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お嬢様はクソガキ体質
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「……貴女を見込んで、お嬢様のお側仕えに任命するわ」
「……あの、失礼ですが何か何方かとお間違えでは?」
普通、そういう科白はベテラン侍女に掛けるものでは有りませんかしら。初日のペーペーに放つお言葉では有りませんわよ。
侍女歴1日未満でも分かりますわよ。本当に必死な眼差しを寄越されるの勘弁してください。
「其処を何とか!!」
「あの……そう言われましても」
侍女長様のお話を聞くと、お嬢様のお側仕え、私で54人目だそうなの。
「どういう事ですの?」
そんな……お側仕えをクビにしまくりって、間違いなく事故物件令嬢ですわよね⁉
ま、まさか侍女をイビってゲハゲハ嗤うバイオレンスなご趣味が⁉ どうしよう⁉
「違うのよ!! お嬢様は暴力など振るったりしないわ!!」
顔に出ていたらしいわね。だけど、私の顔色が不敬だと罵られない辺り、侍女長様のお疲れが見て取れるわ……。
「少し、ええと、お言葉がね」
「それは……」
「見て貰った方が早いわ」
ご、強引だわ。
私未だ、此処に着いて3時間も経っていないのだけど。
ああ、使用人棟の貰ったお部屋に荷物を放り込んだだけなのに。一息吐かせる暇も与えてくださらないの⁉
「あんなのと結婚やだってーーー!! グハ!! アチシはグハと13の海を制覇すんだからーーー!!」
……え、誰?
何だか、ウチの領地の山の猿みたいな甲高い声がするわ。何処かに子供が居るのかしら? 使用人の子? それにしては躾がなってない……。
「……ううっ」
あ、侍女長様の足が止まったわ。
お、お顔が……干した大根みたいに白く萎れているし、お口元と蟀谷がリズミカルにヒクヒクしているわ……。
「あの、お体は」
「……御免なさいね……」
ああ、肩を振るわせてハラハラと泣いてしまわれたわよ。解れた赤いお髪が色っぽく、少しお疲れだけれど田舎では見ない美女だわぁ。侯爵家は使用人のお顔のレベルまで高いのね……。
じゃなくてよ。
この状況から察したわ。この滅茶苦茶広い廊下で何処に居るのか分からない状況でも、察せざるを得ない。
あれは、メリリーンお嬢様御本人の奇声、いえお声だと。
新人がこなせる役では無いのに本当におかしいなーとさっきから思っていたのよ……。半ば引き摺られながらもね。
ええ、初日から……私も若干帰りたい毎日ですけどー? こんな短時間で帰ったら余計にねえ。
お母様に塩漬けにされてしまうわ。おお、恐ろしい!!
そして、お嬢様のお部屋へ行ってる場合じゃなくて……即座に使用人棟にUターンしたわ。今度はこっちが半ば抱えるようにして。
侍女長様のメンタルがヤバすぎるもの。
腕すら血の気が失せてるものね。
因みにお嬢様のまるで甘やかされた小猿系……いえ、あの個性的なお言葉遣いは……。
遡ること5年前。
当時から我が儘だったお嬢様は、外国の淑女学校に一時留学させられていたらしいの。その歳に、拐われたそうで。とてもお痛わしいお話よね。
それは侯爵家は上を下への大騒ぎ。そのピンチを……平民の冒険者が救い、暫く生活を共にされていたとか。そしてその……肩の力を抜いた言葉を覚えてしまわれたようですって。
因みに、その平民の冒険者と居たのは2週間程。生活を共にされていたって程でもない期間だわ。
影響、受けすぎでしょう?
……何で15年も何不自由無く貴族でいて、そんな口調になれるのよ。突っ込みどころしかないわ。
そして、お嬢様はその愛する冒険者のグハさんと旅に出たいと夢想されているらしいわ。
……いや、普通に侯爵家に送り届けられた時点で、恋愛関係生まれてないわよね? 何故?
