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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」
第36世 「訓練開始ベルミーvsホノン」
しおりを挟む「レディー!ファイト!」
創夢の合図で訓練は開始された。
始まった瞬間、ベルミーは木剣に何か液体をかけていた。それを見て、警戒しながらもホノンは木剣を握りしめて、立ち向かう。
「ポーションか?!ベルミー!そんなズルしても私が勝つ!」
「フンッ!バカは一方通行ですものねぇ!」
そう言い振りかざした剣が重なり合った瞬間、ホノンが遠くへ飛んでいき、集会で座っていた噴水まわりの段差に背中を打つ。
オホッ!
「ノック…バック…」
「あら?私の一勝かしら?」
「ちぇ!ありかよ!だけど、あんたのそれ、前に見たから!」
そう言うとホノンは立ち上がり、またベルミーへ向かって走った。
「あら、また同じ事を!」
またお互い剣を振りかざした。重なり合う直前で、ホノンはすぐ体勢を変え、ベルミーの横脇腹を木剣で斬りつける。
キャッ!
ドテッ
尻餅つくベルミーを見て創夢は言う。
「ホノン!一勝!」
「ちぇ!たまたまですわ!」
そうして立ち上がり、すぐ2戦目に入る。
「あんたがそう来るなら!」
カコッカコッカコッ!
そう言い、一方的にホノンを斬りつけ始めるベルミー。
「うっ!はっ!
で…も…全部当たって無いけど?」
「何が?忘れたの?ノックバックが付いてる事。」
「はっ!」
「なんで発動しないか分かる?これは普通のノックバックとは違うわ。こうやって連続して使う間はすぐ発動しないでその力を溜めておけるの…」
そのまま続けてベルミーはホノンに斬りかかり、それを全て剣で受けるホノン。
カコッカコッカチッカコッ
「うぅ!」
「そして!私が攻撃をやめた時!」
そう言うとベルミーは強めに剣を振りかざし、体勢を崩したホノンは地面に倒れた。
カコンッ!
「溜め込んだノックバックは一気に解放される!」
「えっ!?」
その瞬間、倒れ込んだホノンをさらに地面に叩きつけるように大きな衝撃がホノンを襲った。
1番衝撃を受けて溜め込んでいたホノンの木剣は壊れ、ホノンが寝ている地面は少しひび割れが起きた。
家から見ていたケバブも驚く。
「なんて威力じゃわい…」
ベルミーは寝転ぶホノンに軽く木剣を当てて言った。
「はい、今度は私の勝ち。」
「ベルミー!一勝!」
「くそ!」
ノックバック自体に攻撃性が無い事で、怪我はしなかったホノンだが、悔しそうに新しい木剣を取りに行った。
そして、ホノンは新しい木剣を見ながら、さっきベルミーが自分に木剣を当てた時、彼女の剣の上の方にひびが入っていた事に気づいた。
(ノックバックの衝撃、その一部は、与えられた剣自身にも負担をかけていたんじゃ無いか?何せ殺傷力の低い木剣だ…あんな威力…)
ホノンはそんな事を考えながら次に挑む。
「当たり前の顔でズルして、それで勝って気持ちが良いか?ベルミー!
いや!むしろ私に一勝されてるのが恥ずかしく無いのか?」
「えぇ!だって、さっきノックバックが発動する前からあなたは私の剣技に押されていたわよね?
丁度効果も切れる頃ですし、ではここからが本当の勝負ですわ」
そうして3戦目を始めた。
強気な事を言いつつ、ノックバック効果の切れたベルミーはあっさりホノンにやられて、3戦目が終わり、また新たなポーションを使ってしまうベルミーだった。
そんな接戦が続き、お互い9勝に。次の勝者で10勝が決まる。
「あんた…そんなに沢山ポーション使っといて、私と接戦って…
で?他にまだなにかポーション隠してんだろ?」
「うるさいわね!もうとっくの前に全て使い切ってるって言ったでしょ?
