異世界製作 〜転生しようと思ったら異世界作る側だった〜

寝占 羊

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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」

第22世 「安心」

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 そして、今日1日も終わろうとしていた。
 「ねぇホノン?」

 「ギクッ!なんでしょう、ベルミー様…」

 「みんなに聞いたんだけど…
変なものも、虹色の薬も、
特別なものは何も採掘されてないですって…」

 はぁ…嘘だとバレたか…

 「は、ははぁ?あれぇ?
わ、私の聞き間違えかなぁー?
(ふぅー、念の為持って来ておいたこいつを使うか)」

 ホノンは自分の手持ちから水の入った瓶を取り出した。
 「で、でも確かに言ってたんだよ。ほらー、あの…(よし、会話でまぎらわせてる間に…
この水に塗料を混ぜて虹色を作れば…)」

 ホノンは、ベルミーに見つからぬよう、背中の方であせりながらびんに色んな色の塗料とりょうを入れた。

 「(よし…これで、どうだ)
なぁーんてな!ほら見ろ!見つけたのは私でしたー!」

 そう言いベルミーの前に瓶を突き出した。

 「えぇ?何よその真っ黒な薬。」

 「えぇ?真っ黒?」

 ホノンが持っている瓶を見ると、入れた塗料が全て混ざって真っ黒な色の水になっていた。

 「(くっそぉ!何これ?
あれ?色っていっぱい混ぜるとこうなるっけ…?)
い、いや、これは。」

 「そんな危険そうな薬、ずっと持ってたの?貸しなさい?」

 あれ?ベルミーって天然か?
これどう見ても薬じゃ無いって分かるでしょ…
ベルミーが瓶を取ろうとするが手を引くホノン。

 「やだね!
(ふぅー、色がこうなるのは予想外だったけど…
元々最初から渡す気なんかないんだよーだ!
このまま渡すと見せかけて手が滑って落ちちゃった作戦だ!)」
 薬なんてもんは落としちゃえば無かった事よ!

 「なぜ?約束のはずよ?」

 「じゃあ、絶対に危ない事には使わないでね?」

 「えぇ、もちろんよ、あなたよりは安全に扱えるわ!」

 そして渡すふりをし、瓶を落とすホノンだったが、地面に落ちるギリギリで、
ベルミーはそれをあっさりキャッチした。

 「げっ!」

 すると、ベルミーが瓶を取った瞬間、
その真っ黒な水が、見る見る虹色に変わった。

 「へ、あ、あれぇ?どゆこと?」

 「なんだ…本当に虹色じゃない」

 「え?いや、今明らかに色が…変わっ…
(あれ…そっか、これ前にも見た事ある…
ベルミーはみんなに隠している能力がある。)」

 ホノンは、人を騙す為につちかった人間観察力で、村の中で唯一ベルミーの秘密に気が付いていた。

 その秘密はベルミーの持つ特殊な力の事である。
それは、バケツや瓶で汲んだ水をごく稀にランダムなポーションに変えるという力。
その確立は約0.1%、できたポーションの効果は本当にランダムである。

 元ルグナ村出身のベルミーは小さい頃、村の近くで発見した飲みかけのポーションを誤って飲んでしまう。その日から発現した能力である。

 「虹色なんて珍しい…
この薬がどんなものかはさっぱりだけど、
感謝するわホノン。」

 「え、あ、あー、こちらこそ…
じゃねぇや、
どういたしましてぇー!
(ま、まぁ上手く行ったなら良いかぁー)」

 その時、後ろから死んだ目をしたレイが殺気立つ声で言う。

 「ホノン?…」

 やべ!次はこっちか…ご飯無限の券とか嘘付いたのバレた?
 「キャァー!はい、すみませんでした、はい…。
すぐケバブのおっさんに確認をぉ…」

 「え、いや、ありがとう、
いっぱい食べさせてもらったよって…
だから…」

 「え?あれ?そなのか?
なんで私らを誘わず?」

 黙り込むレイ。

 「あれ?どした?レイ?」

 するとうつむき気味に言う。
 「ごめん…」

 「え?ごめん?いや、こちらこそ、というか、そのー、
ん?どういう事だ?」

 「おじさんが…
好きなだけ食べて良いって…
だけど…私が食べ過ぎるから…」

 「良かったじゃんか!
何で謝るんだよ!」

「ホノンの分として取ってたやつまで…
全部いただきました…

そのぉ…

美味しかったから…ゆ…
許して?」

 すると今度はホノンがうつむいた。

 「そ、そーゆー事か…
なぁレイ?謝る時ってのはな?……」

 「ごめんなさい…」

 レイは一言謝ると、ホノンの怒りが爆発する前に家に帰った…。

 「最初から許しを乞うんじゃ無くてちゃんと自分の…」

 「もう居ないですわよ?」

 「あいつぅ…!」

 するとベルミーがそんなホノンを見て言う。

 「まぁまぁ、そんな小さな事で怒っていては、恥ずかしいですよホノンさん。
仕方ないですし、
丁度私減量中ですから、私の分のご飯を分けてあげますよ。」

 「ほんとか?!
ベルミィー!ありがとぉー!」



 「ホノンとベルミーはいつ来るんじゃ」

 「はぁ。おっさん!もっと飯くれ!」

 「どうしたんじゃマップ!何に怒っとる!」

 「うるせぇよ!見ろよこの宝箱!」

 「腐肉。腐肉。腐肉。腐肉。パン。
ほっほっほっほっ!
こりゃ笑えるのぉ。
そりゃゾンビスポナーの宝箱じゃもん…」

 「それにしてもこれは無いだろ…」

 「分かった分かった。んなら、これでも使って料理してやるわい。」

 「いらねぇよ!誰がゾンビの腐った肉なんか食うんだよ!」

 「まぁまぁ、美味しく食べれるようにするさ。
そんで、もう一つの宝箱はどうだったんじゃ?」

 「あぁ?まだ開けてないが、どうせ同じ感じだろう?もういいさ」

 「ほっほっほ!
まぁまだお楽しみはあるってこった。
ほれ、腐肉料理じゃわい、どうぞ!」

 「って!提供が早すぎんだろ!
だから!食わねぇっていってんだろ?」

 「まぁまぁいいから一口食え!」

 嫌々食べるマップ。

 「美味い…」



 そうしてハァーン村の拡大は続いていくのであった。



▫︎第22話用後解説



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