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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」
第5世 「説明書」
しおりを挟む俺の知ってる情報では…だけど、
マインドクラフトではプレイヤーが村を認知すると夕方現れるゾンビやホネホネなどの怪物に村が襲われる危険性がある。
その為、村を見つければ普通、その日の夜が来るまでに柵などを作り、村を囲い、安全を確保する必要があった。
「俺が作った世界だぞ?
なんで俺が木を切ったりしなきゃならねんだよ。」
近くの森までやって来た。
森なのに自然の恐怖を感じないそこは、木の採集に丁度よかった。
村で見つけた鉄斧を使って木をひたすらに切った。
マインドクラフトで言えばクリエイティブモードの世界でサバイバルしてる様なもんだ。
クリエイティブモードとはまさしく創造者状態と同じ様にプレイヤーが好きなブロックを好きな数、好きに生成し、自由にゲームを進めて行けるモードである。
反してサバイバルモードは、自らアイテムを収集し、ゲームを進めるモードとなる。
あんなに救って欲しそうだった村人も誰1人木こりを手伝いには来ない。
そりゃそうか、"物"だもんな。
ゲームのモブに助けられる方が怖いって話だ。
カコンッ
きっと世界を作るってのにも全ては"才能"がものをいう。
みんな思うだろう、嫌な事があるならそれを回避する設定を創造すれば良い。と。
カコンッ
例えば"村人が手伝う世界"、"敵が居ない世界"を想像して創造すれば良いだろ!と。
カコンッ
だが、それがどれだけ難しい事かを想像して分かってほしい。
世界を作るって事はその世界を構成している元素、まだ人間が解明すらできていない小さな単位や大きな単位まで全てを想像しなければならないという事。その難しさを。
カコンッ
想像したく無い事も想像してしまう程コントロールが難しい脳でそれに挑むのはそれこそカオスの世界が誕生するだろう。
カコンッ
そもそも"人"という"世"にみれば下等生物の"脳"という媒体ではそこまで力を発揮できる訳が無い。
これはまるでファミコンでVRゲームをしたいと言っているようなもんだ。
カコンッ
つまり今の俺に出来る事は、すでに脳内に存在しているマインドクラフトを"元"に本当のマインドクラフトの世界をコピーして作る事だけ。
カコンッ!
そんな事を考えている内に木こりは進み、結構な数の柵も完成させられた。
「よし!良いんじゃないか?この量で1度村を囲ってみるか!」
そう言ってボロボロになった斧を持って村に戻り、柵を並べてみる。
しかし、
「あー、置く位置がダメか?村の外側に広く余裕を持ちすぎちゃったか?
まだ半分も囲えてない」
まだまだ柵の量は足りなかった…
村の鉄斧をまた1つ持ち出すと、もう1度森へ木こりに向かった。
しばらく歩いていると、森が見えてくる。
「よし!着いた着いた!ん?ここか?」
1度目に木こりへ来た森を目指していたのだが、そこはさっきとはまた雰囲気の違う別の森だったようだ。
邪悪な、それこそ自然の恐怖というオーラを醸し出している森だった。
「あれ?俺が木を切りすぎて見た目が変わったとかか?」
なーんか邪悪だけど…とりあえず入るか…
この辺一体は茶色のオークという木が生えている事がほとんどだ。さっきの森もこの森も基本はそのオークが生えている。
しばらくその森の中を歩いていると、周りに立ち並ぶそのオークの木と違い、黒っぽい木を使って作られたのであろう小さい塔のような建物を見つける。
「なんだ、これ…村?ではなさそうだ。」
周りにはその材料と思われる黒い木も数本育っている。
「あれ?こんな黒い木マイクラにあったか?」
なんで俺が知らないものが…。
あぁー、でもそっか…きっと俺は、
自分の知ってる頃のマインドクラフトより進化している方の世界をコピーして作っちゃったんだな…」
いや、何でだよ!記憶に無いのにそんなん作れんのかい!
「あのー…創夢様、柵はお忘れですか?」
「は!そうだ!」
ヘルプの声に目が覚めたように、ここでは無く、もといた森を急いで探した。
一度今いる森を出て少し村の方向へ戻り、岐路を変えて進むと、すぐにもといた森も見つけた。
「はぁー、あったぁ!
