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お嬢様の婚約者様
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皆様ごきげんよう、私は就職したばかりのシェリカ・シュートックで、すわ……。
はぁ。
「アチシは冒険者になるのーーー!!」
これは私がお仕えする侯爵家令嬢、メリリーン様の御言葉。御年19歳をお迎えしたズガタカ侯爵家のご令嬢。
「グハと結婚してラブラブして冒険者夫婦になるーーー!!」
何でやねん。
そんなツッコミが顔に出なくなって、一週間が経ちますかしら。今日も戯言が絶好調みたい。
入ってみて内々が分かると言うものの……こりゃ酷いもの。
人材が悉くスカスカしているようなの。
特にお嬢様の周りが壊滅的。と言うか壊滅。
私で57人目だそうですのよ。説明より増えてるじゃない。侍女長様にはサバ読まれていたのね。まあ、微々たるサバですけどー!
何でも、侯爵家たるもの身分と素性のしっかりした方々をお雇いなのだけれど……。
そのしっかりした方々が自信を砕かれ、眩暈を起こしてお辞めになられたそう。
今は辛うじて侍女長様や夫人の侍女方が周りのことをなさっているそうだけれど……。
私は新人オブ新人なので、辛うじて部屋の間取りを覚えたばかり。未だ物の位置すら分かりませんのよ。研修期間も無かったですからね。
「自分でするのーーー!!」
ガキか。いえ、クソガキか。
いけないわ、顔に出る所でした。
この方、19にしては幼すぎやしません?
どうも、拐われたお嬢様をご両親が滅茶苦茶甘やかされたようなんですのよね。
それに反抗して、お嬢様は外を渇望されるようになったとのことで。
「ねえ、オマエ!ド田舎から来てんでしょ! 土から直に食べてるの⁉」
「いえ、洗います」
「お前、物知らず! 川は色んな生き物がいるから汚いのよ!グハが教えてくれたんだから! バーカ!」
……知っとるわ!! と、怒鳴り返さない私の忍耐は我が家が育んだのよね。お母様有り難う御座います。
「グハはあんたらとは違うのよね!」
と言うか多分その冒険者もこのクソガキ、おおっとお嬢様に手を焼いただろうなー、と思いますわ。
因みに砂と石を使って作る浄化槽位田舎でもあるのよバーカ! とお返ししたいわー。
何と言うかこのお嬢様、口調だけでなくて心根も我が儘だわ……。
頭でも打ってんのか?と思いきや……拐われた当時もこんなもんだったらしいのよ。口調が汚くなっただけらしいわ。
だけって言いませんわね、それは。
……あら、何だか扉の向こうからお手紙が差し込まれたわ。……普通、ノックと共に執事が現れて差し出される筈なのだけれど……。
執事もお嬢様に総じて滅茶苦茶貶されて、誰も会いたくないらしいわ。
分かるわ……。お察ししますわ……。
ですけれど、殺人事件の舞台の登場人物の気分になるのはどうしてかしら。此処に来て読ませて頂いたミステリー本のせいかしら。
「お嬢様、かねてからお約束のロイド様がいらっしゃいましたわ」
「知らーね! 会いたくなーい! ヤダー!」
そう、例の灰色の髪に煉瓦色の瞳のイケメン……ロイド・ホワー伯爵令息様。
私が嘗てぶつかってご迷惑を掛けたのに、親切にしてくださった方。
このモジャけた我が儘クソガキ(歳上だけれど)と婚約されているようですのよ。
……酷い話も有るものよね。
「オマエ、男爵の娘の癖に口調キモーい! もっと砕けたら?」
「致しかねます。では、お断りを伝えて参りますので」
「早く追い出して! 後、お茶ね!」
世の中の男爵階級を何だと思ってんだあのクソガキが。
無位無冠のお前よりお父様の方が偉いのよ!! まあ、娘の私は全く偉くないけれどね!!
