異世界製作 〜転生しようと思ったら異世界作る側だった〜

寝占 羊

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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」

第48世 「悲哀と歓喜の間の仕事」

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 「はぁー?結局洞窟に引き戻されてんだが…」
マップの声がする方を見ると、皆無事だった。

 流石にソイドが落ち切るまでには神の力を使おうと思っていたのだが…謎の爆発と、地響きで間に合わなかった…
ソイドは落下死、もしくは、さっきの爆発に巻き込まれたかもしれない…
どちらにせよ今見つければ神の力で治す事が…
「創夢様!私も実体型ですから、能力を多少使えるので、当たっているか分かりませんが、彼が落ちる直前…彼の防御力強化を当てておきました!
早く探しに行きましょう…私もヘルプします!」

 「ありがとう!ルプ!」
 物理的なヘルプも可能になったルプの力も借りて、俺達は渓谷をくだる事にした。

 「何があったお前ら?
まぁ、ソイドが心配とかじゃねぇけどさ…
俺は地図を取り返しに行くだけだから?」

 「声が震えていますわマップさん…」

 「父さん…」

 「ねぇみんな…なんかあったんだ…今は静かに…」

 「良いんだホノン!僕は気にしないで…
まだ諦めた訳じゃないし、父さんが自分で選んだ道だ…」

 やっぱりミオは強い子だ…。
でも、ミオがここで泣きじゃくったりする方が不思議に感じていただろうって思うくらい、ミオとソイドは"親子"って感じでは無かった気もする。

どちらかというと、今のミオの中では、あまり悲しみの気持ちが湧かなくて逆にそれに罪悪感を感じているのかもしれない…。

そしてそれはミオだけで無く、
他の何人かも同じような表情をしている。
ソイドが渓谷に落ちてしまった。としか説明していないが…正直どうでも良さそうな顔のやつばかりだ。

それほどソイドが嫌われていたのか…
それとも、単にまだ感情が強くは無いのか…。

 「はぁ、昔もよくこうやって渓谷旅して来たもんだな…
創夢!お前がそんなに正しい道を選んで進んでいるのはお前の力か?」

 「あ、あぁ、そんなところだ…
元々気を強く持てば正解の道を見つけられるってタイプなんだよ俺は…」
 本当はただルプを使ってるだけなんだが…変な言い訳しちまった…

 「創夢様!次はこちらです!」

 「そうか…」
 マップもこの微妙な空気を感じていたようで、話し続ける事で変えようとしていた。

 「ミオ!ソイドはどんな過去を話した?
さっきの奇行に、その過去が関係あんのか?」

 「まだ話せないよ…
けど別に関係してないと思う…
というか、話しても良いことなんてない、
ただのくそ親父だった…殺してやりたい程にね!
だから!あんな一方的に言われるのも…
ここで死なれるのも違うんだよ!」

 「ミオさん!?
ミオさんがそう言うなら、きっと本当に酷い人なのですわね…」

「はぁ。やめだやめだ。なぁ、帰ったら何するよ?
いや…これも今じゃねぇな…

分かった…次は俺の過去でも話すわ…」

 早く歩き過ぎて疲れたみんなは
普通の速度に戻し
歩きながらマップの過去を聞いていた。

 「そうだなぁ…、元々はシフト村に生まれた!
何もやりたい事が無く、渋々、サトウキビの農民をしていた。
そんなある日、急に村が怪物に襲われる事になって…ある2人の夫婦を残してだが…皆逃げるに成功。
そして、次の村を作る。
のでは無く、探す冒険が始まった!
元々俺は冒険の村って訳だな。」

 「だから製図家になったのですわね?」

「あぁ、元々サトウキビ畑を育て、紙を余るほど持っていたからな…地図を描いていく事にしたんだ。

で、またそのある日、村の廃坑を見つけた。
なんか、廃坑なのに、しっかりしててきれいまであったそこに、俺達シフト村は住む事を決める。
もちろん工事し直してだが。」

 「マップ!地図見つけたぞ!」

 マップの過去話の途中、飛んで行った地図を見つけた創夢はそれをマップに手渡した。

 「お、おう。見つかっちゃったか…
てか!ビチャビチャでもうダメだなこりゃ…」

 「ドライポーション!
私の薬で乾かしておいてあげますわ!」

 「おう!ありがとうベルミー!」

 「で?その廃坑からどうしたの?」

 「あぁ、そのニューシフト村では、
洞窟や渓谷が近かったり、
その下に、洞窟内廃坑もあった!

俺はそこでの探検が楽しみになって、
ある時、その廃坑で宝箱を見つけたんだ。

入ってたもんはそんなに良いもんじゃ無かったが…
それをきっかけに、世界のあらゆる場所を探検し、紙に記す事が俺のやりたい事になった。

同じく!村の野菜農民として生きて来た、恋仲のグランマルは同じようによく俺と探検していた。」

 「えぇ!マップはその時からグランマルと一緒だったの?」

 「あぁ、そうだ…だから冒険、探検には慣れてると思ってたんだがな…
まさか急に行かないって言うから、今回は驚いた…」

 「まぁ実際今回の冒険…こうやって問題ばかりだ…
グランマルの判断も正しかった…」

 「そうだな、創夢!
でも、昔もそんな事あったんだ。
ある時、グランマルはスケルトンに攻撃を受け、
右肩の後ろと足に大きな傷を作ってしまった。

それをきっかけに、俺はグランマルを探検に連れていく事をやめ、村も置き去りに旅に出ると言い残し出て行った。」

 「どうしてですの?そんなのグランさんからすればショックでは?」

 「あぁ、だが、もう俺に着いてこようとして危ない目にはあって欲しく無かったんだ。」

 「なら、マップももう危ない事はしなければ…」

「まぁな、でも俺には夢があるんだ…
それはこの世のどこかにあるっていう特別な宝箱で、その中にはこの世の概念をもくつがえす3つの神器が入ってるって言われているんだ…
それを見つける事!
だから、夢も諦められない俺は、グランに俺を追う事を諦めて欲しくて旅に出たんだ…」