でも!効果はまだあるわ!」
そう言い、先に斬りつけたのはベルミーだった。
ホノンが避けた空間には、氷の霜や明るい炎が見える。
はぁ、ベルミーは殺す気なのか?氷属性と火の属性…一体どんだけポーション使ってんだよ…
まぁ、使ったらダメっていうルールは言わなかったし、薬を使うのはあいつの基本の戦闘スタイルなんだろうから…何も言え無い。
ホノンは攻撃を避けながら思考する。
「(この最後の試合が始まって少し会話で時間を取ったおかげで、属性系の効果はもうすぐ消える。
後は耐久力強化の効果と、何よりうざいのはスピードアップの効果と剣を透明化させるやつだ!)
よし!切れた!」
ホノンが避けた先、属性の効果は無くなり、剣からは何も出なくなっていた。
「くっ!でも切れても良い!属性なんて関係ないわ!」
効果が切れかけていて、常時では無いが、一定のリズムで透明化する剣を使ってすごい速度で斬りかかるベルミー。
ホノンはその一定のリズムを見極め、剣が見える間は剣を受け、見え無くなると体の動きを読んで避ける事に徹した。
カコッ カッ カコッ
「そうやって避けるだけかしら?!」
「ちゃんと見てるか?ベルミー!」
カッ カコッ カッ
「えぇ!見ているわ!
まだどちらの効果も切れて無い!このまま避け切れると思ってるの?」
「そうか!透明化も、スピードも、まだ切れないんだな?!
でも、私が言ってるのは違うさ。ずっと…」
「まさか…」
「ずっと当たり前のように付けていた耐久力強化!」
カコッ カコッ カコンッ!
その時、ホノンが攻撃を剣で受けた瞬間、ベルミーの木剣の上。ひびの入っていた場所から割れて、剣の先が飛んで行った。
「自分のポーションの時間くらい、自分で把握してなきゃなぁ!ベルミー!」
「待って!そんなはずは!まだ切れていないはず!」
「じゃあなぜ壊れたんだろうなぁ!
ほら!切れた瞬間から、ずっと受けてきた衝撃を精算するみたいにボロボロに壊れて行くぞ!」
そうして斬りかかるホノンだが、ベルミーもまだ残った剣で受ける。
「さぁ、いつまでそうしてられるかな?
もう後2秒でそのスピードと透明も切れる!」
「なんで…なんであなたの方が薬の事を…」
そう言いながら負けを認めたベルミーは手の力を抜いて剣を落とした。
「はい、うちの勝ち。」
ホノンはそう言って木剣を軽くベルミーに当てた。
「ホノン!10勝!ホノンの勝ちだ!」
ベルミーは膝をついて、落とした剣を眺めた。
そこには、透明化した木剣があった。
「あれ?まだ壊れて無いし、透明化も切れてない…なんで?」
試合を見ていた創夢が話し始める。
「お疲れ!すごい試合だったなぁ。
ベルミー、それはホノンの"嘘"だ。」
「嘘?」
「あぁ、ホノンは最初の試合でノックバックの代償にベルミーの剣にほんの少しのひびが入ったのを見逃さなかった。
そして、最後の試合。透明化を恐るなら全て攻撃を避ければ良かったのに剣が見える時は攻撃を受けていただろう?
あの時に、そのひびの入った場所を狙って剣を交えていたんだ。
そして、そのひびを大きくして、剣を壊す事で、ベルミーに耐久力強化の効果がまるで消えたように、そして、薬の効果時間を熟知していたように演じた訳だ。」
「そんな…
そしたら、諦めなかったら私…」
「あぁ、そうだなぁ、ホノンは欺くのが得意だからなぁ…」
「はは!ごめんなぁベルミー。」
得意気に笑うホノンに創夢は容赦なく課題を提示する。
「だけど!ホノンのそれは意思疎通が可能な者にしか通用しない技だ!仮に今回のベルミーが、言葉の通じ無いゾンビだったら…」
「はっ!そうか…確かにだぞ創夢…」
素直に課題を受け止めるホノンと違い、まだ悔しがるベルミー。
「私は…弓の使い手…故に…」
「あぁ、それも分かってるベルミー。
ベルミーは弓が上手い。だけど…じゃあ矢が全部無くなった時、どう戦う?
ベルミーはあれほどポーションを使ってもホノンに負けた…
自分の苦手な方を高めるべきだ。
今のベルミーは圧倒的に近接の戦闘力が課題だ!」
「くっ!ごもっともですわ!」
そして、今頃全ての効果が切れたベルミーの木剣は粉々に壊れた。
▫︎第36話用語解説
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