と言うか散々冒険者として自活するとか仰ってるけれど、ポットのひとつすらお持ちになれないわ。そんな事でどうやってなるのよ。
突っ込みどころが多すぎて、無理やり消化しながらも廊下を歩きながら……納得致しました。
……確かに、こりゃ辞めますわね。
最初の方は子爵階級の次女や三女以下の子女がお勤めに来ていたらしいけれど、無理だわ……。
「ロイド伯爵令息様、お待たせを致しまして申し訳御座いません」
「いや、構わん。……また、会わないと?」
「重ね重ね申し訳御座いません……」
尊大だなーと思った口調も、労りに満ちていて。
3日と開けず訪ねてくださる滅茶苦茶良い方なのに……。
お嬢様は兎に角……一挙手一投足が気に入らないそう。
はぁ。
「アチシは冒険者になるのーーー!!」
これは私がお仕えする侯爵家令嬢、メリリーン様の御言葉。御年19歳をお迎えしたズガタカ侯爵家のご令嬢。
「グハと結婚してラブラブして冒険者夫婦になるーーー!!」
何でやねん。
そんなツッコミが顔に出なくなって、一週間が経ちますかしら。今日も戯言が絶好調みたい。
入ってみて内々が分かると言うものの……こりゃ酷いもの。
人材が悉くスカスカしているようなの。
特にお嬢様の周りが壊滅的。と言うか壊滅。
私で57人目だそうですのよ。説明より増えてるじゃない。侍女長様にはサバ読まれていたのね。まあ、微々たるサバですけどー!
何でも、侯爵家たるもの身分と素性のしっかりした方々をお雇いなのだけれど……。
そのしっかりした方々が自信を砕かれ、眩暈を起こしてお辞めになられたそう。
今は辛うじて侍女長様や夫人の侍女方が周りのことをなさっているそうだけれど……。
私は新人オブ新人なので、辛うじて部屋の間取りを覚えたばかり。未だ物の位置すら分かりませんのよ。研修期間も無かったですからね。
「自分でするのーーー!!」
ガキか。いえ、クソガキか。
いけないわ、顔に出る所でした。
この方、19にしては幼すぎやしません?
どうも、拐われたお嬢様をご両親が滅茶苦茶甘やかされたようなんですのよね。
それに反抗して、お嬢様は外を渇望されるようになったとのことで。
「ねえ、オマエ!ド田舎から来てんでしょ! 土から直に食べてるの⁉」
「いえ、洗います」
「お前、物知らず! 川は色んな生き物がいるから汚いのよ!グハが教えてくれたんだから! バーカ!」
……知っとるわ!! と、怒鳴り返さない私の忍耐は我が家が育んだのよね。お母様有り難う御座います。
「グハはあんたらとは違うのよね!」
と言うか多分その冒険者もこのクソガキ、おおっとお嬢様に手を焼いただろうなー、と思いますわ。
因みに砂と石を使って作る浄化槽位田舎でもあるのよバーカ! とお返ししたいわー。
何と言うかこのお嬢様、口調だけでなくて心根も我が儘だわ……。
頭でも打ってんのか?と思いきや……拐われた当時もこんなもんだったらしいのよ。口調が汚くなっただけらしいわ。
だけって言いませんわね、それは。
……あら、何だか扉の向こうからお手紙が差し込まれたわ。……普通、ノックと共に執事が現れて差し出される筈なのだけれど……。
執事もお嬢様に総じて滅茶苦茶貶されて、誰も会いたくないらしいわ。
分かるわ……。お察ししますわ……。
ですけれど、殺人事件の舞台の登場人物の気分になるのはどうしてかしら。此処に来て読ませて頂いたミステリー本のせいかしら。
「お嬢様、かねてからお約束のロイド様がいらっしゃいましたわ」
「知らーね! 会いたくなーい! ヤダー!」
そう、例の灰色の髪に煉瓦色の瞳のイケメン……ロイド・ホワー伯爵令息様。
私が嘗てぶつかってご迷惑を掛けたのに、親切にしてくださった方。
このモジャけた我が儘クソガキ(歳上だけれど)と婚約されているようですのよ。
……酷い話も有るものよね。
「オマエ、男爵の娘の癖に口調キモーい! もっと砕けたら?」
「致しかねます。では、お断りを伝えて参りますので」
「早く追い出して! 後、お茶ね!」
世の中の男爵階級を何だと思ってんだあのクソガキが。
無位無冠のお前よりお父様の方が偉いのよ!! まあ、娘の私は全く偉くないけれどね!!
と言うか散々冒険者として自活するとか仰ってるけれど、ポットのひとつすらお持ちになれないわ。そんな事でどうやってなるのよ。
突っ込みどころが多すぎて、無理やり消化しながらも廊下を歩きながら……納得致しました。
……確かに、こりゃ辞めますわね。
最初の方は子爵階級の次女や三女以下の子女がお勤めに来ていたらしいけれど、無理だわ……。
「ロイド伯爵令息様、お待たせを致しまして申し訳御座いません」
「いや、構わん。……また、会わないと?」
「重ね重ね申し訳御座いません……」
尊大だなーと思った口調も、労りに満ちていて。
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お嬢様は兎に角……一挙手一投足が気に入らないそう。
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