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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」
第25世 「特殊」
しおりを挟む「ミオ君…危ない…早く…どいて…」
レイがそういうと男は、残された片腕に乗っているゾンビアンをミオの方に投げた。
そのままゾンビアンとミオは取っ組み合いをしている。
男はゾンビアンを腕から退けた事で空いた手でさっき右腕で持っていた斧を拾うと、そのままゾンビアンと取っ組み合っているミオに振りかざす。
「こいつのガキゾンビはちと厄介そうだ!早めに殺す。」
もしゾンビ化されると厄介だと思ったのか、少し前にいるレイよりも、取っ組み合ってまだゾンビ化していないミオを攻撃したのだ。
レイはミオを守ろうとするが、近くにゾンビアンがいるので、男からの攻撃を受け止めている時に、ゾンビアンに噛まれる事を恐れ、少し出るのをためらってしまった。
「くそ…遅れた…ミオ君が…」
男は動きを止めず、容赦無くミオに斧を振り下ろした。
ガシンッ!
そうして誰もミオを守る者がいなくなった時、
誰かがその振り下ろして来る斧を止めに入った。
「うっ!ミオ!早く逃げろ!
カーターも!早く逃げろ!」
それはソイドだった、ミオをソイドが守る。
ソイドも斧を持っていた。男よりは一回り小さい普通の斧である。
その斧の広い面を盾のようにしていた。
この守っている間にゾンビアンに噛まれるかもしれない状況。
それをレイは恐れたのだが、ゾンビアンはソイドに噛み付く事も無く、ミオとの取っ組み合いも止め、急に立ち止まった。
理由は、おそらくミオがずっと取っ組み合っている間もゾンビアンを説得しようと話しかけていたからだ。
まだ人の記憶を残しているのか、ミオの言葉を聞いて葛藤するように、よだれを垂らし、震えていた。
それを遠くで見ているオマエは焦りを感じる。
「ソイドさん!今創夢を呼んでくる!」
「待てオマエ!先にみんなを避難させてくれ!」
「おいおい、よそ見か?
集中してくれ、避難?そんな暇は無いぞ…
見ろよ、もう怪物達が流れるように侵入してる。」
ソイドは、男にそう言われ、開いた柵の方を見ると、まるで連携しているかのように綺麗に並んで村に入り込む怪物達がいた。
「ソイドさん!前!」
よそ見をしていたソイドにオマエがそう言うと、ソイドはまた前を向く。
そこには少し力んだ顔をして、さらに斧に体重をかけ出す男がいた。
男はソイドとは圧倒的な力の差でソイドは防御したまま押され続け、体勢を崩す。
男は一度そこから斧を離すとまた斧を大振りに振りかざす。
スゥー!
その瞬間は周りがスローに見え、斧が風を切る音がする。
「やばい…どう防御すれば…間に合わ…」
ソイドは体勢を立て直せず、死を覚悟する。
ズシャッ!
「ッ!」
「カーター!何してる!
おい!カーター!」
またそんな状況のソイドを守ろうと、武器も無く、弱めの防具しか着ていないカーターが間に入り斬られた。
重症を負うカーターにさっきまでよだれを垂らしてまるでミオの言葉に葛藤してるかのように唸っていたゾンビアンが噛み付く。
ギチィ!
「おい!待て!母さんは!
なんで…なんで!」
おそらくミオよりも血が出ていたからだろう。
ゾンビの本能に負け、ゾンビアンは完璧にゾンビ化を果たした。
「カーター!しっかり!」
「ヴ、ヴヴゥー!!」
何も出来ず、そのままアンのようにゾンビ化したカーターを見てレイがソイドとミオを遠くへ蹴り飛ばす。
バスーン
「だから…邪魔…」
「待て!レイ!カーターは!やめてくれ!」
レイがついにスイッチを入れ切り、ゾンビ化した2人と、男を倒そうと動き出すが、1番手前にいたゾンビアンの姿が無かった。
「あれ…アン君…いない…」
レイに飛ばされる時、ミオはアンの服を掴んで一緒に飛ばされていた…
「アン!お前は許されない事をした!おい!」
「ミオ!何やってる?お前も早く離れろ!そいつはもうアンじゃ無い!」
ソイドのその言葉がミオの耳に入る訳もなく。
「起きろよアン!なんで!」
「ヴィー!!」
「えっ?!」
ギチィ!
するとミオもアンにあっさり噛み付かれる。
「は!あ、あぁ!
い、痛いよ…アン…」
「ミオォ!おま、お前まで…」
レイはそれを見て呆れた顔で、男に向かった。
「もういい、先にあの男を殺る…」
レイの大雑把な攻撃を斧で受け止める男。
ガキン!
