異世界製作 〜転生しようと思ったら異世界作る側だった〜

寝占 羊

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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」

第47世 「治療薬完成!」

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 モゴモゴ モゴモゴ
 洞窟の拠点は、入るとすぐ皆の共有スペースがあり、その奥、左右にそれぞれ格部屋がある。何かあった時にすぐ駆け付けられる為、皆の共有スペースの1番近くに俺の部屋はあった。右の部屋だ。
ちなみに創夢の反対側、拠点に入って左側の部屋は倉庫になっている。
そして創夢の部屋には、ソイドとミオの話し声が少し聞こえて来る。
 盗み聞くつもりは全く無かったのだが、寝付けなかった俺はドアの近くに座り込み、水を飲んでいた。

 「…生贄として送る前に…自分の性奴隷とした…」

 ソイドのその発言を聞き、創夢は少し水を吹き出してしまった。
 なんだ今の話は?
それは自分の事なのか?それとも過去に会った誰かのした事の話なのか?くそ、驚きで話を聞き逃した…

 「…彼らは…」

 彼ら?この話を聞く限りは自分では無く人の話か…?

 「それからは徐々に生贄だけに収まらず、村の女は好きに使った…」

 つか…使った?
すごい話をしているなぁ…あいつがミオにだけ話したいって言った気持ちも分かった気がする…。

だが…ここまで来たとは…元々モブであった奴が"性"に関する事まで…

でもそうか、今日マップも言ってたよな、「男のする事じゃ無い」とか。
それくらいここにも"性"が当たり前に浸透して来ているのか…?

ゲームの世界、それもマインドクラフトであればなおさら必要のない"性"に関する事をすでに過去として持っている。もう俺が作ったなんてレベルの話じゃない。

 「創夢様…変態な創夢様ならこういう設定を作り入れる事も…とも考えましたが…
やはりおかしいのは私も感じてる。
そろそろあのおじさんにこの世界で何が起きているか連絡するべきなので、その方法もこれから探って行かないと…」

 分かってる…ルプの言う通りだ…
その俺の忘れた記憶の中にいる"おっさん"に話を聞かないとな…

今日はもう良い…寝よう…
そう思い、水を飲み干した瓶を置くと俺はまた眠りについた。



 朝起きて皆共有スペースに集まると、そこには、寝れなかったのだろう、大きなクマを目の下に付けたミオと、誰かに殴られたようなパンパンに膨れる顔で挨拶をするソイドがいた。

 「ぼ、ぼばよう!」

 「もはや何語だ?ソイド…」

 ミオは汗を流しながらそっぽを向いた。

 「おい!昨日また何かに襲われたのか?ソイド!お前…寝たきりで顔パンパンで…
バッハッハッハ…ごめん…」

 「プフフッ…こ、この顔は笑わない方が…難しい…」

 「マップさん!ホノン!
可哀想でははりまへんかふ!これは…すぐ治療を…」

 ベルミーは笑いを堪えながら治療していた。

 「ですが…これは本当に何が…ミオさん?昨日いつまで話を?」

 「うん…ごめん…
それは僕がやった…」

 「へっ?!ミ、ミオさん?」

 「ミ、ミオ!お前も遂にこいつが嫌いか?!
息子にまで嫌われるとかお前ぇ…」

 「は、反抗期?ミオちゃん…」

 「いや…違うよ…
けど、もう2人の間で事はおさまったから気にしないでよ…」

 ホノンは心当たりがあるようで、少しうつむいた。

 「そっか…(きっと真実なんだ…けどおっさんも話したんだ…私もちゃんと話すべきなんだろうな)」

 俺も昨日の盗み聞きでなんと無く察し、話題を変えた。

 「よし!お前ら!冒険だが…これにて終了だ!
見ろ!」

 そう、俺は苦手な朝イチから起き、集めきった材料で、薬を作っていた!
薬を作る冒険としてはここで成功した訳だ!



醸造台(石ブロック3とマグイズロッド3)

スモーク瓶(瓶と火薬を醸造)

弱体化のスモークポーション3つ完成!
(スモーク瓶と発酵したクモの眼球を醸造)
そして、
金のリンゴ3つ。(金の延べ棒とリンゴ)



