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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」
第16世 「鉄の巨人」
しおりを挟むそれから、また1ヶ月が経った頃。
村の皆も言語を習得し、リアルな人の姿を発現させていた。
そのおかげか、ハァーン村はかつてない統一感を持っていた。
「今日の集会を始める!」
噴水の前にて集会が始まった。
「これを見てくれ!」
創夢が手を向けた先には鉄で作られたブロックが人型に並べられていた。
すると創夢は顔の形がくり抜かれたカボチャを持ちながら言った。
「今から召喚するのは、鉄の巨人"ゴーレム"だ!
こいつは俺たち村人を外敵から守り、そして、怪物となった味方を苦しまぬよう鎮魂してくれる存在だ!」
それは、創夢なりにジョニーの事を考えて起こした行動だった。
「なお!彼らの管理は聖職者。
ジョニーに任せる!」
そして創夢は2体のゴーレムを作った。
「ブォー」
「こ、これを?本当ですか?」
ジョニーは驚いた顔で言う。
「あぁ!まぁ管理と言っても…」
するとソイドも口を開く。
「待て!何言っとる?ジョニーは危険だ!あっ…」
ソイドは勢いで言ってしまったという顔をしていた。
「べ、別にジョニーじゃなくても、の話だ…
誰かに管理をさせるのは、問題がある。
創作者である創夢。君か、村の皆で面倒をみれば良いだろ。」
「ま、まぁそれもそうだが…」
そこまでジョニーに突っかかる理由はなんだろう…。
ジョニーは対抗するように言った。
「私は危険?…はっ…
それが危ないと言うのなら、今みんなもゴーレムの召喚方法を見たはずですよね?
権力を持ちたいものが同じように作れば、それこそ危険だ。」
こいつも、挑発する口調で話すなぁ。分かった、ジョニーとソイドはとにかく仲が悪い訳だ。
「分かった分かった!待て待て、
俺の言い方が悪かったが、そもそも、今みたいにゴーレムを召喚できるのはプレイ…
オホン…
俺か、自然生成された時くらいだ!」
「ブォー」
村人達には目もくれずゴーレムは村を自由に歩き回り、集会してる場から離れて行ってしまった。
「君達が真似しても召喚はできないし、できたところで…
ほら見ろ、あの自由さを!
手懐けるのなんか不可能に近いんだ。」
そう言うとソイドもジョニーも口を閉じた。
「まぁ…こんな化け物見せたらそう不安になるのも分かる。
とりあえず、
そしたらみんなで面倒見てやってくれ!」
まぁ管理と言ってもゴーレム相手じゃできる事は限られてくるしなぁ。
そして集会の話題は変えられた。
比較的無口でクールなマップが口を開く。
「で、この先どうするんですか?
怪物達に挑むのか、柵の中で生き続けるのか…」
この世界でのあり方を簡単に説明してくれたみたいで感動するなぁ。
この世界は、ゾンビやらの怪物が居る限り、絶対的な平和が訪れない、まぁそれも人同士で殺し合う現世に比べたら良いのかも知れないが。
この世界での生き方は主にこの2つになるだろう。怪物達に挑む、または交渉することで暮らすか、
安全圏を作り暮らして行くのか。
攻略を目指す俺からすれば問答無用で前者。
怪物達に挑んで行く方だが…
それに村人がついて来てくれるのだろうか…。
ついて来たとして、
どうせやり直さなければならない攻略を、
そのやり直す時に同じように心を持った村人になるのだろうか…。
黙っていたジョニーが言う。
「はぁ、その話はダメですよ!」
するとソイドが声を上げる
「絶対にダメだ!何が怪物達に挑むだ!
何とも争うな」
「ほら、案の定です…」
ジョニーがソイドの言う事を知っていたかのように頭を抱えてそう言うと、
ソイドは話を続ける。
「おい!その怪物とやらと戦わない為に。
その為にさっきのゴーレムとやらがあるのでは無いのか?
創夢!
貴様にどんな力があろうが、争いを選び、村を危険に晒すなら俺は許せんぞ。」
おうおう、ソイドは攻略に反対的なんだな。
どうしよう…やはり村はただの拠点にして1人で攻略して行くべきなのだろうか。
するとジョニーが対抗する。
「おいおい、そろそろ口を慎め、おっさん…
まだ理解していなかったのですか?
兄がいたから村は守られたのです!
いや、もういい…結局兄のいない今、
どちらにせよもう時期にこの村も襲われる…」
「おい、誰がおっさんだ?
誰のおかげでこの村にいられてる?」
出た出た、こいつら本当に仲が悪いなぁ。戦闘中にこういういざこざが起こる事を考えても、1人行動がベストか?
とにかくだ!
今はとりあえず焼肉機の時のように、攻略としても、村としても一歩前進する何かが必要…。
2人の間に創夢が入り話を抑える。
「おい!落ち着け!そうやってすぐ仲間内でピリピリするな!
過去に何があったかは知らんが、俺の中ではもう決まってる!
外に行くにしても、内にいるにしてもだ!
今の村じゃ小さすぎる!
