異世界製作 〜転生しようと思ったら異世界作る側だった〜

寝占 羊

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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」

第42世 「アロウ・ベルミー」

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 「よし!ソイドも来て、全員揃ったんなら暗いし早く帰るぞ!」
その俺の掛け声と共に、沢山の怪物の音がし始める。
「ヴゥー!」 「カラカラカラ」 「シュルシュル…」

 それを聞いた俺たちは急いで森を走った。
 「やばいやばい急げ!」

 「マップ!私より先に行かないで!」

 「おいミオ!お前何食べてるんだ?!」

 「父さん…ごれは…お腹が…」

 「お前ら!話してる場合か!早く走れ!」

 「創夢さん!危ないですわ!
ノックバックアロー!」

 1番後ろで走るベルミーは矢を放ちながら皆を援護していた。そのおかげもあり、全員無事森を抜ける。
しかし、存在を認知し、追ってくる怪物達が森を抜けても大量に後ろを着いてきていた。

 「森の中じゃ無ければこっちが優勢だ!」
そう言い戦おうとするマップに続いて、皆武器を構えた。

 「お前ら!焦らず!訓練を思い出せ!」
そう言うと、俺も武器を構え、敵が近付くのを待った。
ベルミーは弓を使い、先にどんどん敵を狩り、マップも慣れない弓を使っていた。
その他は目の前の敵の相手を、そして、誰よりも怪物を討伐していくのはミオだった。

 「おいおい、創夢とミオ!あいつらやべぇだろ!
早すぎるし…
俺間違えて矢を飛ばしそうだ…」

 「マップ!それは弓使いとしていけませんわ!なぜ慣れない弓を使うのです?」

 「なんか、しっくり来たんだよ、訓練の時…」

 そんな会話をしている内に、ミオと俺の息のあった攻撃で、追って来る最後の怪物を討伐した。

 「ミオちゃん…小さいから強いと思ってたけど、あの小回り、大人化した今でも変わってない…」

 驚くホノンにミオと走り戻ってきた俺は言う。
 「驚いている場合か、怪物は無限に湧いてくる!
今のうちに早く帰るぞ!」

 「そうだね…」
そうしてなんとか村に帰ってきて、1回目の冒険を終わらせた。



 疲れているのに、帰ってもなぜか寝付けないみんなは、ケバブの店でご飯を食べながら話をしていた。

 「ほぉ!これまた派手に汚れてきおったのぉ!」
そんな事を笑顔で言うケバブを無視して、俺はミオに約束していた職業を与えた。

 「ミオ!今回の冒険、お前の力を何度も借りた…
ミオにはこの職業が似合うと思うんだ。
だからこれにする!お前の職業、"英雄"ミオだ!」

 「英雄!!(アンも言ってた…だけど具体的には英雄ってなんなんだろう…)」
ミオはいまいち分からない顔をしていた

 「まぁきっといつか分かる」

 「そうか!ありがとうスム!気に入った!」

 そうして何よりも感謝したいベルミーにも一言言っておいた。

 「それから、今回1番動いてくれたベルミー!
本当に感謝する。ありがとな…」

 「と、当然ですわ?」

 「てか、お前さ、あの魔法使いらと同じ、
いやそれ以上の魔法使ってたけど、何者な訳?
薬ってそんなになんでもありなのか?」

 戸惑うベルミーに、さらに戸惑う質問をするマップだったが、律儀にもベルミーは答え始めた。

 「いえ、私は少し特殊なのよ…」

 「なんだ、お前も創夢のような力を使えるのか?」

 「違うわ!そこを目指しているのよ!」

 ソイドにも言われ、ベルミーは自分の過去を話し始めた。

 「元々私は、ここなんかより規模の大きいルグナ村出身。」

 「出たルグナ!どうりでお嬢様なわけだ!」

 「うるさいわ、ホノン。
だけど、確かにルグナ村は資源が多く、誰も困らず豊かに繁栄した。」

なるほど…そこに住む村人達は、現世で言うところの貴族のようなものなんだなぁ…

「私、アロウ・ベルミーもまた、位の高い存在ではあったの。
子村人時代から礼儀作法をしっかりと教えられ、特に弓道には力を入れて、試験でも高成績を納め、村で1番の弓の使い手となったわ!
大人達からは高い評価を、
そして、同じ子供からは嫉妬とからかいを受け育った。
それらは子供の私からすれば"常に完璧でいなければいけない"という大きいプレッシャーでしたの。」

