ずっとここにいるから

蓮ヶ崎 漣

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光りのドア

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 ふと目を覚ますとそこは何もない真っ暗闇の中だった。
自分に何が起きたのか分からなくて不安になる。
どんなに進んでも真っ暗闇のままで何度千冬ちゃんや蒼を呼んでも返事はなくて。
ここには自分一人だと気付くと不安でしょうがなくなっていると目の前に変なのが現れた。

「どもッス~目を覚ますのが予定より早くてびっくりしたッスよ~」

「お、お前は誰!?」

「オレっちッスか?オレっちは光さんを案内する案内人ッスよ~」

「案内人?」

「そうッス、そうッス!質問には何でも答えるッスよ~」

「……じゃあ、ここはどこなの?」

「あぁ~!ありがちな質問きたッスね!ここはアレッスよ!アレ!」

「アレじゃ分かんないよ!」

「アレはアレッスよ~!えーっと……死後の世界?いや、ちょっと違うッスね……あぁ~!そうッス、そうッス!生と死の狭間って奴ッス!」

「はぁ?」

~ッス五月蝿いし、意味分かんないこと言うしコイツちょっと危ないんじゃ……

そう思ってると案内人が口を開いた。

「あぁ~!信じてないッスね!もうそこまで言うなら証拠見せるッスよ!」

まだ何も言ってない……と思いつつ案内人の行動を大人しく見る。
すると案内人はどこからか大きな鏡を取り出した。

「いいッスか?これをよぉく見てるッスよ!光さんが何でここに来たかが分かるッスから!」

案内人はそう言うと何か呪文のようなものを唱えた。
すると不思議なことにさっきまで自分が映っていたのに別のものが映り始める。
鏡の中には僕が一人で歩いていてその直後、僕が大きなトラックに轢かれた。
そこで鏡は普通の鏡に戻る。

「分かったッスか?光さんはトラックに轢かれてここに来たッスよ」

あぁ、そうか……
いきなり視界が眩しくなったのはトラックのライトのせいで。
体に衝撃が走ったのは僕がトラックに轢かれたせいだったんだ。
周りが騒がしくなったのは僕が事故に遭ったからで……
寝るべきじゃなかったかな……

あのとき、自分に何が起こったかは理解して。
案内人が言ってることも本当っぽくて思わずため息を吐いた。

「ため息なんか吐いてどうしたッスか?幸せが逃げるッスよ?」

「……ここにいる時点で僕はもう不幸せな気がするんだけど」

「そんなことないッスよ~!言ったじゃないッスか!ここは生と死の狭間だって!だからまだ光さんはあの場所に戻れる可能性があるッスよ~!」

「そうなの!?」

「まぁ、ほぼ百%死ぬッスけど」

その言葉を聞いて僕はガクッと滑る。

「上げるか落とすかどっちかにしてよ!」

「いやぁ~……オレっち、死神なんで出会ったからにはよっぽどのことがない限り魂連れて行かなきゃいけないッスよ」

「さっき、案内人って言ってたよね!?」

「あれ?知らないッスか?案内人は全員死神だって」

「知らないよ!!」

「あぁ~そうッスか~まぁ、そう言うことなんでどうするか決めちゃって下さい。オレっちと一緒に来るか死ぬか彷徨うかどれがいいッスか?」

「生きるよ!!殺す方に持ってかないで!」

「えぇ~?光さんって見た目によらず面倒臭いッスね~」

「お前が適当過ぎるんだよ!!」

段々突っ込むのにも疲れてきてコイツの言葉が鬱陶しくなる。

「あぁ~……じゃあ、光さんがここで寝てる間のあっちの様子見せるッス。それ見て結論出して下さい。心の準備はいいッスか?」

「えっ!?ちょっと待っ……」

僕の言葉も聞かずにコイツはさっきの鏡を取り出してその先を見せる。
しばらくすると蒼が僕の傍にやってきた。
何か言ってるみたいだけど分からない。

「ねぇ、これ、言ってる言葉とか聞けない?」

「聞けないッスね。あくまでも見るだけなんで」

そう……と言って続きを見る。
蒼が僕の体に手を置いた直後、何かを叫んでいるみたいで。
それからすぐに千冬ちゃんがやってきた。
千冬ちゃんのすぐ後から聖も……
そこで鏡は元の鏡に戻った。

「さぁ、これで決まったッスか?」

誰の顔も見れなくて。
みんながどんな表情をしながら僕を見たかも分からなかった。

「ねぇ、何でも質問に答えてくれるんだよね?」

「もちろんッスよ!未練なく連れてくのがオレっちたちの仕事ッスから!」

「じゃあ、みんなは僕にどんな表情を向けてたの?」

「あぁ~……それは答えられないッス。企業秘密って言う奴ッス」

「じゃあ、みんなが僕に言った最後の言葉は?」

「それも企業秘密ッスね~」

「じゃあ、何なら答えてくれるの!?」

「あっちのことについては企業秘密なんで答えられないッス。こっちのことについてならいくらでも答えられるッスよ。例えばそうッスね~……こっちに来れば二度と辛い思いや悲しい思いをしなくて済むッスよ!あっちの記憶がなくなるッスからね!あ、もちろん、希望があれば記憶を残すことも可能ッス!でも、その場合はあっちの世界で関わってきた人が辛くて悲しい思いをすることになるッス」

それを聞いて僕は驚く。
選択肢は元から一つしかない。
死んで記憶をなくすこと。
僕がそれを選べば千冬ちゃんも蒼も辛くて悲しい思いをしなくていいんだから……
意を決して顔を上げると誰かに呼ばれた気がして振り向く。
けど、どんなに見回しても耳を澄ませても僕を呼ぶ声なんか聴こえなくて。
僕は口を開く。

「決めたよ。僕は君と一緒に行くことにする」

「それが利口ッスよ!じゃあ、さっさと行くッス!こっちッスよ!」

そう言って歩き出した死神についてこうとすると今度はハッキリと僕を呼ぶ声が聴こえた。
足を止めてもう一度見回す。
すると奥の方に小さいけど光っているドアのようなものを見つけた。
そのドアの向こうから千冬ちゃんや蒼、聖の声まで聴こえてきて。
僕は死神から離れてドアの方へ駆け出す。
それに気付いた死神が叫んだ。

「そうはさせないッス!」

そう言って何かを言っていて。
僕は気にせずドアに向かう。
ドアを掴み開けた瞬間、そのドアは消えてしまった。

「これでもう帰れないッスよ。大人しく来てもらうッス」

僕が愕然としていると千冬ちゃんの声がして消えたはずのドアが再び僕の前に現れる。
それに驚いた死神の隙を見逃さず僕はドアを開けてそのひかりの先に飛び込んだ――――
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