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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」
第37世 「ソイドvsマップ」
しおりを挟む一方、マップとソイドの戦いも続いていた。
「おりゃ!」
カコンッ
「うっ!
(また上から大振り!そして次は左が来て…右から体を前に…)」
「おりゃあ!」
カコッ カッ ガガガ
「やっぱりだ!(分かっているのに対処できない…)」
「やっぱり?分かってるならなぜお前が負ける?」
カコンッ スッ
「ソイド!8勝!」
武器鍛冶であり、武器の事を知り尽くすソイドはやはり強く、8対0でマップが負けていた。
「だよなぁ…時間くうもんで…
だが、こっからはどうだろうなぁ…」
マップは汗を流してそう言うと、少し笑った。
「なんでお前さんがスカッとしてる?
後2勝で決まるんだぞ?焦らなくて良いのか?」
「さぁーなぁー!」
マップは大きく斬りかかる。
カコンッ
「おぉ、お前さんから来るとは、
何か策があるのかぁ?!」
ソイドはすぐ反撃に乗る。
ガコンッ カコッ カッ カコンッ
「(のった!このおっさんは基本自分から攻撃を出して相手には出させない戦闘スタイルだ。
だから、守りが浅く、多少の自分への攻撃は気が付かない。
そしてこの8試合で行動は大体見抜けるようになった。)
隙は、ここだ!」
シュッ!
「(やっぱり、気が付いてない…)うっ、お、おい!」
マップは隙を狙ってソイドの体を軽く斬りつける事に成功するが、ソイドはそれに気が付かず、攻撃を止めない。
ガコンッ カコッ カコッ
「あぁ?どうした。何をした?
ただやる気が抜けたか?力が入ってないぞ!
ほら、また俺が勝つぞ?」
ストンッ
ソイドはマップの体に木剣で触れた。そして勝ちを誇った。
「よし!後一勝だ!」
「マップ!一勝!」
先にマップの攻撃が入っていた事を、創夢は見ていた。
「は?おい創夢!勝ったのは俺だぞ?」
「いいや、先にマップに斬られてた。服、左胸辺りちょっと裂けてんだろ」
「ちぇ、本当だ…それくらいのでもありなのか…
まぁ良い、どちらにせよ後2勝だ!
行くぞ!」
「はぁ、獣と戦ってるみてぇだ…」
カコンッ!
「集中しろ!今度の俺は小さな隙も見せないぞ?!」
カコンッ!
「(また最初から一方的な攻撃…だがこのおっさんの動きは全部読めている。隙が無くても、力の差がどれだけあっても、対処できれば問題はない…
体力には自信があるからな。)
それしか脳が無いのかデカブツ。」
「押されてるのはお前だぞマップ。煽ってる暇があるのか?」
ガコンッ! カッ カッ カッ カコッ
そして、マップの理想通り、ソイドが体力を切らして来たところでマップが反撃に出て、マップは2勝目を勝ち取った。
「マップ!2勝!」
「はぁはぁ、くっ…」
そして勝負は続けられ、マップは6勝。
8対6まで盛り返した。
そしてこの次の勝負、長引き、もうベルミーホノン戦は終了していた。
カコンッ カコンッ カッ カッ カコッ
「いつまでやってんのあの2人…」
「あぁ、ホノンか。さぁ、もう2人ともボロボロだよな。
お前らも、まだ訓練終わりじゃ無いからな、休んどけよー。」
「うぅーい」
そんな会話を小耳に挟みながら試合を続けた。
「もう…体が…」
カッ
そう言いながらソイドはさらに弱く、遅く、攻撃は簡単になっていった。
「あぁ…俺もだ…」
マップも疲労を感じながらも、ソイド程では無いらしく、クタクタのソイドに一撃入れて試合を終わらせた。
「あれ?創夢!」
試合が長すぎてボーッと一点を見つめた創夢を呼ぶマップ。
「あ?あ!あぁ、そうか、
えー、マップ!7勝!」
「はぁ、はぁ。
創夢!これじゃキリが無ぇ。
もう先に自分の残りの勝利数斬りつけた方が勝ちというのはダメか?」
「あぁ、日が暮れるのも早いしなぁ、
良いぞ、そうしよう!