見つけたけど…
走ったしお腹すいたな…」
そんな事を呟きながらノロノロ木こりを始める。その森に戻って2本ほど切ったところで、思うよりも早く日が暮れてきた。
「おいおい、まだ2本だぞ
やばいなぁ、言ってる間にもうすぐ夜だぞ!?」
時計が無くても、大体今が何時頃なのかは空の色が分かりやすく教えてくれた。
ただ時間感覚は早く感じる、それがゲームの世界だからなのか、単に自分が木こりに集中しすぎていたからなのかは分からない。
もう今日1日では確実に村を囲いきれない。
その不安がまた創夢の感情を高ぶらせた。しかし、パニックでは無く"安定"の設定により、それらはやはり思考になっていた。
通りで先程から考える事ばかりだ。
どうしよう、村人…。
全ての者が世界を作る、とか言ったのに、
俺が攻略するまで転生者が来ないなら、結局作るのは俺で…
転生者状態でこの世界を攻略するんだろ?…
そうなりゃ村ってのは超プラスな要素だよな?
というか、そもそもいつ、誰がこの世界を審査して、いつ転生者が来る?
その時ってのは分かるのか?
正直、"転生者が人生を全うできるか"どうかなら、すでに条件は満たしてるだろ?
違うか、そんな事に関わらず一度攻略はしなきゃダメなのか…
ダメだ、分からない事が多すぎる…
創夢の思考は止まず、それらはヘルプへの質問となった。
「ハイシリ!まだ転生者はいないんだよな?」
「申し訳ございませんが、そのような事はこちらでは分かりません。
それから…私はヘルプです。
もし名を付けたいようでしたらシリ以外でお願いします。」
「はぁ、なんだ…なんでも教えてくれる訳じゃ無いのか」
「はい、私はあくまで世界に組み込まれた説明書のようなものであり、決まった事以外はお伝えできません。」
「本当にヘルプじゃん…」
もう分かりきってるからって、誰も見ようとしない、あのゲームとかの使えないヘルプと変わらないって事か…
「私は創夢様の心の声も聞こえてます。不満があるようでしたらはっきりとどうぞ」
「はい。すみません。」
ちなみにヘルプは声だけで存在は見えない。
声も脳内に直接語りかけてくる感じだ。実態は無いみたいだが、俺の体を少しコントロールしたり、誰かに触れられた様に"感じさせる"事が出来るようで、
時々「あちらです」とか言いながら首を動かされたり、俺が話を聞いてない時は肩を叩かれる様な感覚がしたりする。
「で、こいつら村人達ってのは何度でも生成できるんだよな?」
「はい、"物"については何度でも生成が可能です。」
だったら別に…
村人が全員ゾンビになろーが、死のうが、村が破壊されようが…
「それなら知ったこっちゃ無い」
「慈悲は無いのですね。はぁ、
"物"でもあなたが生命体を殺さないように、
もう一度忠告しておきますよ?
"完成"と言うのであれば、
いくら生成が可能であっても、創造者状態の力を使えば世界が無効になる可能性がございますので、ご注意を。」
「はいはい、親切にどーも。
それで言うなら、"完成"って事にしなければ良いんだな。そしたら力使い放題。」
「はぁ、こんなやつが世界の神になるのはあの村人達も気の毒ですけど、まぁ好きにしたらいんじゃ無いですか?」
「ん?こ、こんなやつ?
てか、説明書がこんな私情の入った事言うかよ…」
「い、いえ仕事ですから私情は…入ってない…はず…」
前から思ってはいたが、このヘルプは大丈夫なのだろうか…棒読み感もすごいし、まるで自分も世界の事について勉強しながら、手探りで仕事してますって感じがもろに出てる。
でもそうだ、このヘルプの言う通り正直村を守れなければこの先詰みな訳よ。
でも柵は確実にできないし、まぁ俺は攻略できなかったよ…
だからまだ"完成"にしなければ良い。
それで世界の細かい部分をもっとちゃんと作ってから"攻略"にまた臨む。
「ヴゥー」
その時、近くで唸り声がする。
▫︎第5話
・無し!
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