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信じられなかった過去の話

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「と言う訳でー、ママ、とってもマーシャル侯爵家が嫌いなのー!」

 別荘に閉じ込め……いえ、滞在中のお母様を超特急でお迎えに行かせて、着いた途端出るわ出るわの弾丸トーク。次から次へととんでもない言葉が……。
 ……いやはやマーシャル侯爵って、女を見下す最低暴君だったのね……。あんなに紳士的だったのに……。

「……ドロシー、何故言わんかった」
「だってー、あっちは社会的地位の高い取り繕いのプロで、猫かぶり初心者の小娘でしたしー」

 確かに、見た目からしてお母様の話なんて嘘臭いものね……。当時も今も信じる人居なさそう……。
 親だと言うのに、社会的にも身内でも信用性が高くないもの。私って、酷い娘だわ。

「アタシ、子供の頃にコゼット様を見たことあるのよ? 
 アタマ良くてーステキでーセンス良くてー、あの侯爵共のスカさが際立ってたわー」
「祖母の事を褒めてくださって有難う御座います……」
「ヤダ、赤いクマさんみたいでかーわいー! 鋭いお目々は金色! 
 ね、ちゃんと家族を思いやれるこんな良い子をマーシャル家にやるなんて、ダメダメよードレニスちゃん! リサーチ不足!」
「うっ……」

 ご尤も過ぎてぐうの音も出ないわ……。

「アタマ良く育てた筈なのに、パパの血が入ってるから暴走しちゃうのねー」
「ドロシー、間接的に私を貶しているのか?」
「お義父様だってお話半分だった癖にー」
「おっ、お前らのスキャンダルの尻拭いで当時は大変だったからだ……!」

 お祖父様のお言葉にも力が無いわね……。確かに、マーシャル侯爵家の表面的な事しか見てなかったもの……。節穴よね……。

「あの侯爵、超キモかったのよー? 
 初対面でいきなりガン見されるしー、家にアホみたいなセンスのドレス届くしー、挙句の果てに勝手に地位を嵩にきた婚約偽造されちゃうしー」
「確かに、好きでもない相手からの急な押し掛けは、恐ろしいですね……」
「でっしょー?」

 ロベルト様も同意されているわ……。
 初対面のガン見に、勝手なプレゼント……地位を嵩にきた押し付け……。
 しまった、私もロベルト様に迷惑行為を……!?

「おじょ……ドレニス嬢? どうしたんですか? 急に固まって」
「い、いえ……。お構いなく」

 申し訳無さすぎて、そそっと目を逸らすしか出来ないわ……。うう、情熱に煽られて私もお母様のストーカーと似たような行いを……! 何て罪深いのかしら! どうお詫びすれば……!? 

「ドレニスちゃんったら、極端ー! パパそっくりー!」
「お母様!」

 は、は、腹が立つけれど!
 ……でも、前より両親に嫌悪感が無くなっているわ。
 私が知らないだけで、苦労していたのね……。仕事サボるのは本当に許せないけれど!

「しかし……マーシャル侯爵家がコゼット嬢拉致に関わっているとはな」
「侯爵から逃げ回ってた時、外周庭園でアイツの従者が笑い話にしてたものー」
「証拠がな……。ロベルト、君は何も祖母君から聞いていないのか?」
「父親に連れてこられて棄てられた、とだけ……」
「コジーム・マーシャルか……。あの男も子の躾に厳しいだけで良い奴だと思っていたが、外面が良かっただけなのだな……」

 諸悪の根源は、前侯爵コジーム・マーシャル……。
 実の妹を妬んで自作の誘拐事件を起こした犯罪者……。

 ……トニー・ヤヤッカラのアホと婚約破棄をする筈だったのに、何故こんな事になったのかしら……。
 どんどんスケールが大きくなっていくわ……。
 次の婚約者としてロベルト様に箔付けしよう、そんな馬鹿な事を考えたから、罰が当たったのかしら……。どんな地位のロベルト様でも良かったのに……。

「お母様、私とロベルト様が殺されると言うのは……」
「インパクトー? う、嘘よお! ドレニスちゃんってば、ジョークよお!」

 お母様への上がった好感度が下がりに下がって、悪鬼のような顔になるかと思ったわ!

「だってえ! ドレニスちゃんってばママとソックリなんだもの! あの男、ドレニスちゃんがアホに育ってたら間違いなく拉致してるわよお!」
「は、はあ!?」
「なっ、おじょ……ドレニス嬢が!?」
「いや、拉致してから暴力で言いなりにする可能性も有る……。私は今の侯爵の性格を知らんが、暴力男に言いくるめて閉じ込められた御婦人の例も山程ある……」

 こ、こ、怖い事になって来たんだけれど!
 私、マーシャル侯爵のタイプじゃないのでしょう!? 顔が母似でタイプだとしても、別人なのに!? 

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