異世界製作 〜転生しようと思ったら異世界作る側だった〜

寝占 羊

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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」

第9世 「筒抜け」

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 もちろんこの司書は死んでもまた生成すれば良い話だ。コピーも済んである。
 それがコピーした時の状態で生成されるのか、
 それとも1から子村人として生成されるのか、
どーなるのかは分からない…

 だけど、それがどうであれ、この世界で初めて仲良くなった存在を1度でも失う事が少し怖かった。

 どんな力を持った創造主になっても、"孤独"というものの悲しい力には敵わない。

 その宿敵と戦い続けなければならない俺の重荷を、
少しでも楽にしてくれる人を、俺は大切にしたい。

 それが自分が作ったモブであってもだ。



 まぁ、それに…そんな大層な理由が無くても、
こいつには"心"が見えた。

 物に魂が"生まれる"。

これはあり得ない話だ。
 魂は"宿る"事はあっても、その場で"生まれる"事はあり得ない。

 こんな奇跡、世界どうこう以前にほったらかしにできないだろ。



 そんな事を言い訳にして、俺はあっさり、
創造者の力を使った。



「ヴゥーン!」

ガハァー!

ガハァー!

ガハァー!

 ゾンビを遠ざけ、
あたりにいた怪物も含めて全てその場で倒した。
半分程囲えていなかった柵も、一瞬にして柵を、開いていた部分に生成し、囲った。
そして、ついでにさっきまた壊されてしまった扉も直した。



 司書はその一瞬の出来事にうずくまったままの格好で、驚いた顔で言う。
「エ?オマエ、ツヨイ?」

 「ちげぇーよ、俺の力な?
まぁ、だけど、ありがとよオマエ。」

 そう言うと俺は腰を落としたままの村人に手を貸してやった。
こうして俺にはオマエという友ができた。



 そしてそれから穏やかな数日が経った。

 力…使っちゃったや、オマエの事があるから、"攻略"をやり直す、つまり、また新たに世界を作り直す事、はしていないが、これはどちらにせよ世界の審査ってのには落ちる。

だから、もうこのままダラダラ世界の細けぇところ見て、作って行こう。攻略再挑戦はその後だな。
って思いつつも、ちょっとしか使って無いんだし…
あれから、すぐ転生者モードに戻したから…
見て見ぬふりしてくれって気持ちもあった。

 柵ができちまうと平和なもんだ。
「どうだルプ?村を柵で囲えたらこーやって生活していけるだろ?
もう転生者入れて次の世界作っても良いと思わ無いかぁー?

誰がしてくれるんだろうなぁー、…」

 「はい、ヘルプです。
はぁ。まず…普通こんな短い間でそんな簡単に異世界はできませんよ…。」

 今、ため息ついた?
 「おま、答え方簡単になりすぎだろ…」

分からん事が、多すぎる。
そこで、やっぱなんか知ってそうなルプにしつこく聞くがやはり何も出てこない。

 「だから、作成では無く攻略が目的なのであれば、
力はあんなに使うなと警告したのに…使いましたね…

まぁ今回の事はおっしゃるように村を囲う事ができれば良かった話ですから、世界も見逃してくれるのでは無いかとわたくしも思いますが…

知らんけど…」

 「え」
今小声で知らんけどって言わなかった?

 でも、収穫ありだ。世界の審査にはこの見逃してくれるって要素もあるらしい。
攻略中、神の力を少しでも使えば、何があってもいけない!という訳じゃないという事だ。

そりゃ当たり前だよな、作ったつもりが、ちょっと忘れていた事なんて必ずあるんだから、そこを少し修正するくらいなら大丈夫って訳だ。

「このブロック異世界のルールは知りませんが、おま…
オホン。創夢様のおっしゃっていたスレンダードラゴンというものを倒すのでは?」

 「あー、そっか、やっぱ倒さなきゃ転生者は来ないんだな」

 「ルール上、それが当然の話です。
ですが…それを管理してるのはあのおじさまですから…

って言っても、記憶無いんでしたね、創夢様は。
はぁ」

 「あぁ、なんか…ごめんな、お前も苦労してんだな…」

 お、おじさま?
やっぱり俺の記憶喪失のダメージが大き過ぎる。
頼むから思い出せよ俺。

 「とにかく、そのドラゴンを倒して怪物の出現をできるだけ減らすまでは転生者が現れるどころか、
この前話した異世界としての審査さえしてくれないと思ってください。」

 「分かった分かったよ。」

少しだがわかったこともある。

 だが。
何にせよそれはつまりだ!

今から1度も力を使わずに、転生者モードで誠実にスレンダードラゴンを倒し、攻略成功!としたところで、審査する者に、

 この最初の方の日、
村で神の力使ってたよね?柵で囲ったよね?
それでクリアできたんでしょ?
じゃあー無しだねーって感じで、

この前使った神の力を審査で指摘されたら、
また1からやり直しってのもあり得るってこった!

 「はい、そう言ってますよね?
でもあれはクリアに直結してるようには感じないので、その世界のお方も見逃してくれるのでは?と、
言いましたよね?」

 ん、キレてる?

 「分かったよ、ごめんごめん。
っていや、心の中にまでは返答するなよ…。」

 なんか…ルプ、
明らかに私情が混じってんだろこいつ…
村人を大事にしろみたいなのって、忠告というより、ほぼ強制じゃねぇかよ…
 まぁさっき謝ったものの、やっぱこれから力を使わないよう気をつける事は無いな。

 なぜって、
今から何をやってもこのさっきの通り、
意味が無いことかもしれないんだぞ?
 それならいっそもう力を使いまくってとりあえず世界のもっと深い詳細や原型だけ作っちまったら良いんじゃ無いかって話だ。

 つまりは、一応転生者モードで攻略として進めて行くが、神の力は使いたい時に、惜しみなく使う。
それでドラゴンぶっ倒して、
力使いまくったのに審査に通ればラッキーだし、
案の定通らなければ、再挑戦すれば良い話。

 ただ気になるのは、村人、オマエの謎だ。
世界を作ったからと言って、攻略する時は作った世界を時間的にやり直し挑む。
だからオマエとは一度おさらばしなければいけない、その後、また同じ様なこの奇跡が起きるのか…

 「はぁーーー、
まぁとりあえずいいやー気楽に行こーかー。」
そう言い、ベッドに横になると、オマエがどこからか帰ってきた。



◽︎第9話用語解説
・オマエ♂
司書の役職を持った村人。無魂生命体のはずが…。
創夢のこの世界での2人目の友達である。


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