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第一章 「村開拓とモブ対抗戦」
第4世 「もの」
しおりを挟む俺の1番好きだったゲーム…
それは、"マインドクラフト"というゲームだ。
「脳内ノート…想像しただけで世界が作れるんだよな?」
ただの荒野が広がる惑星アンビション。
俺はそこに降り立つと、すぐ"想像"を始め、
正四角形のブロックだけでできた
"あの"世界に似たブロック世界を創造した。
カタカタカタカタ
全てはブロックに置き換わって行く。
目の前の光景には強く感動した。
そして同時に、
この力は、皆が「想像しただけで思った事を叶えられる力!」と夢みるような、簡単なものじゃ無いというのを心のどこかで悟っていた。
りんごの木を1つ想像するだけでも、
脳裏に浮かぶ景色は人それぞれで違い、想像できる範囲や、明確さも個々の能力の差で変わる。
想像力という単語があるように"想像"も1つの人の才能だ。
「おぉ!すげぇぞ!本当に"あの"世界に生きてるみたいだ!」
それでも、そのできた世界はちゃんと俺の想像したそのまんまの世界だった。
一部の妄想の達人を除いて、
人が想像した景色や物なんて、実際にそのまま見ると、近くの葉の繊維や、影の伸び方、などの、
"細かい部分"までは明確じゃ無い。
そもそも人の想像だけでは、
現実に反映できるほどに明確なものは生み出せない訳だ。それを補う為に脳内ノートがある。
つまり、この世界も、
俺の想像した世界そのもの!というよりは、
俺の想像を"元に"脳内ノートの情報を使用し、
マインドクラフトをコピーした世界。と言える。
マインドクラフトはそもそも世界を自作するってゲームだ。
だから最初は、この世界でプレイヤーとして、
ただゲームを遊ぶように世界を作っていけば良い。
いや?そうだ。これが大正解の異世界なんじゃねぇのか?
「世界ってのは1人が作るもんじゃないだろ。そこに生きる全ての"者"が作り出す。」
だから異世界としてはこれで完成だ!もう完成で良いんじゃ無いのか?!
って事で、これにて俺の転生物語も終了!
これで異世界はできたし、後はプレイヤーとなる転生者達を待てば…
「ヘルプです。創夢様。これで終わる気でしょうか?」
あのAIの声だ。
「あ?あー、シリか、
そうだ!だって世界はとりあえず1つ完成しただろ?
なんか、ダメなのか?」
「はい、異世界というのは作れば良いというものではありません。
目的は"転生者が人生を全うできるかどうか"
にあります。つまり、これで完成というのであれば、この世界を自ら攻略し、無事平和に暮らせるという事を証明しなくてはなりません。
ゲームを作った者が一度攻略できるのかを確かめるようにです。」
人生を全うできるか…か。
俺はここに来る前、人生を全うできたのだろうか…
記憶が無けりゃ分から無いが…何か未練がある気がするんだよな…。
こんな非現実の世界見せられたら…もはや俺のいた地球は本当に現世なのだろうか、それすらも怪しく感じる。
宇宙も…地球も異世界で、誰か俺みたいな奴が同じようにして世界作っちまったから"人生を全うできない"俺みたいな奴が転生して来たって考えれば…
確かにこの世界もちゃんと作ってやんねぇとダメか…
なんて思いつつ、そんな地球よりもコミカルでメルヘンなブロックの世界を見て俺は少しバカバカしくなった。
「はぁ?マジか。そんなの聞いてねんだが。
マインドクラフトを攻略…ってつまりどうすれば良い?
ゲームの中でも1番ゴールがわかんねぇゲームなのに。
まさか…スレンダードラゴンを倒す事か?」
「それは分かりませんが、転生者と同じ条件の体になる転生者状態と現在の創造者状態は切り替えが可能です。
"完成"なのであれば、
なるべく転生者状態でお挑みください。」
「なんだ、攻略ってそういうことか?
じゃあこんな神!みたいな力持ってても、
結局"攻略"する時は
転生者モードにならなきゃダメなんだな。
それ死んだりするのか?」
「はい、なお創造者状態の力を使い、その影響でこの世界を攻略したと判断された際は攻略を1からやり直さなければなりません。
そのやり直しさえ断れば世界は無効となります。」
「むこー、かー、
ひぇー、こえー。
はぁーん、そっかぁー、なんだよぉ。」
一気にやる気を失った俺は、だらりと体の力を抜いて村人みたいな変な声を出していた。
するとまるでその声に答えるかのように、後ろから誰かが話に入って来た。
「ハァーン」
「うわぁ!びっくりした!誰だ!」
そうして聞き馴染みのある声に振り返る。
「ハァーン」
そこには、見慣れたブロック姿のおじさんがいた。
そして、おじさんの後ろには当然村もあった。
「えぇぇ!村人だ!」
「ハァーン」
俺は驚き、目を輝かせて言う。
「あの…ファンです…」
「ファーン」
はぁ、生で会えるとは思わなかった…
ゲームの中だけの存在。
それにもう村を発見したってことじゃん。
その興奮のまま色々話しかけた。
だけど、暑苦しい創夢を全て無視して、ゲームの中同様に何も動じない村人。
そんな彼らの考え無しの顔を見ながら思う。
あ?あれ?これって…
言葉伝わってないよな?