 「そうか…良い村でも、色々あんだなぁ。」

「もちろん、自分の立場について嫌な立場だと思う事はありません。
むしろ、自慢であるとも感じていましたわ!
ですが、一方では心から自由を望んでいた。
今のように、自由に生きられたらと。」

 「なるほどのぉ、お主がこの村に滞在している理由が少し分かったわい…」

「だからお城の中で生きるより、お外が好きだったのです。
あの日も外の草原、木のふもとに寝転がり、風を感じていました。
その気持ち良さに、眠ってしまった私は、大きな音と、目を瞑っていても分かる強い光を感じて目を覚ました。
すると私はビチャビチャで、周りには大雨が、そして時間は門限ギリギリ。

私は焦って立ち上がると、
その時、木の裏側、カランッと音がして、不思議に思った私は、そこに行くと、見た事の無い色をした液体が、ほんの少量入った瓶がありました。

それを見つけた瞬間、まだ小さかった私は何も考えずそれを拾い、飲み干してしまったのです。」

 「絶対ダメな薬だよね…」

「その瞬間意識を失い、起きた頃にはお城のベッドにいました。
どうやら急な雷雨が来て、雷が村に落ちた事を知った母が私を探し、倒れているのを見つけたそうです。」

 「やはり子は1人にする訳には行かんもんだな…」

 「お父さん?僕はもう大人だからね?」

「それからというもの、ごく稀に、瓶やバケツに汲んだ水の色や性質が変わる事がありました。
それに…その変わった水達は、それぞれ力が存在する事を、長く生活する中で理解して行ったのです。そう、それが薬であると気付いた頃から、自分の部屋へ隠し置いていました。」

 「薬を大量に持ってるなんて村にバレると、大事になるもんな。」

「ええ、ですが薬は増え続け、それに悩んでいた時、
矢に薬を付けてみました。
すると、矢はパワーアップし、液体は少量だけど少なくなった。
それに、一度付けた矢から薬がビタビタに滴り落ちる事も無く、見た目上もそんなに変化は無かった。

これは利用できる!隠せる!そう思い、それからは、集めた液体でポーション調合、及び矢の強化をするようになりました。」

「液体が増えすぎても隠し通せるように工夫していたんだな…。」

「しかし、ある日、私への嫉妬に狂った1人の村人により、この趣味が明かされてしまったのです。

"薬を扱い、矢を強化している"

それを聞いた村人達は色んな噂を立て始めました。
弓道でも、あらゆるインチキをしていた。
誰かの殺人を計画していた。
色んな動物を殺害し薬を製作していた。だとか。

そうして、村の中で家以外に私の居場所は無くなりました。
両親からも初めて怒られ、
私は今までのストレスやプレッシャーを全て爆発させるように、この騒動の勢いに乗って、村を1人で出て行きましたわ。」

 「そ、それでここに?じゃあベルミーはそれがあってから親とは全然話せて無いって事か?」

「そう。
私は、私の知らない魔法の世界、
薬なんかで誤魔化さない"本当の魔法"を探して旅を始めたの。
溜めてきた液体は全て持ち出していて。
村を出て半日ほど歩いたところで、その内のまだ効果を試した事の無い液体を、死んでも良いと思って試しに飲んでみたの。
すると、気がつくと場所がワープしていて、
瞬きの間に、ハァーン村、ここの前まで飛んできてしまっていた。
それが私がここに来た理由よ。」

 みんなベルミーの長い過去話を聞いて、驚きと同時に、眠気が来ていた。

 「そんな壮絶な話しが…でも、なんかおかげで眠くなってきたかも…。」

 「あぁ、マップ。もうこの辺で解散にしようか。
ベルミー!過去を話してくれてありがとう!
ここから2日は休みを入れるからみんなゆっくり休め!」

 「こちらこそですわ!聞いていただいて!
それから創夢!私がこんな話をしたのも、私が探している"本当の魔法"をあなたに見つけたからですわ!その力…これからの冒険で必ずものにしますから!」

 そう言い残し、ベルミーもみんなも帰って行った。
 


▫︎第42話用語解説



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