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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」
第41世 「魔女と魔男」
しおりを挟む「ベルミー!何秒だ!」
その一見意味の分からない俺の質問に、敵がポーション使いである事を理解しているベルミーは、
すぐポーションの効果時間の話だと察して教えてくれた。
「通常なら約120秒ですわ!」
「長いなぁ…」
「ええ。それに追加分を持っているなら…」
「くそ!相手は盗みを働くくらいだ!
追加は無い!
いや、そうとも言い切れないが…
そのくらい貧乏である事を祈ろう…」
出せる手が無く、もたもたしている内に、気配も匂いも、徐々に薄れていく。
「ですわね…やはり待ってはられない!
私に任せて着いてきてください!」
そう言うとベルミーは突然走り出す。
みんなでその走り出したベルミーの後を追う。すると、また気配と匂いは強くなって行った。
するとすぐ、ベルミーが敵の事を言った。
「敵は見える数だと2人!ミオさん!1人右!あちらの奥に逃げるつもりですわ!」
「分かった!」
返事をすると、ミオはベルミーの指差した方向に、自分の感じる気配と勘を頼りに捕まえに行く。
2度失敗するも、目を瞑り、感覚を研ぎ澄ませ、透明の何かを捕まえる事に成功。
「ウォーン…」※くっ、なんて力の強いガキだ…
「ここだ!1人捕まえた!」
「本当だ!見ろマップ!」
「あぁ、分かった分かったソイド、また自慢のミオの手柄だろう?
ナイスだぞーミオー!」
「ミオ?違うこっちだこっち!」
「なんだ?おっさん!楽しそうに」
「ベルミーの追ってる方向!木の上だ、枝や草が揺れてる…
何かあるんだ…」
ベルミーは走りながら先が黒く光る矢を構えると、木の上に放った。
「トゥルーアロー!」
その瞬間、紫色の服を着て、黒く長い帽子を被る、鼻の長い老婆が、ベルミーの矢に足を打たれて落ちて来た。見るからに魔女だ。
「なぜ分かったんじゃ…」※ウォーン
その魔女の話す言葉は村人の言葉で、その時の俺には理解できなかったが、俺以外の全員がこう聞こえていた。
ベルミーは倒れ込む魔女の前に立ち、次の矢を構えた。
「それは打たれた人の本当の姿を写す薬。もう透明化はできないですわね!」
「そ、そんな薬どこで…」※ウォ…ウォーン
「私が調合しましたわ!それから…
トゥルーアイ…」
そう言い、後ろを振り返り、矢の狙いを変えたベルミー…
ベルミーの目も同じく黒い光を発していた。
この目で彼らを見極めたのだろう…。
その目で後ろ側少し先、ミオが押さえ込む魔女の仲間に対しても矢を放った。
「いっ、いってぇ!」※ウォーン!
その矢はミオがキャッチし、魔女の腕に突き刺せられた。
「は!見えた!
お前達!どうしてこんな事…」
その時、ソイドがミオの元へ走り始めた。
そしてそれを止めるマップ。
「おい待て!さっきからなんか変だぞソイド!お前。まだ敵は2人だけとは…」
マップの叫びを聞いていたベルミーは驚いた。
「はっ!」
そしてすぐミオに対して叫んだ。
「違う!ミオくん!」
そんな事にも気が付かず、魔女の腕を紐で縛り上げたミオは立ちあがろうとしていた。
「よし、話せる人ならちゃんと…」
「ミオくん!後ろ!」
「えっ?!」
ベルミーのその声がミオに届き、振り返ろうとする頃にはすでに後ろからの攻撃が始まっていた。
そこにはソイドの姿と別のおじさんが混じりあったような見た目の人が立っていた。
棒を本気でミオに振りかざす。その棒にも何か仕掛けがあるのか、見えないほど早く、そして強い衝撃波を出しながらミオを殴った。
ドゴォーーン!
「くっそ…効果がもう…」※ウォーン
「ミオくん!」
「あのおっさん!やっぱりソイドじゃなかった!
