ずっとここにいるから

蓮ヶ崎 漣

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募る不安 蒼視点

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 光が家を飛び出した。
言葉が過ぎたことに後悔する。
あぁ、なんて酷いことを言ったんだろう。
光をめてあげられなかったのが悔しくて。
自分の不甲斐無さを棚に上げて八つ当たりで光を責めた。

光の気持ちは分かってたのに。
謝らなくちゃっ!

そう思って千冬を見上げるが動揺していて全く頼りになりそうもない。
やっぱり、頼れるのは自分だけだ、そう思って光の後を追いかけるように俺も家を飛び出した。

「光ーっ!どこだよーっ!俺が悪かったからっ!戻ってきてくれっ!」

何度も何度も叫ぶが雨の音に掻き消された。
俺も光も毛色は黒いから早く見つけないと気付かれにくくなる。
それで何度も怖い思いをした。
でも、そのたびに光が俺を守ってくれて。
その背中に安心したんだ。
だから、今度は俺が光を守る!

濡れようが声が何度掻き消されようが光を呼んで叫び続けた。
何十分も叫びもう喉がカラカラで声も出なくなりそうになる。
そのとき、事故現場に遭遇した。
俺はまさか……と思いながら辺りを見回す。

大丈夫、光が事故に遭うはずない……

そう思った直後、視界の端に光を見つける。

「光っ!!」

慌てて光に駆け寄ると光は血塗れで横たわっていて今にも死にそうな状態だった。

嘘、だろ……?
俺たちはたった二人の兄弟で。
光はたった一人の俺の大好きな兄貴で……
俺より行動力があるんだ。
運がいいんだ。
そんな光が死ぬはずない。
なぁ、お願いだから目を開けてよ……

そっと光の体に手を置く。

大丈夫、まだ生きてる。
俺が何とかするから。
少しだけ、休んでていいよ。

そう心の中で呟く。
すると俺たちを呼ぶ千冬の声が聴こえた。
最後の声を振り絞るようにありったけの声で泣き叫ぶ。

「千冬!ここだ!光を助けて!!」

俺の声がちゃんと届いたみたいですぐに千冬がやってくる。
後から聖もやってきて光の様子を見た二人は唖然としていた――――
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