異世界製作 〜転生しようと思ったら異世界作る側だった〜

寝占 羊

文字の大きさ
上 下
6 / 47
第一章 「村開拓とモブ対抗戦」

第7世 「明晰夢」

しおりを挟む





 あれ?意識が…

 ポタ…ポタッ…

 血がしたたり落ちる中、ゾンビが扉を壊して入って来た。
「ヴゥー」

 徐々に開け辛くなる目でそれを見ながら。

ズリズリ

「あ゛ぁー」
 俺の胸をつらぬいた右腕がズリズリと引いていき、
俺の体はすぐに地面にくずれ落ちた。

 そして、朦朧もうろうとする意識の中、入って来たゾンビが部屋前げんかんで一瞬にしてペチャンコになるのをみた。

グチュッ!

 「創夢様?!こ、これは一体何が…
こっ…ヴゥ、ヴゥーヴゥー…
つ、通信までが…どうし…」

 「ハッハッハ、あれぇ?簡単なもんだなぁ!
死んじゃ何もかもしまいだぞ?

はぁー
よろよろじゃないか、
これじゃお前のつみ正式せいしきつぐなわせる事はできそうにないなぁ
が、まぁいいだろう!後は俺が掃除そうじしてやる。」

 後ろにいた司書職の村人から不気味な低い声で話しかけられてる。
それは確実な日本語だ…
だけど言葉が何も頭に入っては来ない…。

 それより、腕1つで俺の体に穴を…?。

 「な…なに…が…」

 「あぁー、消費量半端ねぇ…
い…こ…まだ遠い…いつ頃あじわえるだろうなぁ…ちき…全部を…」

 耳も意識も上手く機能してくれない…
 ダメだ!まだ気絶するな…
なんて言ってる?!聞き取れ!

 「創夢様!創夢様!」

 はぁ、ルプもなんか慌ててるぞ…
こりゃ相当な緊急事態だろ?

今創造主である俺は、なんの攻撃も効かないはず。
なのに…
あぁ…意識が…。

 いや、そうか…
転生者モードだから…?
でもこんな生々しい攻撃も受けるんだな…痛い…

 「いえ、これは明らかにおかしいです…
ここまでの攻撃は受けるはずが…」

 なんでだ、何が…起き…てる…。



 そしてあっさり意識を失うと、同時に、

 「はっ!あぁー!い、痛ってぇ!
ルプ!助けて!ルプー!」
ベッドから目を覚ました。

 あれ?ここは…
さっきまでもいた…あの本がいっぱいある部屋。

それに、何も痛くない…傷もない…

 ベッドに座り込み不思議な顔をしていると、部屋にいた村人が話しかけて来た。

 「ハァーン。ルプー?ル、ルプ。
アナタ、キノウ、カラ、ネタ、モウ、アサ、イマ、ヒル、」

 「へ?あ、あ゛ぁー!来るな!」
 あの司書職の村人だ…
さっきこいつに胸をつらぬかれたんだ、
顔を見た瞬間しゅんかんからだ恐怖きょうふした。
そして気付いた。

 「いや、待てよこれ、ゆめか…?」
いやいや、夢の中のこいつ怖すぎるだろ!
え、片手で?胸を?

 ん?いや、待て?
待て待て!
この村人…今話したよな?

 言葉を覚えてきてる!?

 「まさか…
おいルプ!こいつ今話したぞ?!」

 「まだ寝ぼけてるんですか?
あり得ません!
もしそれがあり得たら、無魂生命体に魂が生まれたって事ですよ?

はぁ、分かりやすく言えば"物"に心が芽生えたって事です。」

 まさかだ…こんなモブの"物"にも心が?

 それに、まだ1日経ってるかどうかだぞ?飲み込みが早すぎる。
さすが司書職だ。

 どんなに怖い夢も、起きて10分もすれば忘れて気にならないように、俺はあの恐ろしい夢よりも
この村人が言葉を話した事に驚きが持っていかれた。

 ただ、あの夢もすごくリアルで、どこからが夢だったのか分からずなので、軽く村を回ってまた部屋に戻った。
夢の中では色々あったように感じたが、状況は、村へ木こりから帰った時から何も変わっていなかった。

村人は全員無事で、やはり柵が半分ほど無いのでその分を囲わなければ行けない。
だがしかし、今日はもう時間的にすぐに夕方が来てしまう。
つまり、寝過ぎた。

「はぁ、寝過ぎたのか。」
いやそもそも昨日どうやって、木こりから帰ってゾンビの襲撃もなくやり過ごして寝るにいたった?

