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憧れとの物理的な距離

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ダメだ、どんなポジティブスマイルを投げ掛けても凄い刺々しいオーラで睨まれる一択! きっと今一歩でも近寄ったらあのデカい武器で刺される一択!
 職務に邁進してる人達オンリーで、フレンドリーなんて、居そうになかったわ。

「ぼ、ホヘフェ……」

 ……こ、怖い……。視線が怖すぎて、もうチラ見すら怖い。ふええとかヒロインらしく出てこない。胃から悪寒と吐き気が迫り上がってくる。

 流石にゴツい大鎌やら槍やら武器持ちのフルフェイス兜軍団に、不審がられちゃあなあ。無理? もう好感度は生まれそうにない……? 
 せ、せめてバイザーを……バイザーを、取ってくんないかなぁ。ほら、フェイス・トゥ・フェイスが対話と友好の基本……。そして愛への前奏曲を、ふたりでチャリラリラーと軽やかに送りましょう?

「…………」

 ……駄 目 だ。

 視線を交わさずとも、殺気がヤバすぎる……。
 こりゃあ少なくとも、滅茶苦茶不審者認定された!! どうしよう!
 もう、こうなったらその辺歩いてる貴族に、私のパーフェクト可愛さを見初めて貰うしか!

「言っとくけど、貴族がこっち来ても、絶対! 相手したら駄目だからね!?」
「えっ、何で!? お近付きになれるチャンスなのに……」
「お、お近付きぃ!? ななな、何てことを!」

 な、何!? そんな滅茶苦茶オバケを見るような顔で!

「それこそ駄目だよ! 止めて! 悍ましいドン底人生! 死んだ方がマシな地獄まっしぐらだよ!
 貴族の最下層の妾になれって、ゴミみたいな条件の奴隷契約結ばされた子が先週出たんだよ!?」
「どどどっ……れっれれれ!?」

 ど、奴隷契約……!? なっ、何でそんなに酷いの!? そんなもん結ばせるだなんて、どんな無法地帯よ! 学校の、いえ国の秩序は何処なのよ!? 許すなよ!
「んもう! リセ姉さんはどうしてそう世間知らずなの!?
 貴族なんて、小金をチラつかせて幼気な何も知らないボーっとした庶民を騙すんだよ!
 死ぬギリギリのラインでボロ雑巾になっても、傍若無人にコキ使って売り払う悪魔だらけなんだからね!」

 どんな極悪人だらけの修羅集団なの……。怖すぎるわ貴族って……。
 イメージと全然違う。高貴って何なの。セレブホホホキラキラリーンじゃないの。

 じゃあ、学校で見初められるのはダメか。じゃあ、卒業後なら良いの!? それなら、普通のラブラブに発展……?
 大人の恋愛なら、騙されるリスク減るもんね!
 そう、自立したレディとしての大人恋愛ゲームかも! ちょっと思ってたのと違うけど悪くないわ! 

「そ、それじゃ、ふ、普通にこう、貴族のお屋敷に就職とか……?」
「就職? 就 職 ぅ!?」

 妹の瞳孔開いた目が怖すぎる。そんなに目を剥かないで!
 最早、就職利用して玉の輿に乗りたいなんて口が裂けても言えない雰囲気だわ……。

「何言ってるの!? 偶々その辺に居た、領民でもない庶民を使用人として雇うなんて有り得ないよ。高位貴族の傍によれる使用人は、下級貴族を雇うの!
 それに、成績優秀者じゃないと、スカウトなんて来ないよ」
「そ、そうなの……?」

 じゃあ勉強頑張れば、貴族に見初められるチャンスが? 下剋上ラブが花開いてくる感じ?

「どうしちゃったの、姉さん。大体、ウチを継ぐ為に勉強に来たんだから、貴族にスカウトなんてされたら困るでしょ」
「そ、そうだっけ……」
「だから、貴族の目に止まらないようにテストは程々のランクを保たなきゃね! 順位とかより大事なのは、平穏な生活を送る為の健やかな命だから! 下手に上位取ると奴隷だよ! テストは貴族様をヨイショする為に手抜き! 分かった!?」

 目に止まらないように程々勉強……。頑張っても報われんじゃないの、それ。
 ……何でそんな世知辛い事に……。折角の異世界なのに……。おお、あんなに近かった溺愛貴族ラブが遠い。遙かに遠過ぎる。
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