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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」
第46世 「生還」
しおりを挟むミオがいち早く気付き、指を指した怪物がまた攻撃を仕掛けて来た。そいつは口から黒い爆弾を吐き飛ばし、要塞の橋のようになっている通路ごと爆発させる。その下はマグマだが、爆発に巻き込まれた創夢らは全員マグマの海に投げ出されてしまった。
「みんなぁ!う、うわぁ!」
いち早く気付いていたミオも少し遅れて爆風に飛ばされる。
空中で動く事もできず、もう死ぬ他に運命が無い。創夢はそう思った時、マグマに落ちるギリギリで、弾力のある何かにのしかかり、生還する。
え?なんだこれ?きのこ?いや…生物だ!
その創夢の上にホノンも落ちてきて、2人はマグマの上をギリギリで"移動"していた。
その2人を重そうな顔をして運ぶのは、カポライダーという生物だった。
そして別のカポライダーにマップも救われ、生還。
一方、ベルミーは"浮遊"の薬を飲み、浮いていた。
そして最初に敵に気付き攻撃を対策した事で、飛ばされるのが遅れたミオがマグマに落ちる時だった。
「ベルミー!その薬の矢を僕に撃ってくれ!」
落ちながらそう言うミオは手のひらをベルミーに向けていた。
「分かりましたわ!」
そしてすぐにベルミーは矢を打つ。ミオに撃った矢はミオの手のひらを貫通し、マグマギリギリのところで"浮遊"によりミオも生還する。
「うおぉー!おおー。浮いた!けど、あ、熱ゥー。」
「おい大丈夫か!」
そう言いながら、カポライダーに乗ったマップがマグマギリギリにいるミオを掴み、一緒にゲートへ向かった。
「マップさん!ありがとう!」
創夢とホノンの2人も、体勢を立て直すと、カポライダーを刺激し、ゲートの方向へ歩かせた。
ベルミーは空中で爆弾を吐く怪物を挑発し、皆に意識を向けない様にしながら、矢を放ち戦っていた。
「ありがとうベルミー!もう陸に着いた!お前も早くゲート目指すぞ!」
「分かりましたわ!」
創夢のベルミーを呼ぶ声を聞き、最後の一撃になる矢を放った後、ゲートへ向かった。
部屋を目指し崖を登る中、創夢は状況を確認するため、常に周りを見渡していた。
その中、ふと遠くにいる何かと目が合ったように感じ、背筋がゾクっとした。
そこには濃い緑色の空間があり、その空間にうっすらと立つ、縦に長い影が見えた。
なんだあの場所…あの影…スレンダー…
「おい創夢!なにぼーっとしてる!」
そう言い創夢の手を引くマップのおかげで、崖を進んだ。
皆が部屋の前まで戻り、ソイドを掘り起こすと、ゲートの膜にまた立つ。
ヴゥウォーン…
「ヌィガァー!ズィナァー!」
入る時と同じような特有の不気味な音と、叫び声のような音を聞きながらが、ゲートを渡った。
そうして洞窟に戻って来た皆んなはすぐゲートを壊し、拠点へ上がった。
「はぁー…ゲート、通るたびに毎回こんな不気味な音が…?」(ホノン)
言われてみればゲートの音は不気味だ。だがさっき同時に聞いた変な声は前からあった設定なのか?
「ソイドのおっさん…重症か…
相手は剣を持ってたんだからちょっとは警戒しろよな…」
マップの言う通りだ。普通金の剣を持ったキラキラな奴を味方だとは思わんだろう。それに今まではあれほど戦うな、外に出るなとルール付けて来たあのソイドだ…。
こんな不注意な奴だったか?
マップとホノンは震えながら拠点を強化し、各自の部屋だけでなく、皆が共有で居られる場所も作っていた。
「父さん。調子は?大丈夫?」
「あぁ、ベルミーのおかげでもう意識の方は普通に保てるようになった…」
「良かったですわ。薬の効果的には怪我の進行を遅らせるというものなので、あなたの回復力は変わらず働きます。」
「じゃあこのまま薬を使っていればソイドは治るのか?」
「えぇ!そういうことですわ!創夢さん。」
「はぁ!」
同時にため息をこぼす創夢とミオはようやく地面に腰を落とした…。
ようやく一件落着って感じだ。
ミオは手のひらの治療をするが、強い痛みを感じていた。
「(父さんも僕を守る時、こんなに痛かったんだろうな…まぁ今の方が痛そうだけど…。)」
「矢で撃ってしまって…ごめんなさいミオさん…」
「いやいや、うってくれてないと僕は死んでたよ…ありがとうベルミー」
「おっさん…生きてて良かった。俺あの時見てたのに、動けなかった…ごめん。」(マップ)
拠点を少し拡大したマップとホノンも寝たきりのソイドを見て心配する。
「私もずっとビビってて…」(ホノン)
「良いんだ…気にするな。
俺にそんな気を使うな。死んでも誰も苦しまない、最低な男なんだから。」(ソイド)
「えぇ?どうした?死ぬ前のネガティヴか?