 「じゃあそれはまだ見つかって無いのですわね?」

 「で、そこからどうやってハァーン村に来たの?」

 「あぁ、俺ももう会えないと思ってたんだが、
数年後、たまたまハァーン村に旅に来た時、
そこでまた再会したんだ…
その運命の場所、ハァーン村で、俺達は住人として生きる事にしたんだ。」

 「えぇー!マップがそんな素敵な理由でこの村に!」

 「着いたぞお前ら!」

 「って…雰囲気が…台無しだ…」

 「渓谷の1番下だ!」

 その大きな渓谷は、下まで日の光が届き明るかった。マップが変えた雰囲気のおかげで、皆ソイドへの希望が高まっていた。
 「で、俺の過去も丁度そんなもんだ!ソイド探すぞ!」

 「はぁ、私達はソイドさんを探してばかりですわね…」

 「そうだな、あの魔女がいた森の時も…」

 ホノンがあの森の事を話した瞬間だった。
ベルミーが口を押さえて驚き始めた。

 「はっ!まさか!そんな!」

 「どうしたベルミー!?ソイドか?居たのか?」

 「違いますわ!この匂い…
薬ですの!」

 それはベルミーの嗅いだ事のある薬の香りだったようだ。
それを聞きすぐに俺も匂いを確認した。
それはあの森で、魔女達が自爆した時の匂いと同じものだった。

 「ベルミー!匂いが強い場所に案内してくれ!」

より正確なベルミーに頼ろうとそう言い、
ベルミーを先頭に渓谷を歩いてすぐだった。

 「きゃぁー!や、やはり…」

 「どうし…」

 俺はどうした!と言う前にそれを見た。
そこには岩に囲まれた場所に落ち、死んだソイドの上半身が落ちていた。
内側から破裂したようにベラベラになった腹の肉だが、内臓は見えず、下半身は無かった。
顔は比較的ダメージが少ないが、眼帯が外れ傷跡の残る閉じた片目と、目を開けたままの眼球が飛び出しかけている片目で横を向いていた。

 オエッ!
ベルミーは吐いてしまっていた。
後から来るみんなも衝撃に言葉を無くし、
さっきまで話に盛り上がっていたという事にさえ罪悪感を感じていた。

 「うっ!こっちに…下半身…」
マップはそのさらに奥の岩に下半身を発見していた。

 「どうやら私の力は少し遅かったようです…すみません…」

 「なぜルプが謝る…
すまない…みんな、ここまでのものはもう俺にも治せない…
ソイドは…諦めるしか…」

 その時、ミオが大笑いし始めた。
 「ハッハッハッハ!
当然だよ…当然だよ父さん…
最後までくそ野郎だ…殺してさえもくれない…」
笑う声の奥には悔しさを感じる。そして目には涙が浮かんでいた。

 実際にもあるんだろうな。身近な人が死んだからと言って必ずしも悲しくなれるとは限らない…。
自分がそうしたいと思う感情とは違う感情の時だってあるんだ。
そしてそれが苦しく、そんな自分をまた嫌うという感情が現れ、つくろわれた感情で"元の感情"を隠す。
"本心"は変えられない。
そこには少しホッとしている自分がいるかもしれないし、もはや歓喜している自分かも知れない。
人の感情、本心、それらはそこまで信じて良いものでは無いんだ…。

それでも気になる…俺が死んだ時…周りはどう感じていたんだろう。周りの"本心"は何を言っていたのだろう…。

 「おま…大丈夫か?」
ミオを心配するマップ。
ホノンに背中をさすられながら、少し楽になったベルミーも言う。
 「人が1人死んだのですよ…
みなさん…どうしてそこまで…平気なのですか?」

 するとミオが答えた。
 「あいつは、スクセブ・スレイとチッビル・フモを殺した!いや、実際もっと多くを殺してる…
この2人も僕は会った事の無い2人だけど…。
今はそれだけ理解していれば良いよ…」

それを聞き、さらに驚くベルミー。
 「はっ…そ、そんな…」

 「やっぱり…そうだったんだ…」

 「ホ、ホノン!?あなたは知っていましたの?」

 「い、いや、知ってるも何も、ホノンもフモちゃんしか知らないから…
けど、昔から観察とか分析が得意だから…
あのおっさんの行動から、なんとなくね…」

 「察してたのか?」

 「ヴゥー!」

 「お前ら…この死体を目当てに怪物が寄り付くかもしれん…
ここから離れ…」
 創夢は感情を殺し、次の犠牲者を出さないよう村に帰る事だけを考えていた。
創夢の話を遮るように、マップも言った。

 「あぁ、帰るぞ!
もう何も考えるな!戻っては来ない!」

 そして村を目指した。



 ソイド、死亡。



▫︎第48話用語解説



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