でも、な、何が起きたんだ?おれ、何も見えなかったぞ?」
「マップ、お前だけじゃ無いよ…私も見えなかった…」
「そ、うだね。お父さんにしてはさ…
力が弱いよ…
その薬達…いつ使ったのさ?」
「なに?確かにこの威力じゃ…死ぬとまでは思わなんだが、気絶さえしないだと?!」※ ウ!ウォヌ…ウォーン、、
ミオへのダメージは確かにあったものの、気絶していたのはミオの下敷きになった、仲間の魔女だった。そのおかげか、衝撃を全て受けず、まだ動けるミオは少しふらつきながらも立ち上がる。
一方、ミオを心配していたベルミーも、その間に片足で立ち上がった魔女に背後を狙われていた。
それに気がついた俺は、すぐに彼女のサポートに入る。
「ベルミー!後ろだ!」
「はっ!」
魔女は緑色の液体が入った瓶をベルミーにかけようとしていた。
俺はその手を振り払い、右手に持っていた瓶はそのまま創夢の左側少し先に飛んでいき割れた。
割れた場所では周りの草が枯れていた。
「あーぁ、はぁ…諦め諦め…」※ ウォーン
「ベルミー!ミオはミオに任せとけ!」
その声にはっとするベルミーと協力して、魔女を紐で縛った。
そして縛り終えてすぐミオの方を見ると、駆け付けたマップとホノンと3人で、ソイドに変身していた男の魔女も捕えられていた。
「おい、お前ら…しょうもないもん奪う為だけに…どんだけ手かけてんの?」
縛り、集めた3人の魔女の前でマップがそう言うと、1番右に座るソイドに変身していた男の魔女が言った。
「ほんとは、全て奪うはずだった!
命もなぁ!気付く方が変なんだよ…だが…」※ウォーン!
すると真ん中の魔女が言う。
「おい!変な事を喋るで無い!我々はただ、女神ソフィアの為に…」※ウォーンア!
その時、ベルミーがマップをのけて、さっきとは反対に先が白く光る矢を構えて言った。
「どいて!私がやるわ?自白剤となりえる薬…」
その矢を魔女に撃とうとした時、
「では、我々は自爆剤じゃなぁ…」※ハァーン
カリンッ!
そう言うと魔女の口の中で瓶の割れたような音がした。
「まさか!」
ベルミーはすぐに矢を撃ち込む。
「いいかい?我々魔法を扱う者はねぇ、こうやって己を守るんじゃよ…」※ウォーン…
ドゴォーーン!
魔女がそう言った瞬間、3人の魔女は同時に内側から大爆発し、消え去った。
幸い怪我人は出ず、彼らが盗んだ物が、彼らの爆発した場所にドロップしていた。それらを取り返し、ソイドの行方を探した。
「結局何がしたかったんだろうなぁ…」
「マップ…あいつら何を話してたんだ?」
「そうか、創夢、わかんねんだったな…」
俺は魔女達が話していた事をマップに聞きながら、みんなでソイドを探し歩いた。
夕方も来て、暗くなって来たし、せめてこの森は抜けて、村に近い森へ行こうと言う話になり、皆で向かった。
今の森を抜け、ソイドが最初に木こりをしていた森に着くと、森の中、ソイドが切ったのであろう木が無い空間を見つけ、そこに一度皆で腰を下ろした。
「ひゃー、疲れたぁー!てかさ、元気そうでスルーしてたけど、血だらけなってたじゃん?
ミオちゃんは大丈夫なの?」
ホノンが聞く。
「うん!僕回復が早いみたいなんだ!」
グゥー
その時、ミオのお腹が鳴る
「ま、まぁ、お腹は空いたけどね…」
「あ!私肉取り返したし!食べる?」
ホノンとミオのやりとりを見ながらマップが呟く。
「お前もあのおっさんに似て丈夫なんだなぁ。」
マップがそう言った瞬間、
「やっと帰って来たと思ったら、最初に聞くのがお前のいやみだとは…」
そう言い森の中からソイドが出て来た。
「おぉ!生きてたのか!いやてかお前本物?」
「なんだよその質問は!」
ソイドの話によれば、迷子になり、急な眠気に耐えられず寝た後、何事も無く起きて、この森に帰って来ていたらしい。
「眠気の薬と変身の薬…
あれは、普通の魔女なのかしら…」
ソイドの話を聞きながら小さい声で考え事をするベルミーだった。
▫︎第41話用語解説
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