異世界製作 〜転生しようと思ったら異世界作る側だった〜

寝占 羊

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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」

第6世 「訪問」

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 唸り声は、明らかなゾンビの声に加えて、
 「ハァーン」
 同時に、少し低い村人の様な声もする。

 「ん?なんだ?ゾンビ?村人?」
声のする方をみると、少し先の木陰にまるで日の光が無くなるのを待っているかの様に立っているゾンビと、そのさらに奥、木の奥に、
おのを持ち、背中に大きな旗を掲げる怪しい村人がいた。

 「なんだあれ、ゾンビ…はまぁもうすぐ日が暮れるから活動的になるだろうがよ…
村人?あいつはあんな場所にいて大丈夫なのか?」

 「創夢様お気をつけ下さい。」
するとへルプが忠告した瞬間、奥にいた村人の方が斧を持つ手を高く上げ、こちらに走ってきた。

 「ハァーン!」

 そっち?!いや当たり前か、ゾンビはまだ日があると木陰を出れないもんな…

 その村人はどんどんこちらへ走ってくる。
 「やばいやばいやばい、
なんだあれ!逃げ…」

 「ヴゥー」
逃げようとした時、少し前の木陰こかげに隠れていたゾンビの方がその村人に襲いかかった。
丁度村人が走ってきて、ゾンビのいた木の横を通った時だった。
 「おいおい、どーゆー状況だよ、誰が敵だ?
俺はなんの味方をすれば良い?」

 敵同士が戦う状況に困惑していた。

 「あの村人、コピーいたしますか?」

 「コピー?したらどうなる?」
そもそもあれは村人なのか?

 「もし倒されてももう一度複製が可能です。」

 「分かった、頼んだ、あの形相…
一見は村人に見えても多分敵だろ?

ゲームってそーゆーの好きだもんな…
いつもは味方の奴を敵にするとか。

まぁだから、一生複製しないだろうけど…
とにかく、今がチャンスだよな」

 そう言い、木こりに使っていた斧を握りしめる。

 まぁだが一旦は…

 「とりあえずゾンビを…」

 ん?いや…違うな…
襲いかかったはずのゾンビが斧で斬られて押されてる…
あれを見た感じ、あの村人…ゾンビより強い!

そんで、あの村人は今コピーしたから、いつでも複製できる。
なら、ゾンビに手を取られてる今、先にあいつを倒すべきか…。

 「クソ、役に立つか分からん斧しか無いけど…
悪い村人よ!お前の武器も斧だしなぁ、
正々堂々、決闘と行こうぜ。」

 「ハァーン」

 「正々堂々?圧倒的に向こうが不利な気が…。」

ヘルプの小声のツッコミを聞く事なく、俺は村人に斧で斬りかかる。

 ガシン!ガシン!…

 「ガハァーン!」

 何度か振りかざすだけで簡単に倒せた。
ゾンビは、バランスを崩したのか、腰を落として地面に座り込み、さっきの村人が体に刺した斧を必死に抜き取ろうとしていた。

でもはたから見たらまるでゾンビを救ってるみたいだよな、これ…

 「よし!どうだ!神の力なんて無くても、俺はやる時はやるんだ!」

 「創夢様、特に難しい事してませんよ…

あ、ゾンビにお気を付けて。それと、さっきの村人が持っていた旗。ドロップしたみたいです。落ちてます。」

 感情のこもっていないヘルプの言葉。

 「いや!なにそれ!ヘルプしたくない感凄いんですけど!」

 「ヴゥー」
その時斧が取れたのか、下の方からゾンビが噛みつこうと飛んで来た。
それをギリギリ、間一髪で避ける創夢。

 「うわぁ!あっぶねぇ!」

 「だから、言ってるじゃ無いですか、ゾンビにお気をつけて…。」

 「あぁー、冷たいヘルプだぁ。
で、この村人が落とした旗は、
まぁ持って帰って村人に何なのか聞いてみるか…」

黒い旗…旗の使い道も模様も良く分からない…

 「村人に聞いたところで、村人語分かりませんし…てかそもそも話せませんが…
そうしましょう。」

 創夢に飛びかかろうとしたせいで少し日に当たってしまい、体の1部が燃えて熱がるゾンビ。
創夢は倒した村人が持っていた斧も拾うと、もがくゾンビを見ていた。

 「ヴゥー」
 このゾンビも倒しても良いが、もうどんどん暗くなっていってるし、こいつはきっと数にキリがない。

 「よし、逃げて帰るかぁ…」
そう言うと俺は沈む光とゾンビを背に走って村へ帰った。



俺が村に着くと同時に、村人は全員急いで建物内へ帰って行った。

バタン
バタン
キィーバタン

 なんだ、こいつらもちゃんと危険ってのを分かってる。
柵って案外必要無いのか?