 俺は左手に金のりんごを持ちながら、右手で、みんなの前でポーションを3つ掲げた。

 「おぉー!やったぞぉ!」

 「わーい!これでゾンビも治療できるんだね!」

 「あぁ!具体的にはこっちも大事だ!」
そう言い左手の金のリンゴを見せた。

 「そうそう、俺が気になってたのそれ!なんだ?めっちゃ美味そう…ずるいぞ創夢!」

 「ポーションを付けた後、ゾンビにこれを食わさなきゃ戻らねぇ!」

 「その為にあんなに金鉱石を…
でも…こうして成功してみるとやりがいがありますわね!」

 「あぁ!とにかく!後は帰るだけ!
ただ、冒険も遠足も家に帰るまでが勝負だ。
ここからも気を抜くなよ!」

 「おう!」

 そうして、村に帰る為、まずは洞窟の出口を目指した。

 「みんな!俺に続け!」

 先頭を仕切るのは地図を描いて来たマップだった…。

 「はぁーめっちゃ嫌いだったのにあの拠点にもなんか愛着が沸いちゃったな…」

 「ではホノンは残れば良いのでは?」

 また尖った事を言うベルミーを見てミオが言う。

 「ベルミーさん、そのネックレス…どこで拾ったんですか?」

 「い、いえ、作りましたのよ…」

 「そうなのミオちゃん、この子ツンデレだからさぁ、本当は自分も愛着湧いちゃって、記念にネックレスまで作ってんの!」

 「そ、そんな…事は…違いますわ!」

 「別にいんだぞ?ベルミー!無理しなくても…素でいろよ素で…」

 先頭で進みながら言うマップに、恥ずかしく顔を赤らめながらも、少し嬉しいベルミー。

 俺は"ギリギリ歩けてる。"みたいなソイドに手を貸しながら進んでいた。
 「ばるいなぞうむ…」

 「うん。何語だ?喋れるなら歩け。置いてかれんぞ?」

 「ボンドにありがどう。」

 「ボンド?接着剤の話か?」



 それから数時間後、ようやく出口に着き、外に出るが、外は真っ暗…おまけに雪が吹雪き、ろくに外に出られない状態だった。

 「さっむぅ!なにこれ!さっきまで暑かったのに!」

 「それなぁ!てか、夜じゃね?俺ら知らぬ間に昼夜逆転してたんだ…」

 「あぁ、どうしようか…」

 しばらく悩むと、吹雪きは止み、外へは出られるようになる。
 怪物達もこの寒さの中動きはしないだろ…

 「今が逆にチャンスかもなぁ…」

 「スム!それは僕も思った。」

 「よし!帰ろう!マップ!案内頼んだ!」

 「任せろ!」
と言った矢先、マップの持っていた地図が強風に飛ばされる。

 「うわぁ!マジか!すまねぇ!」

 すると、それを見ていたみんなの中で、真っ先にソイドが地図が飛ばされた方へ走り出した。

 「良い!俺が取りに行く!」

 「待て!ソイド!諦めろ!
お前怪我人なんだぞ?!」

 「父さん?!」

 仕方なく、俺たちはソイドの走る方向を追いかけて行った。

 「あいつ…あれもう怪我治ってんだろ…」

 「俺の話は聞けって忠告したのになぁ…」

 その間に、少しずつ明るくなり、夜が明けて来るのが分かった。

 「お父さん!もう良いんだ!僕らきっと自力で帰れるよ!」

 すると、少し先、ソイドは地図を捕まえ、こっちを見ていた。

 「おい!何してんだ?取ってくれたんならもう帰るぞ?」

 「待て!なんかおかしい…」
ソイドの立っている先、少し地面が無いように見えた俺は、もう少しソイドに近付いてみた…
そこはやっぱり渓谷、崖になっていた。
俺はそれを注意しようとソイドの元に走る。
しかしソイドはその途中で俺を止めた。

 「待て創夢!そこで止まってくれ!頼む!動くな!」

 「おい…何する気だ?なんでだ?教えろ…」

 俺の後を追ってみんなも俺と同じ位置まで走って来た。

 「お前ら!今までありがとう!俺はもうダメみたいなんだ…」

 「は?何がだよおっさん!早く地図返せよ!」

 「治療なら順調なはずですわ!実際こんなところまで走って来れる程には治って…」

 「あぁ、だけどそう言う問題じゃ無い…」

 「逃げるなよおっさん!私も逃げずに過去を話すからさ!」

 「そうだ!確かにお父さんはひどいけど…逃げちゃ…」

 その時、マップが立っていた場所の下、雪からゾンビが出て来た。
 「ヴゥー!」

 「うわ!なんだこいつ!やべぇ!
ホノン!ベルミー!下がれ!」

 そしてまた吹雪きが再開した。
ゾンビは活動が鈍くなって行ったがマップは自分より後ろにいるベルミーとホノンを連れて少し下がった。
そして大声で吹雪きの中叫ぶ

 「おい!ミオ!創夢!
そのおっさん頼んだぞ!こっちは任せろ!」

 「おう!分かった!」

 返事はマップに聞こえていなかった。
 「うぉー、あいつら、見えなくなっちまったし、なんも聞こえねぇ…」

 一方、俺はソイドを説得していた。

 「おい、ソイド!俺らも危険だ!早く…こっちに!」

「俺…死にたくてたまらないんだ!
なぜか分からん…多分罪悪感に負けたんだろうな…」

 「なんだよそれ!父さん!
一方的に逃げて言い訳が…」

「だから違うんだ!俺気付いたんだよこの傷付けられた時に…
今、俺の体はクリープみたいなもんなんだって…」

 「はぁ?何言ってんだよ…」

 ミオと同意見だ…こいつ本当に何言ってやがる?
全部分からん…
今から…ここに飛び降りて死ぬ気なのか?
なぜだ…過去に関係が?けどこの前は自分の命に関わる。と命の事を…

 すると、ソイドは焦り気味に言葉を続けた。

 「あぁ…ダメだ、もう時間がない!
じゃあなお前ら!楽しかったぞ!
地図なら、無くても行けるだろ?」
そう言い地図を離すと、地図は吹雪きに乗り渓谷に吸い込まれて行った。

 「お前ら、俺はなるべく苦しむから安心しな!
ミオ!魔女には気をつけな!」

最後に一言言うと、ゆっくりと後ろ歩きで渓谷に落ちて行った。

 「おい!ソイド!」
 「父さん!」

 ドゴォーン!ゴゴゴゴゴ!
ソイドが落ちてしばらくして、下から大きな爆発音と、地響きがした。

 その瞬間、創夢らのいた地面が崩れ始め、それに巻き込まれた創夢達は渓谷に繋がる洞窟に落ちてしまっていた。
 丁度朝が来て、渓谷から洞窟にまで流れて来る微かな光は朝の匂いがした。



▫︎第47話用語解説



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