「奥様は寝込まれるし、旦那様は沈まれるし、当時侍女長だった母は他界するし……もう、私はどうしていいのか……」
……兎に角侍女長様……ハモニアさんと仰るそうだけれど、彼女の看病と愚痴聞きで初日が終わったわ。
「お願い、貴女のような物事に動じない優しい侍女なら、きっとお嬢様を元の位置に戻せるかもしれないの!」
……どえらい所に来てしまったのね……。
「……あの、失礼ですが何か何方かとお間違えでは?」
普通、そういう科白はベテラン侍女に掛けるものでは有りませんかしら。初日のペーペーに放つお言葉では有りませんわよ。
侍女歴1日未満でも分かりますわよ。本当に必死な眼差しを寄越されるの勘弁してください。
「其処を何とか!!」
「あの……そう言われましても」
侍女長様のお話を聞くと、お嬢様のお側仕え、私で54人目だそうなの。
「どういう事ですの?」
そんな……お側仕えをクビにしまくりって、間違いなく事故物件令嬢ですわよね⁉
ま、まさか侍女をイビってゲハゲハ嗤うバイオレンスなご趣味が⁉ どうしよう⁉
「違うのよ!! お嬢様は暴力など振るったりしないわ!!」
顔に出ていたらしいわね。だけど、私の顔色が不敬だと罵られない辺り、侍女長様のお疲れが見て取れるわ……。
「少し、ええと、お言葉がね」
「それは……」
「見て貰った方が早いわ」
ご、強引だわ。
私未だ、此処に着いて3時間も経っていないのだけど。
ああ、使用人棟の貰ったお部屋に荷物を放り込んだだけなのに。一息吐かせる暇も与えてくださらないの⁉
「あんなのと結婚やだってーーー!! グハ!! アチシはグハと13の海を制覇すんだからーーー!!」
……え、誰?
何だか、ウチの領地の山の猿みたいな甲高い声がするわ。何処かに子供が居るのかしら? 使用人の子? それにしては躾がなってない……。
「……ううっ」
あ、侍女長様の足が止まったわ。
お、お顔が……干した大根みたいに白く萎れているし、お口元と蟀谷がリズミカルにヒクヒクしているわ……。
「あの、お体は」
「……御免なさいね……」
ああ、肩を振るわせてハラハラと泣いてしまわれたわよ。解れた赤いお髪が色っぽく、少しお疲れだけれど田舎では見ない美女だわぁ。侯爵家は使用人のお顔のレベルまで高いのね……。
じゃなくてよ。
この状況から察したわ。この滅茶苦茶広い廊下で何処に居るのか分からない状況でも、察せざるを得ない。
あれは、メリリーンお嬢様御本人の奇声、いえお声だと。
新人がこなせる役では無いのに本当におかしいなーとさっきから思っていたのよ……。半ば引き摺られながらもね。
ええ、初日から……私も若干帰りたい毎日ですけどー? こんな短時間で帰ったら余計にねえ。
お母様に塩漬けにされてしまうわ。おお、恐ろしい!!
そして、お嬢様のお部屋へ行ってる場合じゃなくて……即座に使用人棟にUターンしたわ。今度はこっちが半ば抱えるようにして。
侍女長様のメンタルがヤバすぎるもの。
腕すら血の気が失せてるものね。
因みにお嬢様のまるで甘やかされた小猿系……いえ、あの個性的なお言葉遣いは……。
遡ること5年前。
当時から我が儘だったお嬢様は、外国の淑女学校に一時留学させられていたらしいの。その歳に、拐われたそうで。とてもお痛わしいお話よね。
それは侯爵家は上を下への大騒ぎ。そのピンチを……平民の冒険者が救い、暫く生活を共にされていたとか。そしてその……肩の力を抜いた言葉を覚えてしまわれたようですって。
因みに、その平民の冒険者と居たのは2週間程。生活を共にされていたって程でもない期間だわ。
影響、受けすぎでしょう?
……何で15年も何不自由無く貴族でいて、そんな口調になれるのよ。突っ込みどころしかないわ。
そして、お嬢様はその愛する冒険者のグハさんと旅に出たいと夢想されているらしいわ。
……いや、普通に侯爵家に送り届けられた時点で、恋愛関係生まれてないわよね? 何故?
「奥様は寝込まれるし、旦那様は沈まれるし、当時侍女長だった母は他界するし……もう、私はどうしていいのか……」
……兎に角侍女長様……ハモニアさんと仰るそうだけれど、彼女の看病と愚痴聞きで初日が終わったわ。
「お願い、貴女のような物事に動じない優しい侍女なら、きっとお嬢様を元の位置に戻せるかもしれないの!」
……どえらい所に来てしまったのね……。
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