異世界製作 〜転生しようと思ったら異世界作る側だった〜

寝占 羊

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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」

第33世 「痴話喧嘩」

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 ホノンの叫びに少し反応するのはジョニーだった。
そして頭の中で、ホノンに呼び出された時の事を思い出していた。
(あの時言おうとしてた事って、この日の事だったのか?)

 そしてソイドはホノンの言葉をさえぎって続けた。

 「そうだ、あの日はたまたまレボリー達がゾンビを引き連れて来てくれた…」

 マップはまた眉を寄せて頭を触りながら言う。

 「じゃあよ…おっさんのせいなのか?それは…
おっさんの計画は確かに気色悪いけどよ、どちらにしろゾンビを引き連れて来たのはレボリーだろ?」

 ソイドは座って話を続けた。

 「せめて怪物との戦いが俺のせいじゃ無くても、俺がして来た数々の策が、被害を何倍にも大きくした事は事実だ…」

 その会話を両足貧乏ゆすりで聞いていたジョニーがようやく耐えきれずに話し始めた。

 「はぁ?!おいジジイ…お前…ようやく改心したかと思えばよぉ…まだ…
ちゃんと話せよ?なぁ、
なに同情かってんだよ?…」

 そう言いながら立ち上がり、座るソイドの首に手をかけたところを、マップに止められる。

 「待てよ!自分がした事には反省してるだろ?見てやれよ!」

 「関係ねぇ奴は黙れ!
おいジジイ!お前のせいだろ?!お前のせいで兄さんは!」

 話を遮られ、置いていかれたホノンもジョニーを止めた。

 「待ってよジョニー!
あの日、話せなかったけど、これは私のせいでもあるんだ…」

 ホノンの言葉を聞いてジョニーは少し冷静になってソイドの首を離した。

 「はぁ…そうか。

吹っ切れた…。

まぁもう終わった事だよ。もうなんかなんでもいいんだ。

ホノン、お前が言いたいのはわかる。
あの日お前がたまたまゾンビに襲われて、それを私達は助けた。
それがきっかけだと思ってるんだろうが…
それは違う…気にするな。

それに、あの日はなぜか体を操られるっていう聞いた事の無い怪物の能力も発見したし、お前がそれで混乱していたのも知っている。
だがもう終わろう。誰も喋るな。私はどんなに改心したおっさんも許さないし、話しても何も変わらない…もう突っかかるのもやめだ。」

 その場に少しの静寂が流れた。
そしてマップは力が抜けたように段差に腰掛けると言った。

 「まぁ…ジョニーがそう言うなら終わりでいんじゃ無いか?
聞きたい事は個人的に聞きゃ良い話だ…」

 「あぁ、とにかく、私は降りさせてもらう。
それこそ、もう好きにやらせてくれ。
私は訓練とか、冒険とかにも行かない。君達の邪魔をするつもりも無いし、いない物だと思ってくれ。」

 また空がオレンジ。日が暮れる頃になる。

 静かに聞いてりゃ、全員こじれた過去を持ってやがる。俺が作った世界のはずだが、俺が来るずっと前からの過去が存在している。
なおさら魂どうこうの話じゃ無い。こうなりゃ、神の力はもっと封印して、誠実にこいつらと向き合い、異世界作製なんか忘れても良いから、ここで1人の人として、一緒に問題に立ち向かいながら生きていくべきなんじゃ無いか。そう思った日だった。

ずっと静かに、みんなの真ん中で話を聞いていた創夢は集会を終わらせる。

 「俺の知らない事…話してくれてありがとう。
だが!それが止まる理由にもならん!
俺はお前らを訓練するし!冒険にも、薬集めにも行かせる!いいか?明日か、明後日にでも行くからな?!」

 それにいち早く答えたのはずっと黙っていたベルミーだった。

 「当たり前ですわ?長々と聞いていましたが…やはりしょうもない…
恐怖への言い訳にしか聞こえませんでしたわ?
さぁ、私はこのバカホノンと帰らせてもらいますわよ…」

 そう言って立ち上がったベルミーはホノンのところへ歩き出し、首をホールドすると帰り始めた。

 「え、ちょっ、待ってよベルミー!なんで私も?」

 「うるさいわね、同じ部屋なのだから、当然。
それから、貴方も私に秘密を持ってたくせに。話を聞いてもらえると思わないでいただきたい。」

 はぁ
マップはため息をついて創夢に言った。

 「まぁやる気あるなら良いとして、創夢。
ジョニー、あのままで良いのか?」

 「あぁ、確かにゾンビ化した3人もジョニーと深い関わりがあったようには見えないんだ。別に無理に参加させるのもかえってダメになる気がする。」

 「そうか、それもそうだな…」

 「おう。そしたら!集会は終わりだ!解散!」



 丁度夜が来て、皆それぞれの部屋に帰って行く。

 「創夢様。村の事、もっと詳しく聞くべきでは?」

 「あぁ、ケバブの飯でも食いながら聞くさ。」

そして俺はすぐにケバブの店に遠慮なく入った。

 「お?誰じゃ?今日は開店しとらんが…」

 そう言いながらも創夢の姿を見るとすぐ、飯の支度したくをし始めた。

 「話を聞きに来たんじゃな?まず何が食いたい?」

 「ありがとうケバブのおっさん!
なんでも良いからデカい肉くれ!」

 「了解」

 かまどからする肉の良い匂いを嗅ぎながら、しばらく黙り込んだ。
話を聞いていただけなのに、なぜかめちゃくちゃ疲れた。そして同時に謎の安心を感じていた。
それは、きっと"人"のコミュニティに自分が入っているという実感があったからだ。

これまで、きっと色んな胸糞話を聞いて来たし、見て来た。それは漫画やアニメ、テレビの中の誰かが話していた事だったりする。
もちろん胸は痛むし、良い心地もしない。
だけど、友達とかの身近な人や自分に直接関わる事じゃ無ければ、正直どうでも良かったんだと思う。
知らない人が1人死のうが、人気なキャラが物語から退場しようが、自分の人生にはなんの影響も無かったのだから。

だからきっと、この村の状況も、今日の話しも、今までの俺、そして、外部から見てるだけの俺なら、正直、心のどこも傷まないし、ただのモブの死の話だ。

だけど、今の俺はそうは感じれ無かった。
それは、きっと自分の身近な存在がこの村にあり、このコミュニティにちゃんと自分も参加しているって事を自覚しているからだ。

 「おーい!聞いてるんか?創夢!」
 そんな事を考えている内に、旨そうなデカい肉が目の前に置いてあった。



▫︎第33話用語解説



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