異世界製作 〜転生しようと思ったら異世界作る側だった〜

寝占 羊

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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」

第32世 「ハァーン村の秘密」

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 村の中央にある噴水。その前に立つのは創夢で、
創夢を囲むようにハァーン村のみんなは段差に座って集会をする。

 この世を照らすオレンジの光が丁度真上にあり、強い日差しの中、ソイドは村の過去を話し始めた。

 「創夢だけじゃない、長くこの村に居たのに知らない奴もいるだろう…
ここにいる村人の中で、俺はこの村に最初に来たと言っても良い。
お前ら全員出身村が違うように、ここには昔から色んなルーツ、文化、考えを持つ奴らが集まっていった。」

 この話は長くなるだろう…
その事をいち早く察したジョニーは退屈そうに足を揺らした。

 「10人いれば10人とも違う考えを持つ。そんな村だから当然統率が取れなかった。
そこで、大きく二つの思想に分かれる事になった。

1つは、みんながのんびり平和に暮らす事を望み。
"争い"を絶対にやめ、怪物や略奪者からの対策のみを講じて生活して行こうという考えのグループ。

そしてもう1つは、怪物や略奪者に対抗できる力をつけ、争いに勝つ事で平和を実現し、生活して行こうというグループ。

前者を対策党、後者を対戦党と呼ぶ。」

 だから最初の方の集会でも、マップが俺にこのどちらかを聞いたのか?村人も、ちゃんと考えて生活してる訳だ…

どんどん話すソイドの話に、着いていけないベルミーは眉を寄せて聞いていた。
同じような顔をしたマップは、耐えきれずに質問をする。

 「おーおー、待て!
そんな党があったとか聞いてないぞ?!
優しい党?と野蛮党とか、なんか変なのなら聞いた事ある気がするが…」

チェ

マップの言葉を聞いたジョニーは舌打ちした後、足の揺れをさらに大きくして言った。

 「最後まで聞けないのか?
それはお前がバカで理解できねぇ奴だからあのおっさんが分かりやすく言っただけの党だ!」

ジョニーを見ながら、マップは少し落ち着いて話を続けた。

 「お、あぁ、そゆことか…
ならよ、俺あの時あんまり真剣に聞かずに、自由にさせてもらうって適当に流しちまった…
悪かった…」

 噴水に腰掛け、みなのやりとりを聞いていた俺は思った。
まるで現世と同じだと。
見ろ、ホノンもベルミーもなんの事かさっぱりって感じでパンクしてやがる。
若者は政治に興味が無い。それが、自分の住む世界を回す大事な事だとも知らずに…。
そして、必ずいる嫌な老人は自分の利益だけを求めて世界を回す。

 「対策党を指揮したのがわし、アルマァ・ソイド。
そして対戦党を指揮したのがジョニーの兄、イレジャー・レボリーだった…」

ソイドの話を聞きながら、暑い暑いと言い、噴水の水しぶきがかかる創夢の横に腰掛けたケバブは話始めた。

 「そうじゃったのぉー、わしゃその頃はもう戦いやら血の気の多い事には疲れてなぁ、対策党として生きとった。
んで、あれじゃろ?ソイド。
お主はずっとレボリーに外に出たり、戦ったりするのは村を危険に晒すからやめろってしつこく言っておったじゃろ?
じゃがなぁ、奴はそれじゃ対戦党の意味が無い!
って村人の半分を外へ出しては、1日帰って来んかった事もあった。
そして…あの日が来おった…
奴ら対戦党が大量に怪物を引き連れて、夜中に村へ帰って来たんじゃ…
その戦いは朝方まで続いたのぉ…
んで…計7人が死んでしもうた…
関係の無い対策党の村人も含めてのぉ。」

 勝手に話し始めるケバブを見ながらソイドは暗い顔をして答えた。

 「あぁ、ケバブ。だがなぜお前が話す?
俺は嘘だと言っただろ?真実を話したいんだ…」

 「分かっておる。
じゃがこれがわしらの知る話。レボリー、奴の罪じゃ。
これのどこがどう嘘と言うんじゃい?」

 「彼ら、対戦党を村へ帰りずらくしたのも、怪物が村を襲ったのも、俺が根本にあるんだ。
あの時、俺は対戦党をおとしいれ、そして対策党が認められ。俺が村の村長になりたかった…
だから、"対戦党解体計画"を考えていたんだ。

