異世界製作 〜転生しようと思ったら異世界作る側だった〜

寝占 羊

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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」

第35世 「訓練場」

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 背中と顎の激痛と共に目を覚ますと、ケバブの店の席にいた。疲れ過ぎていたせいか、ケバブのおっさんとどこまで話したかも忘れて、寝落ちしていたみたいだ。

 カランカラン。と食器か何かを片付けている音がする。

 「おぉ、起きよったか、昨日は疲れておったなぁ、飯を食ったらすぐ寝おったぞい。」

 スッと腰を上げ、カウンターから姿を見せたケバブは、起きたばかりの創夢にそう言った。

 「あぁ悪ぃなぁずっと店に居て…」

 俺は痛がりながら首を回した。

 「わしこそじゃ、お主をそんな場所で寝かせたまんまで悪い。
んで、これまた起きてすぐで悪いんじゃが、お主の言ってた"訓練"とやら…今日からじゃなくてよいのか?」

 「あぁ、そーだな…
まずみんなの家を回るよ。」

 「わしゃもうそんな歳じゃ無い…
冒険以外は参加せんぞ?」

 俺は席を降りて背伸びをすると、外に出る準備が完了した。

 「あぁおっさんは良いよ。もう強いんだし。」

 「そうじゃろう!ほっほっほ。
んで、みんなの家なんて回らんでよい。
ほれ、昨日の集会した場所を見てみぃ…」

 ケバブはそう言うと、片付けていたグラスを置き、窓を指差した。
 その窓から外を見ると、昨日集会をした噴水まわりで、ジョニーとグランマル以外が準備運動しているのが見えた。

 「あいつら…」

 「ほれ、お前を待っとるんじゃろうて、早う行ってやれ」

 「おう、ありがとなおっさん!」

 俺は店を出るとすぐ噴水まわりへ向かった。



 「昨日あんな風に言っておいて、遅いですわね創夢さん…」

 ベルミーがどこを伸ばしてるのか分からない独自のストレッチをしながら言ってきた。

 「おぉ!悪ぃ!
んで、それどんなストレッチだよ…変な体勢たいせいだな…」

 「創夢!昨日の集会、ほとんど俺の話になって悪かった…」

 ソイドはベルミーのストレッチを真似しながら謝って来た。

 「いや、聞きたかった話だ。気にすんな。」

 「そうか。それで、今日はなんの特訓をするんだ?」

 「まず2人組になって木剣で戦ってもらう!
そして先に10勝した方は、日が暮れて来たら実践!
ゾンビと戦いに行く!」

 ストレッチをやめ、ホノンが驚いていた。

 「おい待ってよ創夢!
昨日の話聞いてたでしょ?そんな危ない事…」

 「あぁ聞いてたよ。でも、あれも言い換えればちゃんと対策していたら被害は無かったって事だ!」

 「そんな簡単な話じゃ…」

 それを聞いて、言うと思った…という顔をしてから、俺は村の外を指差した。
そこは特訓させようと決めてからすぐ俺が訓練場として作った場所で、松明でしっかり沸き潰しし、木を少なくし、柵で囲われていないだけで村の一部のような場所だ。

 「そこ。村の少し外、もう明かりは灯してある。
今の村は前とは違う。柵もあるしな。
それから…こいつ。」

 そう言うと俺は口笛を鳴らした。少し前に見つけ、手懐けていたオオカミを呼んだのだ。
 「柵の内にはこの1匹だけだが、こいつも役に立つ!」

 それだけじゃない…実は猫も手懐けた…

 「おい!創夢、それはオオカミだろ?危ないんじゃ無いか?」

 そうか、ソイドの言う通り手懐けられる事を知らない村人達からしたら危険な動物…

 「本当にオオカミ?全然脅威を感じないし、なんか…可愛くない?」

 「そうだホノン。こいつは、いや、こいつらは俺が手懐けた。
柵の外にはまだいっぱいいる。」

 そう言うとまた創夢は訓練場を指差した。
 マップは創夢の指差した方を見て言った。

 「そうか…それで、10勝できなかった方はどうするんだ?」

 「あぁ、10勝した側の人達が満足するまでゾンビと戦った後、柵の中に帰る。
するとそれを追ってゾンビらは柵の手前までやってくるだろ?
10勝できなかった人達はそれを柵越しに退治する。」

 「なるほど…理解した。」

 「私もルールは理解したけど…
それじゃあ、ホネホネはどうするんだ?あいつは遠距離攻撃型だ…」

 「そこでこいつだ!」

 「ワン!」

 「こいつがいればホネホネが寄って来ない。
撃退してくれるんだ…」

 「本当か?!オオカミにそんな力が…」

 ソイドの驚いた表情を見ながら、俺は木剣を配って行った。
配って行く中、人が居ない事に気付いた。
ジョニーが居ないのは昨日の話を聞く限り分かるが、グランマルもここには居なかった。

 「あれ…グランマル…」

 その時、夫であるマップが話してくれた。

 「グランマルは…俺たちみたいに強くなれないし、村の管理をする人も必要…
何より、今は農民として生きているから…私も冒険や訓練はできないって…
そう言われた。それに!俺ももうグランには休んでもらいたい!」

 そりゃ当然だ。子供を失ってすぐ戻って来るわけでも無いのに戦いになんて行けないだろう…。

 「分かった!それは仕方ない!」

 「まだ寝込んでいるミオ君の面倒を見る人も必要ですしね…」

 「あいつがミオを見てくれているのか?後で感謝しないとなぁ…」

 「そしたら…ホノンとベルミー!
マップとソイドのペアだ!」

 そうして、訓練を始めた。



▫︎第35話用語解説
・オオカミ
オオカミ。こちらから危害を加えると襲ってくるが、骨を使って手懐ける事も可能。
骨が好きなため、ホネホネを見つけると飛びかかりに行く。ホネホネからはけられる存在。
いくらか芸を覚える事もでき、お座りさせていれば行動を制限できる。

・猫
猫。クリープの天敵で、クリープがける存在。魚を使って手懐ける事も可能だが、臆病なため難易度は高い。


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