つまり、マップは後3回、ソイドは後2回斬りつければ勝ちだ!」
「分かった!もう息は整ったかおっさん?」
「あぁ、最後の勝負だ!」
そしてまた試合をするが、やはり先程とまではいかないが長引く。
「はぁはぁ、」
ガコンッ カコッ
「おい、おっさん、さっきと変わらねぇじゃねぇか。むしろさっきより…」
カッ カッ カコッ
「あぁ、俺も実際歳は取ってる…
体力勝負ならこうもなる。
はぁはぁ…」
マップはまたクタクタになったソイドに攻撃を入れようとした時。
「体力勝負ならな!」
カコッ! バシッ バシッ
そう言いソイドはマップの攻撃を跳ね除け、マップの体を2箇所斬りつけた。
「ソイド!10勝!
こっちの勝ちはソイドで!」
「は?おい!おっさん!
そんなのありかよ!」
「何がだ?もう俺が動けないものだと油断したのは自分だろう?」
試合を見ていた創夢がまた2人の課題を話し始めた。
「そうだな、マップは全体的に少しの気の緩みが感じられる。考える事が多いのも分かるし、相手の動きを読むのも大切だし、マップは特にその力がある!
戦闘力が劣ろうが、それを自分で理解して違う得意分野で補う。すごく良い事。だけど、それはあくまで今回みたいにチャンスが多い時しか発揮されないもの。だから、もっと短時間で相手を見極める、そういう力を高める事が課題。
体力は良かったなぁ!誰よりもあったんじゃ無いか?」
「おう、そうかよ、ありがとう…」
「体力…」
「そうだな、逆にソイドは体力不足か…
まぁ年齢には誰も敵わないからな…
ソイドは、武器職人だから、武器を知り尽くしているのは良いが、経験が浅いから、単調な動きが多く、相手に読まれやすい。
それから、守りがなさすぎて、自分が斬られる事を考えていないだろ?」
「あぁ、防具なら俺のカーターが作ってくれるし、それに軽い怪我などへっちゃらさ!」
「頑丈なのは良い事だが、じゃあ仮にマップの持っていた剣に毒があったら、どうしてた?」
「は!それは…
なるほど強さは、力や傷の大きさだけでは決まらんという事か…」
「そう。だから、もう少し守りも鍛えて行こう。」
「攻撃のバリエーションと、守り、そして体力か…」
自分の課題をまとめるソイドを見て創夢は考えていた。
「(最後に人の同情をかってマップを斬りつけるあの狡猾さ…怪物相手なら良い戦法…ゆえに何も言えないが。不道徳ではあるなぁ。)」
その心の声を聞いてルプが噴水に腰掛けながら言う。
「まぁ、そこは創夢様も人の事言えないからなぁ。
てか、まず創夢様は人に言えるほど強いのか?」
「おい!そんな事ないだろ!」
ルプはみんなに見えていないし、声も聞こえていないので、1人で話す創夢を見てマップが不思議そうにしていた。
「あ?創夢、誰と話してんだ?」
「あぁ、いや、なんでも、てか、お前らもまだ終わってないから、休んどけよー。」
「うぉーすー。」
でも考えてみれば、ルプが言う通りだ、アドバイスは的確だと思うが、俺は自分にそんな完璧な戦い方ができるかと言われればわからない…
これまで戦いを見て来た知識だけで話している…。
「俺も…頑張らなきゃなぁ…」
俺は誰にも聞こえぬよう小さい声で呟くと、みんなのご飯をもらいにケバブの店に向かった。
丁度暗くなって来た頃だった。
▫︎第37話用語解説
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