魔法学園問題児科

蓮ヶ崎 漣

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問題児様、放課後

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 放課後になり私たちは反省文を書いて担任の先生に提出した。


「はぁー……これから学校の掃除かよーお前ら暇だろ?手伝ってくれよ」


「え?私は別にいいよ。予定もないし」


「……却下。本読みたい」


「菫も手伝っちゃ駄目だよ!楓の自業自得なんだから!」


「杏が周り見てねぇから引っ掛かったんだろー?俺だけのせいじゃねぇし」


「だから!楓が悪戯するのを止めればいいの!」


「ま、まぁまぁ、二人共、喧嘩しないで」


「僕帰るよ。本読みたい」


「桜くんもそんなこと言わずにね?手伝ってあげようよ」


菫がそう言うと桜はため息を吐いて心底嫌そうな顔をした。


「……菫は楓に甘い。杏の言うように掃除する羽目になったのは楓の自業自得だし。楓を手伝った菫にも非はあるし杏も度を過ぎたから二人が手伝うのは分かるけど。僕もそれに巻き込まれる筋合いはないよ」


それを聞いた私たちは大反論。


「桜は俺が仕掛けてるの見てただろ!何が本を読んでて気付かなかっただよ!嘘つくな!」


「なら、桜も止めなかったんだから責任あるじゃない!自分には関係ないなんて都合良すぎじゃないの!?」


「連帯責任って知ってる?桜くんもクラス委員長として責任を取るべきだよ!」


立て続けに責め立てられ桜も流石に反省したのかもう一度ため息を吐いてから口を開いた。


「……わかった。一階は杏、二階は僕、三階は楓、別館は菫が担当して掃除。これでどう?」


「それなら、まぁ……杏ちゃんたちは?」


「私も異論はないかな」


「よし!それで決定!でも、普通に掃除するのはつまらないよなー?あ、じゃあ、こうしようぜ!一番早く掃除が終わった奴が明日一日他の奴らに命令出来る!なんてどうだ?」


楓の提案に私たちはやれやれと呆れながらもそれを承諾する。

じゃないと楓が掃除をサボりかねないからだ。


「よっしゃ!じゃあ、掃除が終わった奴はここに集合な!」


楓は再び職員室に入ると担任の先生を呼び出した。

先生に理由を話すと先生は呆れながら口を開く。


「はぁ?掃除対決するから審判をしろだぁ?言っとくけど先生も暇じゃないんだよ。やることいっぱいあるんだよ。この間どっかの誰かさんが壊した教室の始末書とかどこぞの誰かさんが悪戯した壁の修復とかどこの読書馬鹿が吹っ飛ばした先生のお見舞いとか今日のこととか……」