お前がいないと蘇ったカーターはどうなる?」(マップ)
「なんとも思わないさ…俺のして来た事を考えれば…」(ソイド)
そのマップとソイドの会話を自分の手のひらに空いた穴を見ながら聞いていたミオ。
「ねぇ…父さんは何をして来たの?
ベルミーだってちゃんと過去を話したんだし…
もうみんな過去を話してもいんじゃ無い?
その方がもっと連携だってできると思う…」
「ミオの言う通りだ。お互い長くいるのに相手の事をよく知らないのは大問題だぞ…
連携なんて取れるかよ…」
そうミオの意見を押した創夢。
「分かった…ミオ、お前には後で全部話す…
みんなには全ては話せないが…軽く話そう…」
「分かった…」
そう言いソイドは過去を話し始めた。
「俺はデスト村に生まれ、真面目な親に育てられた。それ故に子供時代は真面目に生き、優秀な大人に育った。村の中でも、"政"と呼ばれる村の7人の長達の中の1人になり、仕事をしていた。
昔から俺の村では"生贄"というルールがあった。年に一度男女交互にランダムで決められた村の人を生贄として殺すんだ。
ランダムで決めると言っても、選ぶのは"政"の誰かだった。」
「それは心の痛む仕事だったのですわね?」
「いや、その頃はまだ俺が選ぶ事は殆ど無かった。
ある時、生贄の制度が変わるまでは…。
トリゾン村という少し離れた場所にある村。」
「そこって!ケバブから聞いたぞ!今の略奪者達の!」
「そうだ!奴らは村の頃から危ない奴らで、どんどん周りの村を侵略して勢力を拡大していた…
そこで俺のいたデスト村では生贄をトリゾン村へ贈るという制度に変えた。
先にトリゾン村にデスト村を認知してもらい、年に一度の生贄をトリゾン村の奴隷として贈った。」
「そんな…可哀想な…」
「だがある時の生贄から、3代ほど、生贄達がトリゾン村に行かずに、そのまま逃げていたという事が分かり、俺達は政の中から同行者を付ける事にした…
次の生贄は太った男の子だった。
そんな時に、たまたま村に迷い込んで来ていたウェポン・カーターという者が生贄を自分に代えてほしいと志願して来たんだ…」
「お母さん…」
「カーターさんが…生贄…」
「カーター…強い女だな。」
「あぁ、そしてカーターの同行者になったのが俺だった…」
「それでハァーン村に来たのですか?」
「あぁ、まぁそうだなベルミー。」
「え?そしたらお前らも村のルール破ったのか?
カーターはなんでトリゾン村に行かず?」
「ハァーン村に逃げて来たって事なの?」
「その頃のハァーン村は沢山人が居て賑やかだった。ハァーン村には、一度泊めてもらっただけで、その後、行ったんだ…トリゾン村へは…」
「じゃあなんで今はハァーン村の村人に?」
「あぁ、トリゾン…行ったんだがな。
向こうはデスト村との約束なんざ全く覚えていない、
それどころか、俺達を何かしらの実験体として捕獲しようと攻めて来た。イカれてる奴らだ。」
「マジか、でもそこから逃げれたんだな?!
良かったなぁ!」
「あぁ、俺は逃げたさ、規則通りにカーターを突き渡し、その隙にな。
デスト村へ帰った。」
「それはひどいですわね!」
「確かに!男がやる事じゃねぇな…
でも村のルールだったんだろ?
またこの堅いおっさんは真面目にそれに従ったってだけな訳だ。」
「それで…母さんはどうしたの?」
「分からない…。
俺は一度村に戻ると、デスト村は壊滅していた。
村人も全員ゾンビだった。
行く当てはハァーン村だけになり、ハァーン村に戻ったんだ…
そしたら、ハァーン村も壊滅していた。
3人の村人を残してな…
それがオマエとプロとキャパだった。
そして後1人、そこにカーターもいたんだ…」
「母さん…どうやってハァーン村に戻ったんだろう…」
「詳しい事はカーターを治してから聞こう。」
「でも…おっさんは知ってるんじゃ無いのか?
だって聞くだろそれくらい…
てか、そもそも全部は話せないってなんだ?俺達の敵はそのトリゾンってとこが元にある略奪隊なんだぞ?」
「確かに…マップの言う通りだ。村を襲ったゾンビを操ってたって言うあの男…
あいつもきっと略奪隊と関わりがあるんだろう…
知ってる事があるなら話してほしい。
この冒険の中で奴らに会う可能性だってあるんだ…」
「いや…これは話せない…俺の命に関わる。」
「誰かに止められてるのか?」
「いや…死ぬ覚悟ならできてる…だが、みんなに話すのはダメなんだ…ミオ…
いや、だが、そもそも、
その略奪隊の事について知っている事は本当にこれだけだ…
重要な事は何も無い…」
「本当か?」
「本当だ!知っているなら、村が攻撃された時に話すだろう。」
「そうか…分かった…信じようマップ。
んで、ならミオと話すんだろ? ほら、もうみんな戻るぞ…」
「あぁ、ありがとう創夢…
それとみんなも…」
そしてみんなは拠点の各部屋に戻り、ソイドはミオだけに本当の過去を話していた…。
▫︎第46話用語解説
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