っていや…当たり前か…
こいつらには"魂"とかは無いのか?
ゲームの中なら"当たり前"でも、こうやって現実に見ると不思議に感じる。
地球とは違う世界なんだ…仕組みがどうなっているんだろう。
分からない事はすぐ質問だ。
「ハイシリ!こいつら…
い、生きてんだよな?
一応は生命体だろ?どういう位置付けの生命体になる?」
「はい、ヘルプです。彼らのような脳内ノートの複製により生まれた生命体は無魂生命体と呼ばれ、星や、無機物体などと同じ様にあつか…」
俺は険しい顔で村人を見つめながらもう一度聞く。
「あー…
なぁ、頼む、
毎度さ、分かりやすく言ってくれ。」
「ハァーン」
「了解しました。簡潔に言うと、彼らはあなた達で言うところの"物"です。」
「も、物?なるほど…?
ごめん…やっぱり詳しく教えてくれ…」
「はぁ…」
「ハァーン」
その後長ったるい説明を10回以上聞いてやっとなんと無く分かった。
そんな理解力の低い俺の説明だと。
外部からやって来る「魂」、
それがこもったプレイヤー的、"者"と違い、
俺がスマホや惑星を出したのと同じように、
内部で作られただけの"物"になるという事のようだ。
「まぁ何にせよそりゃゲーム同様話が通じない訳だ。」
「ハァーン」
平和そうな顔をしやがる。
どんな状況でもこいつの顔見てたら平和になれそうだな。
「なぁ!シリ!そういえば今の俺は何モードだ?
攻略しなきゃなんねぇから、転生者状態ってのにしてくれ!」
「はい。では切り替えておきます。やる気になったのですね?頑張ってください。」
「おう!スレンダードラゴンなんてすぐだろ!村だってもう見つけたしな。」
「ハァーン」
「あ、てかやっぱ、こいつら見つけちゃったら夜が来る前に村を囲わないと…ダメなんじゃ…」
「フン」
あまり闘志に火の付かない俺も、この時は少しやる気になっていた。
反対に中身の無い適当な返事を返す村人。それを見て答えを返す。
「いや、
でも、まぁ良いか、
村なんていくらでもあるよな、
ここくらいゾンビに襲われても
どっかでまた村見つけれんだろ。」
「ハァァーン」
その返事に、助けを求めるような大きな声で返す村人。
「おー、おー、意味を理解してるみたいな偶然。まぁ分かったよ。そんな声出されるとなぁ…助けてやりますか…
でも、せめて言葉くらいは話せるようになってくれよなぁ…
お前らが話してくれねぇとここから俺ずっと独り言だぞ?悲しすぎんだろ…」
感情も無く、悲しいのか怒ってるのかよく分からないその村人の声に動かされ、すぐ柵を作るための木を切りに向かってやった。
◽︎第4話用語解説
・マインドクラフト
正四角形のブロック素材だけで自由に世界を作っていくゲーム。
・スレンダードラゴン
マインドクラフト内のラスボスとも言える、暗い紫色の鱗に覆われるドラゴン。
・転生者状態
その世界に世界の住人としてその条件内で生きる者。
地球であれば、人として酸素で呼吸し、普通の体で生きる。
とある異世界であれば、エルフとして、魔素で呼吸し、魔法を使える体で生きる。などである。
・創造者状態
その世界を扱う側であり、どんな事でも可能。世界の条件を決める役。
・世界の審査
異世界作成において、これで世界は完成!と決めてから、世界を自ら攻略する、または、攻略できると証明する。など、とにかく転生者の魂を送っても問題無い事を証明できれば、転生者魂を迎え入れ、異世界として認証されるようになる。
・無魂生命体
むこんせいめいたい。は、地球で言う石や鉄などの魂の込められていない"物"と同じ状態なのに、独立して動いたり、生命体と同じ動きや働きをする物の事を言う。
その為、決まった動きを繰り返す事がほとんどであり、その異世界の創造者の予想外の行動を起こす事はほぼあり得ない。
なお、これらに転生者の魂が入る事はあり得るが、異世界の為、転生者以外の魂がこもる事は無く、
まるで魂を持つような行動を起こせば、それは自ら魂をその場で生み出したという奇跡が起きた事になる。
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