ゲームをやってた時も、怪物に襲われる"可能性"がある。ってだけで、
そこまで村が襲われていた記憶は無いしなぁ…

運みたいなもんか?
さっきはもう攻略を目的として進めるのは諦めようと思ったが…
まだこのまま攻略として続けるのもありだな…

とりあえず、俺もどこかに入らなければ意味が無い

そう思い、広い建物にお邪魔した。

「おじゃましまぁー…

うぉ。
本でいっぱいの部屋だなぁ…」

で…問題は、こーやって部屋の中にいれば、
奴らが来ても大丈夫なのかどうか…

いや…そういや扉は壊されるはずだったよな…

一度村に入られるともうダメか?
それとも敵としてのターゲットをされたらダメなのか?

とりあえず…

 「ヘイ、ルプ!安全な内に、今いる村人全員コピーしてくれ!」

 「了解しました。

コピー完了。全部で10人です。
それから、ルプ…良い名前です。」

よし、一旦はこれで誰が死んでもまた生み出せる。

 「ハァーン。ヘヘン。」

 おじゃました建物に住んでいた村人が騒がしく鳴いていた。

 最近の村人ってこんな変な声も出すんだなぁ…
いや、今までもそうだったか?気のせい…
まぁ実際に聞くのとゲームの中ではそりゃ違いも感じるはずだ。

 そう思いながら村人を眺める。

 でも、なんだ?こいつ。
俺を見てすんげぇ嫌な顔しやがる。
これは気のせいとかじゃ無いな、流石にゲームの仕様だろ。

ほぉ、今の村人はこんな顔まで…
新しい仕様ってすげぇな、凝ってるや…

白っぽい服、メガネに帽子。司書ししょ役職持やくしょくもちか!
いやぁー頭が良いんだろうな、
だからってバカな俺をそんな嫌な顔で見るなよ…

 「ヴゥー」

 その時、ゾンビの声がした。

俺はすぐ声のする方を部屋の中から確認した。

 「あー、来た来た、ゾンビだ!
でも、この声の大きさ?もうそんな近くにいるのか?!」

 「ダァーン、タカァーン」

 「え?」
やっぱなんだこの村人…?
まただ…声の出し方が違ったよな?気のせいじゃないぞ…

 あまりに変な声を出す村人にまた気を取られ村人を見る。やはり嫌な顔をしている。

 「まぁいい、そんなことより今は…」

「ヴゥー!」

 そうしてドアの窓からゾンビの声がする方を見た。

 やばい!ゾンビが村に入って来てる!
もう見える位置にいるぞ…

 村の内側を歩き、ゆっくりとこちらに向かってくるゾンビがいた。

 これはターゲットまでされてる?

やっぱりダメか…囲わないと意味ねぇかぁ…
そう思いながらまた後ろの村人に目をやった。

 「ホン…ハァ…ホン…イヤァ」

 創夢を心から嫌悪した様な顔で、聞いた事の無い声を出す村人。

 もう、さっきから、
この村人が何を訴えかけているのかは分からん。
が、嫌な顔の意味はよく分かった。

 「そっか、だからか、
ごめんなぁ」

「ヴゥー!!」
ゾンビが扉の前まで来た。創夢は部屋側の扉の前に立ちゾンビを見ていた。

 やっぱりだ…
このゾンビ…斧で斬られたような傷跡がある…
きっと俺が木を切りに行ったあの森から連れて帰って来ちまったんだ…。

 あの俺が倒した村人に斧で斬りつけられていた、
あのゾンビだ。あの時からターゲットされてた訳だ。
倒しときゃ良かったな…

そりゃ嫌な顔をされても仕方ない。

 だがどうする?扉が壊されるぞ…
ゾンビはうなりながら、扉にゆっくりとヒビを入れていく。

 その時、ひくづらこえ背後はいごから聞こえる。
 「ふぅ、間に合ったか…

ん?

なんだこの世界は?ずいぶん呑気のんきなもんだな…」

なんだ?後ろで司書ししょがモゴモゴ言ってる…?ような…?
そして、ゆっくり振り返ろうとした時。

ズシャァ!

「ゴフェッ‼︎」
なんだ?何が起きた?

 不意に嘔吐おうとしたように口から流れ出た血が下に落ちる。

ベチャベチャ

そして、
 自分の胸から血だらけの右腕が突き出して伸びているのが見える。
これ…俺の血か?



◽︎第6話用語解説
・コピー
創夢の作った世界であるため、どのジャンルのキャラもいつでも複製が可能だが、すでに生成されているモブをコピーした場合、全く同じモブを複製させる事ができる。
例)コピーしなくともいくらでも村人を生成可能だが、眉毛が特徴的な村人がいたとして、彼をもう一度生成したければ、コピーしなければ生成はできない。
村人→生成可能
眉毛村人→(コピーが無ければ)生成不可

・司書
本や書類などの図書管理をしている村人。
マインドクラフトではエメラルドなどの希少鉱石を対価に手に入れる事が難しい本などを得られる。


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