「すごい奴だな…仲間になんの同情も無しか?」
押し合いながら男はレイを挑発する。
ギギギギギ
「うるさい…」
挑発され、ムッとしながらレイは斧を跳ね除け次の攻撃を仕掛けるが、それも受けられる。
バスッ! ガキンッ!
「うっ…危ない危ない…
受け切れない事は無いが…強いな…
やはりお前何者だ?本当に女か?」
「…」
無言でさらに強く剣を振る。
ガキン!
それも止められる。
「クールだなぁ。無口な子は好きだぞぉ?」
その時、男の斧の窪みに剣が引っかかり、男が振り払った事で、レイはそのまま剣を遠くに飛ばされてしまう。
「フフフフフ!
剣が無いと惨めだなぁー、ただの女だ!
挑発に乗り過ぎたのが敗因だな。」
男は勝ち誇ったようにそう言うが、レイは冷静に答える。
「惨めなのはそっちでしょ?剣はもう必要無い…
だから捨てたの。
後ろ…」
「あ?後ろ?
そんな子供みたいな手を使っても俺には勝てないぞ?
ほーら後ろなんていくらでも振り返ってやるよ!
その素手で何ができるんだろうなぁ?」
そして男が後ろを振り返ると、そこにはゴーレムがいた。
「なっ!」
ドゴーン!
ゴーレムの攻撃で男の頭は砕け散った。
「あ…良いところに入った…痛そう…」
男は顔を半分無くして即死だ。
そしてゴーレムはそのままゾンビ化したカーターを殺そうと前進して来た。
ドシッ ドシッ
ゴーレムからカーターを守ろうと、ソイドはゴーレムの前に立つ。
「ブウォーン!」
「待て!カーターは味方だ!やめろ!」
「何してるの…おじさん…早く逃げて…」
「黙れ!カーターは味方だ!」
「もう味方じゃ無い…ゾンビなの!」
「ヴゥー!!」
「ほら!」
ゾンビ化したカーターは
ゴーレムから自分を守ろうとするソイドに歩き始める。
「カーター!やめろ!俺だぞ!俺だ!」
「だから!早く逃げなきゃ!」
レイは剣を失い、ゾンビ化した2人を倒す事ができなかった為、ゾンビカーターがソイドを食べないよう、後ろから押さえる。
「もう…どうして。
私にも限界がある!早く逃げて…」
「嫌だ!逃げる訳には行かない…」
「はぁ…バカ…」
その時、目の前まで来ていたゴーレムがゾンビカーターに攻撃するつもりで容赦無く腕を振り回した。
そしてそれはもちろんカーターを守ろうとするソイドが受ける事になる。
バスーン! ブシャッ!
「うっ!」
「なんで…ゴーレムがおじさんを…」
バスーン! ブシャッ!
「ガハッ!」
「もう…やめて!逃げてよおじさん!」
一方噛まれたミオは…
「はっ!どこ?」
走馬灯か、幻覚か、ミオは夢を見ていた。
目の前にはアンがいた。
「カーターおばさんを噛むつもりは無かった…ごめん…だけど!言っただろ?君は守る…」
「どーゆー事?僕も君に噛まれたじゃ無いか…」
「あぁ、そうだね、傷は付いちゃったや。
痛いよね…ごめん、耐えてくれ。」
「どういう事?」
「君はまだゾンビ化していない…一部しかね…
良いか?この夢から覚めたら、すぐに僕の事を食べるんだ…良いね?」
「嫌だ、良いよもう、どうせなら、僕も一緒に死んで2人でいたい…」
「それはできないよ…夢をまだ叶えてないだろ?
僕の英雄になるって夢…
あれは君が叶えてくれよ。」
「ダメだ!ねぇ、なんで最後まで僕の話を聞いてくれなかったの…」
「ははは、君だって、僕の話を聞いてないからさ…
だから、これだけは聞いてほしい。
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俺の体にゾンビのウィルスの抗体を作れたかも知れないんだ。
なんでできたのか自分でも分からない…
だけど僕を食べて、それを体に取り入れてくれ…」
「そんな事できる訳無いだろ!君を食べただけじゃ抗体なんてつかないよどうせ。」
「ほら、聞かないんだ…
ミオはさ、本当すぐ決め付けるよね。
いいか?この世に"絶対"は無いんだ。
それだけは覚えとけ!
さぁもう行く時間だ。」
「あぁー!待って…!」
そうして目を覚ますとミオは半分ゾンビの状態で我を失ったかのようにアンを食べ始めた。
▫︎第25話用語解説
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