よって、"村を拡大"する!
それで良いだろ?」
戦闘を嫌うソイドも賛成した。
「村…拡大?
そうか、分かった…
カッとなってすまなかった。
お前はまだレボリーを…
ジョニー…
誤解するな。
俺はお前を守りたいだけなんだよ…
まぁこの話はやめて、ひとまずここは村拡大で良いだろ。」
ジョニーも答える。
「ちぇ、
やはり貴方もか。
そうさ、神なんていない…
私は知りません。
どうぞ、ご勝手に。村拡大というのなら協力だけならしてあげましょう。」
なんだよ…何があったんだこいつらの間に…
レボリー?やっぱりこの村人は何かあるだろ…
兄?ジョニーの兄弟か?
そうしてピリついた空気の中、ホノンが意見する。
「でもさ!創夢村長がいるんだったらきっとこの村は大丈夫じゃない?
さっきのゴーレムだって増やしたいだけ増やせば良いし、
それでも怪物に敵わなかったら最悪また村長に撃退して貰えば良いんだよ。」
あぁ、なんだこの最近の若者感溢れるギャルな感じの奴は。
これはまずい方に走ってる気がするなぁ。
もっと前に、力はそんな簡単に使えないものだと見せておくべきだったか…。
そのホノンの楽観的な意見にソイドは納得していた。
「あぁ、一見飛んだ考えだが、正直それはそうだ、
今まで見た事もない力を使うんだろう?頼りにしているぞ、村長。」
お前もかいおっさん…
マップがボソッと言う。
「バカ、俺はこの前村にゾンビが来た時。見た。
あんな強大な力、いつでも使えるなら、もう今頃勝手に村を拡大してるだろ」
創夢も言う。
「あぁ、そうだ、マップの言うとおり、俺は何でも屋ではない。条件が揃わなければお前らの言う力は使わない。
これは無いものだと思ってくれ。」
「そうか…」
助かったぁー、ありがとうマップ!
ふぅ、やっぱ力を使う時はこいつら村人に配慮して…なるべくバレないように使うのが良いかもな。
しばらく静かになった後、オマエがそんなピリついた空気を変えた。
「だったら、全員で!
村拡大!やり遂げよう!
資材収集組、運搬組、建築組、
に分かれて、外に出る人の監督は創夢。
村側の監督はソイド。
今日は設計図や役割の振り分けをして、
明日から作業だ!」
ソイドが言う
「早めに取り掛かるのは大事だが…
それならジョニーは外の役にしてくれ」
くそぉー、オマエが整えてくれたと思ったらすぐこれだ。挑発しやがる…
ソイドー…そりゃ村長としてしっかりしろってオマエに言われるわなぁ…。
ジョニーは答える
「おい!何だこいつ!?まだ煽るのか?
ちぇ…こいつが兄への行為を反省してない事を知らされて乗り気になれるわけがない…」
ソイドが言い返す。
「こちらこそだ、まだ兄の洗脳が解けて無かったとは…」
ジョニーは呆れる。
「はぁいつまでも話のできないジジイですね。」
2人の言い合いを見ていたマップも言う
「はぁうるせぇ奴らだ…
だが、確かに今はそんな明るい気になれない…
オマエみたいな考え無しのバカがいるからこの村はダメなのかもな。」
はぁ、この村も団結して来たと思ってたんだが。どんどんまずい方に行ってるよなー…。
その時オマエは純粋な顔をして答えた。
「ダメ?
どの辺がダメなの?オマエはこの村が大好きだし、
みんなも大好きだよ。
ソイド村長も、ジョ兄も、マップさんも、みんなオマエの"家族"だ。
オマエにはみんな以外家族が無いんだもん。」
的外れなオマエの言葉にみんなが凍りつく中、
ホノンが大声で笑った。
「ハッハッハッハ
これは、一本取られたねーみんな、
いやー、言わなくても分かると思うけど、
嘘つきのホノンからはっきり言わせてもらうと
オマエは本気に言ってるよ」
「創夢様は入って無いのですね…」
「うっせぇな」
そりゃ最近来たばかりなんだから…
でも、俺の予想通りだった。ここの村人全員が感情を、"心"を持ってる。こんな人間らしい会話をモブから聞く事になるとは…。
"良い事"、"悪い事"に関係なく、"人間"って感じだ。
オマエは続ける。
「そんな喧嘩するくらいなら、みんなでゾンビになった方が楽しそうだよ」
ソイドが頭を抱えて言う。
「はぁ、バカ野郎だ…」
ジョニーは気に食わないようだ。
「ちぇ、貴様の感情など知らぬ…」
マップもうつむき気味に言う。
「バカはある意味力だな…」
そして、一部始終を見ていた無職のレイはあくびをしながら独り言を呟く。
「ふぁあ~
え…なんの話?
みんなでゾンビになるの…
何が楽しいんだろ…?
想像しただけでいやなんだけど…」
そうしてなんとか団結を取り戻したハァーン村は拡大計画が始まる。
▫︎第16話用語解説
・今のところ無しで。
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