それを聞いた私たちは一斉に頭を下げる。


「「「「いつもいつもありがとうございます!!」」」」


「橘先生にはいつも感謝しています。本当にありがとうございます」


「もう先生に迷惑かけないよう気を付けるので!!」


「棗先生が担任で本当に嬉しいです!私たちは幸せです!」


「ホント!棗ちゃんには感謝してるから!掃除もすぐ終わらせるからさ!お願いします!」


先生はわかったわかったと言うと私たちを並ばせる。


「みんな、それぞれの担当場所に行け。配置についたのを確認したら合図する。その合図で掃除開始だ」


先生にそう言われ私たちは空を飛んで配置につく。

全員が配置についたと確認すると先生は合図を出した。

合図と同時に私は風魔法を使う。

窓やドアを開けゴミを外に飛ばす。

私のところには昇降口もあるので水魔法も使って掃除する。

桜のところには実験室があり、楓のところには防具や道具が置いてある倉庫が、菫のところには保健室があるのでそこをどうやって綺麗にするかがこの勝負の分かれ目だ。

私は掃除を終えると先生のいる職員室前に急ぐ。

先生のところ行くと反対側から菫が来ていた。

負けるもんかとスピードを上げ先生のところに到着する。

その差はほんの一瞬で私が勝った。


「おー、お疲れさん。勝ったのは杏だな。菫も惜しかったぞ。残るは桜と楓だが……」


私と菫は顔を見合わせた。

今回の勝負は基本的に風魔法を使うので風魔法を得意とする桜が圧倒的に有利だ。

当然桜が勝つと思っていた。

その桜がまだ来ていないと知って菫と二人で内心焦る。

私と菫が到着してから十分が経過したが二人が来る気配はない。

先生はため息を吐きながら口を開いた。


「……悪いがこれ以上はもう付き合い切れない。後は任せた。先生に報告しなくていいから見つけたら掃除が終わり次第帰れ。わかったな?」


先生にそう言われ私は桜のところへ、菫は楓のところに行って様子を見てくることにした。

桜がいるはずの二階に行くとそこはもう掃除が終わっているらしく綺麗だった。

私は周りを見渡しながら実験室の中に入る。

その中もやっぱり掃除は終わっているらしく綺麗だった。

桜はいないと思い実験室から出ようとすると人影が見えた。

慌てて見えた方を向くとそこに桜がいた。

私は少し安心して桜に近付くと桜は魔導書を読んでいた。


なんだ、これを読んでいて来なかったのか……


桜の目の前にまで来たのに桜は私に気付きもしない。

すごく集中しているようで私は仕方なく桜の隣に座る。

横目でじーっと桜を見ているとなんだか恥ずかしくなってくる。

正直、桜は男のくせに美形よりも美人と言うことが似合うほどのイケメンだ。

口数も少ない方なので知的でクールと女子の隠れファンも多い。

噂では一部男子にも人気があるそうだ。

考えたくもないが。

そんな人と同じクラスで今隣に座っていると思うと鼻が高い反面やっぱり恥ずかしい。


誰かに見られたらどうしよう……

桜が誤解されちゃう……


そんな心配をしながら桜が気付くのを待っているとなんかウトウトしてきて。

私は意識を手放した――――



「……ず、……んず」


ん……?

なんか呼ばれているような……?


「杏」


「ひゃあっ!」


いきなり耳元で名前を呼ばれて変な悲鳴と共に飛び起きる。

そんな私を桜は不機嫌そうな目で見ていて。


「……やっと起きた。人の肩勝手に借りて熟睡しといて起こしたら悲鳴って失礼にもほどがあるよね」


「えっ!?あ、ご、ごめん!私、肩借りていた!?って言うか寝ていた!?」


「……十分くらい。いきなり肩が重くなったから見たら杏が寝てた」


「うぅ~……ごめん、桜。そう言えば菫と楓は?」


「楓は倉庫でふざけて遊んでたら生き埋めになったんだってさ。それを菫が見つけて助けたって。で、杏が僕を連れて戻ってこないから二人で様子見に来たら杏が寝ててしばらく起きそうにないから僕に任せて先に帰った」


「起こしてくれてもよかったのに……」


「まだ本読みたかったし。お陰で全部読めたよ」


「えぇっ!?」


「さてと……もう暗いし早く帰ろう。帰る方向同じだし送るよ」


そう言って立ち上がる桜に私は慌てて口を開く。


「えっ!?いいよ!別に!誰かに見られたら桜が誤解されちゃうかもだし!私一人でも大丈夫だから!」


「は?誤解って何?クラスメイトだしどうせ同じ方向なんだからついでに送るって言ってるんだけど」


その言葉に何故か胸がズキッと痛んだけれど気にせずに言葉を続ける。


「いや、ほら、あの、桜のこと好きな子たちに誤解されちゃまずいと思って……」


「どうでもいい。興味ないし。ほら、早く帰るよ」


桜はそう言うと自分の荷物と私の荷物を持って歩き出す。


「あ!待ってよ!桜!」


慌てて桜の後を追う。

私は観念して桜と一緒に帰ることにした。

靴に履き替えて空を飛ぶ。


「もう!桜、強引!こうなったら私が桜を送るんだからね!」


「はぁ?何それ。男としてすごく嫌なんだけど」


「桜の方が私より美人だし!危険があるのはむしろ桜なんじゃないの?」


私がそう言うと桜はデコピンをしてきた。


「いった!」


「馬鹿。杏が僕をどう思おうと勝手だけど杏は間違えなく女なんだからもう少し危機感を持つべきだと思うよ」


私は少し戸惑いながら疑問をぶつける。


「……美人でも可愛くもない私が狙われるの?」


「確かに杏は美人ではないけど僕は杏を可愛いと思うよ」


桜にそう言われ顔が赤くなるのをわかる。

心臓もバクバク五月蝿くて。

桜の顔がまともに見られない。


なんか、私、変かも……

今までこんなことなかったのに。


「そう言えば今回の勝負杏が勝ったんだってね。おめでとう」


「あ、ありがとう」


そう答えるのがやっとでそれ以降は桜に何を言われても曖昧な返事や相づちしか出来なかった。

そうこうしている内に私の家の近くに着いた。

私は慌てて口を開く。


「あ!私の家もうすぐそこだから!もう大丈夫!」


「そう?」


「うん!ありがと!桜!」


「どういたしまして。今日はごめん。それじゃあ、また明日学校で」


「え?あ、う、うん……また明日」


桜が謝ったことに驚いてしばらく呆然としていたら桜が振り返って口を開いた。


「具合悪いなら無理しない方がいいよ。今日はゆっくり休みなね。それじゃあ」


そう言って桜は帰っていった。

私は桜に言われた通り家に帰ってお風呂に入った。

湯船にゆっくり浸かり疲れを取る。

お風呂から上げりすぐ寝ようとベッドに入るが心臓がまだバクバク五月蝿くて中々寝られなかった――――
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