました。そして、薫り高いお茶とお菓子を頂きました。これぞ本物のお茶とばかりに。……練習時間すら頂いてませんでしたけれど、実力不足に凹みますわね。
美味しい……。厄介な物を見た木っ端侍女を始末する為の……毒とか入ってませんわよね?不安で仕方有りませんわ……。死ぬなら苦しみたくはありません。
赤が基調の、とてもシックで素敵なお部屋。お掃除ですら、このお部屋に立ち入れる立場ではありませんのに。ジロジロ眺める隙もありません。
難しい顔の執事長さんと侯爵様が難しい顔でお掛けになっておりますのよ。
私の顔……と言うか、おでこをガン見されておりますけれど、どういう事ですの?毒殺でなくてカチ割られますの?
「君のお父上のカルバート・コルベッタ公爵令息にご連絡を取ったよ」
「はい……。はい?」
青くなっていた顔が疑問に染まったのが、自分でも分かりました。
誰ですの、それ。
父の名前は確かにカルバートですけれど……コルベッタ?確か、ウチの蔵書にしては未だマシな扱いの、貴族年鑑の前の方のページに載ってましたわね。
コルベッタ公爵家は前王兄殿下が起こされた……由緒正しき準王家。王家に近い御領地をお持ちで……王都にも広々としたタウンハウスをお持ちの。
以前……遠目に小さいお嬢様をお見かけしましたけれど、それはそれは見事な青い目と青い髪でしたわ。フワフワした柔らかなレースとフリルに包まれたお服をお召しで。
……まあ、幼児に格差を感じてもしょうがないのですけれど。
私なんて今から職を失う瀬戸際ですのに! もしかしたら命も!! 格差酷い!!
いけませんいけません。どんな時もクールに居ないといけません。取り乱して良い事はゼロですわ!
兎に角ウチは公爵家に何の価値もありません。手下にするにも弱小オブ弱小のウチと全く何の関係も有りませんのよ。そんな伝手が隠されて居るなら、そっちに働きに行こうかしら。紹介状欲しいですわ……。
「あの、コルベッタ公爵家とは? もしかして父の上司の方でしょうか?」
「?
シェリカ嬢。……君のご実家の職務をご存じないのかな?」
ご実家の職務って……寒村ばかりの領地を必死で守るのと……お父様の窓際業務では?
寧ろそれしか有りませんわね。それとも父が何かバイトでもしてましたの? 公爵家のパシリとか? お小遣いが少ないから、パシリなんかはやっていそうですわね。
「父が陛下にお仕えしておりますが、領地は母が守っております」
「君のルーツもご存じないのかな?」
「ルーツ? とはどういう事でしょうか? 親戚とは縁が薄いとは聞いております」
「シュートック……噂に違わぬ鉄壁だな……」
何なんですのかしら、一体。
積極的に支援してくれる親戚が居れば、あんな貧乏しておりませんわよ。貧乏は鉄壁ですわよ。
「……お館様、公爵家から馬車が……」
「ああ、そうか。シェリカ嬢。荷物は?」
「えっ⁉」
お、追い出される!!
正に今、追い出される!!
「では、シェリカ嬢。また会おう」
じ、地獄で⁉
あれよあれよと言う間に……私は、公爵家の馬車とやらに乗せられて……見事気を失ったので御座いました。
格上で有ろう公爵家で、何故私が処分されるのかしら。何故……。
図書館なんて洒落たものが皆無の領地で、古新聞を集めて必死に情報収集した結果……150年位前の御先祖が隣国との戦争のガッティ中洲戦争で名だたる活躍をなさったらしいの。
それから軍人として位を上げられて……今の御当主様も陸軍に属しておられるそうですの。
貴族の中では中の上のポジションなのね。
因みに我がシュートックは男爵界隈でも最弱で下の下ですのよ。泣きたいですわね。
気を取り直して……。その方とウチの御先祖とニアミスしたのもその戦争だか次の紛争だったかだと思いますわ。ですけれど、その頃から貧乏男爵なら……階級を越えた友情……いえ、きっと舎弟ですわね。絶対そうですわ。
ですので薄い繋がりだなー、と思いますわよ。……寄り親関係だったのかも怪しいですわね。
あの後……私は何故か応接間に通されました。そして、薫り高いお茶とお菓子を頂きました。これぞ本物のお茶とばかりに。……練習時間すら頂いてませんでしたけれど、実力不足に凹みますわね。
美味しい……。厄介な物を見た木っ端侍女を始末する為の……毒とか入ってませんわよね?不安で仕方有りませんわ……。死ぬなら苦しみたくはありません。
赤が基調の、とてもシックで素敵なお部屋。お掃除ですら、このお部屋に立ち入れる立場ではありませんのに。ジロジロ眺める隙もありません。
難しい顔の執事長さんと侯爵様が難しい顔でお掛けになっておりますのよ。
私の顔……と言うか、おでこをガン見されておりますけれど、どういう事ですの?毒殺でなくてカチ割られますの?
「君のお父上のカルバート・コルベッタ公爵令息にご連絡を取ったよ」
「はい……。はい?」
青くなっていた顔が疑問に染まったのが、自分でも分かりました。
誰ですの、それ。
父の名前は確かにカルバートですけれど……コルベッタ?確か、ウチの蔵書にしては未だマシな扱いの、貴族年鑑の前の方のページに載ってましたわね。
コルベッタ公爵家は前王兄殿下が起こされた……由緒正しき準王家。王家に近い御領地をお持ちで……王都にも広々としたタウンハウスをお持ちの。
以前……遠目に小さいお嬢様をお見かけしましたけれど、それはそれは見事な青い目と青い髪でしたわ。フワフワした柔らかなレースとフリルに包まれたお服をお召しで。
……まあ、幼児に格差を感じてもしょうがないのですけれど。
私なんて今から職を失う瀬戸際ですのに! もしかしたら命も!! 格差酷い!!
いけませんいけません。どんな時もクールに居ないといけません。取り乱して良い事はゼロですわ!
兎に角ウチは公爵家に何の価値もありません。手下にするにも弱小オブ弱小のウチと全く何の関係も有りませんのよ。そんな伝手が隠されて居るなら、そっちに働きに行こうかしら。紹介状欲しいですわ……。
「あの、コルベッタ公爵家とは? もしかして父の上司の方でしょうか?」
「?
シェリカ嬢。……君のご実家の職務をご存じないのかな?」
ご実家の職務って……寒村ばかりの領地を必死で守るのと……お父様の窓際業務では?
寧ろそれしか有りませんわね。それとも父が何かバイトでもしてましたの? 公爵家のパシリとか? お小遣いが少ないから、パシリなんかはやっていそうですわね。
「父が陛下にお仕えしておりますが、領地は母が守っております」
「君のルーツもご存じないのかな?」
「ルーツ? とはどういう事でしょうか? 親戚とは縁が薄いとは聞いております」
「シュートック……噂に違わぬ鉄壁だな……」
何なんですのかしら、一体。
積極的に支援してくれる親戚が居れば、あんな貧乏しておりませんわよ。貧乏は鉄壁ですわよ。
「……お館様、公爵家から馬車が……」
「ああ、そうか。シェリカ嬢。荷物は?」
「えっ⁉」
お、追い出される!!
正に今、追い出される!!
「では、シェリカ嬢。また会おう」
じ、地獄で⁉
あれよあれよと言う間に……私は、公爵家の馬車とやらに乗せられて……見事気を失ったので御座いました。
格上で有ろう公爵家で、何故私が処分されるのかしら。何故……。
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