ゾンビらの襲撃をレボリーら対戦党の責任にするために、そう見えるように。
色んな策を講じた。ゾンビの湧きやすい場所、通りやすい場所、あの時は対戦党と同じくらい怪物を研究していた…全てレボリーらを陥れる為に。」

 「は?マジで言ってんのか?そんなクソガキみたいな事…。
もうすでに気持ち悪いよソイドのおっさん…

だけどさ…全て任せて何もしてこなかった俺にも責任がある。
そんで、また疑問なんだけど、ゾンビってのはさ、攻撃を受けなければ不用意に村人を襲わない。そうだろ?
あんたはその研究でゾンビを操る力を得たって事か?」

 なるほど、そんな仕組みだったのか…
村人であれば、同じモブ!あいつらは変にゾンビに手を出したり、挑発しない限りはそんなに襲われないんだ…
つまり、今怪物が積極的に近付いてくるのはあくまで俺を追ってなのか?
それとも、こいつらが心を持った今、ゾンビ達はこいつらを俺やプレイヤーと同じように認知するのか…

 「マップ…違う…そんな事ができたら…今回も力を使ってる…。
前まで村にサボテンとか、ポイズンベリーとかがなってただろ?
触れただけで攻撃が体に流れて来る植物だ。
あれは俺が埋めた。それが攻撃のきっかけ作りになれば良いと思ったんだ…」

 その時、ずっと黙り込んで座っていたホノンが、泣きながら立ち上がった。

 「待って!でも実際レボリーらがすでに攻撃体制のゾンビらを村に引き連れて来たのは事実だ!
みんな!私もずっと秘密にして来た事がある!その日の事でだ!
私はあの時にこの村に来ただろ!?
あのゾンビ達…きっかけはわ…」



▫︎第32話用語解説
・イレジャー・レボリー♂
ジョニーの兄。元ハァーン村の住人。元木こり職。その後、対戦党のリーダーとして、外村の調査、怪物の研究を行っていた。

対策党たいさくとう
みんながのんびり平和に暮らせる事を望み。
争いを絶対にせず、怪物や略奪者からの"対策"のみを講じて生活して行こうという考えのグループ。

対戦党たいせんとう
怪物や略奪者に対抗できる力を身につけ、
"争いに勝つ事"で平和を実現し、生活して行こうという考えのグループ。

・サボテン
サボテン。鋭く強い針があり、触れると攻撃作用が発動する。

・ポイズンベリー
毒を持ったベリー。触れるだけでも神経毒にやられて、攻撃作用が発動する。さほど大きいダメージでも無いが、少しの間継続される。
ケバブの手にかかれば食用としても美味しくいただける。

対戦党たいせんとう解体かいたい計画けいかく
具体的な例は、
、自身の支持者の軽い洗脳
、村の1部の松明の置く場所などを工夫し、ゾンビの通りやすい場、湧きやすい場を設ける
、ゾンビは攻撃を受けなければ不用意に村人を襲わない為、ゾンビがダメージを受けるきっかけ作り。
例えば、近づくとダメージを受ける植物を特定の場所で育てる。などである。
、対戦党の支持者の家の近くに大きめの木を埋め、育てる。
これにより、ゾンビなどが朝を迎えても日に焼かれる可能性が少なくなる為。
、ゾンビの集大流動。レボリーらが冒険している場所に、ゾンビを大量密集させる。.etc

・ハァーン村7人の死者
1人目、ブレム・キャパ♂ 対策党
2人目、タウル・タック♂ 対戦党
3人目、ボツ・ヘイ♂ 対戦党
4人目、ウィン・スタッド♂ 対戦党
5人目、ニッキ・ロール♀ 対戦党
6人目、ニュアソ・ジャンダ♀ 対戦党
7人目、プロ・オーバー♀ 対策党


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