「ドォーア」
 司書が無いドアを見つめてそう言う。

「はぁ、そうか、それにこの壊れた扉も作らなければ…」

 もう、変な夢を見るわ、村人が話すわ、
見ろよ、普通にドォーアとか言って今やるべき事を教えてくれてるみたいだ…
いや、でもお前の村だろ、扉作るくらいは自分でやれよな…

「あれ?」

 ドア?そうだよ扉が壊れてる…
これはあの昨日のゾンビが…

あれ?じゃあゾンビは確実に来たって事だよな?
それに、よく考えりゃ司書の服。少し赤茶色あかちゃいろよごれている?

この色は血じゃね?

あれは…夢じゃ無かったのか?

 「なぁルプ!昨日何があったんだ?」

 「さぁ、私にも分かりません。ゾンビの襲撃しゅうげきにあったところまでははっきりしていますが、それ以上は私もまるで夢を見ていたかのようです。」

 おいマジかよ、じゃあ俺は一度死んだのか?

 「ルプがそうなるほどなのか…
こんな事あるんだな」

 「バグなどでは?」

 「いくらゲームをモデルにしてると言っても、世界だろ?そんな事あって良いのか?」

 「いえ、あり得ない事です。
ですが、一応データ上には
"ビョウボウ描忘"などと呼ばれる"世界のバグ"というものも都市伝説のような噂話として存在します。」

 「それが起きたと?」

 「可能性は0では無いということです。私ははっきりビョウボウでは無く、"人為的じんいてきに起こされた"バグか何かだと感じます。」

 「そ、そっか、ルプにそう言われるとなおさら不安だな。」
夢っぽい…となると、精神操作か何かか?

 じゃあ俺は本当に死んだ訳じゃ無くて、そう思い込まされていた、ってだけ。
そうじゃなきゃこの村人の説明もつかないしな…
でもそれから言葉を話せるようになってるし、何か関係が?

だけど、ルプはなんでだ?
ルプも同じ攻撃を受けてたって事なら、ルプにも効く精神攻撃って事だ。
それに、俺はすでに"安定"の設定で精神的にどうこうなる事は制御してるはず…
つまり"安定"の設定も効かない程の精神操作?
そんな攻撃を仕掛けて来る相手なら、超手強いぞ…。

 そんな事を考えてる内に空の色はオレンジになる。

「まぁ良い、小さい事は気にするな!」

 「創夢様?小さい事?!」

今考える事はここのドアを作る事と、
柵を作って村を囲い切る事!だ!

 「いや…そっちの方が小さい事かと…」

この転生者モードでどこまで行けるか分からんが、行けるとこまで行ってやる。

 「それはそうですね!」

 そして、ドアの壊されていない
別の家のドアを見る。

この村の家の扉の木は少し黒っぽかった。
「って!この村のドアの木もこれかよ!」
 黒い木。
あの森の塔で見た木と同じ色だ。

ったく、あの森どこだっけー…
どっかで見たよなー、
特殊な木で作りやがって、ちょっと遠出とおでじゃねぇかよ。
 思い出すとすぐにその森に出発した。

 「はぁ、結構歩いた気が…黒っぽい木、といえば、
前この辺で見たんだがなぁー、もう少し奥に入るか…」
そうして時間がないのに少し先の森まで行くしか無かった…。



◽︎第7話用語解説
・無し!


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

トレジャーキッズ

著:剣 恵真/絵・編集:猫宮 りぃ
ファンタジー
だらだらと自堕落な生活から抜け出すきっかけをどこかで望んでいた。 ただ、それだけだったのに…… 自分の存在は何のため? 何のために生きているのか? 世界はどうしてこんなにも理不尽にあふれているのか? 苦悩する子どもと親の物語です。 非日常を体験した、命のやり取りをした、乗り越える困難の中で築かれてゆくのは友情と絆。 まだ見えない『何か』が大切なものだと気づけた。 ※更新は週一・日曜日公開を目標 何かございましたら、Twitterにて問い合わせください。 【1】のみ自費出版販売をしております。 追加で修正しているため、全く同じではありません。 できるだけ剣恵真さんの原文と世界観を崩さないように直しておりますが、もう少しうまいやり方があるようでしたら教えていただけるとありがたいです。(担当:猫宮りぃ)

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...