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最終章 満足、とやらをされたらしくて
人間界(2/2)
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母さんの葬式が行われ俺は今の家に一人で暮らすことになった。
それから一ヶ月。
俺は人間界で高校生活を送っている。
満喫、とまではいかないが形式上の友達は増え充実しているとは思う。
いや、嘘だ。
本当は何で俺がここにいるのかさえ理解出来ていない。
朝起きてご飯を食べて学校に行き授業を受け家に帰りご飯を食べ風呂に入って寝ると言うことを機械のように今まで繰り返してきただけだ。
母さんとの約束は果たせていない。
本当はカナが戻れないと言った時点で何となく俺にはもう家族がいないんじゃ、とは思っていた。
実際は少しの間だけど一緒に生活することは出来たけどやっぱり、家族がいなくなることに変わりはなく……
突然俺を召喚した酷い奴のはずなのに何故かカナの言葉を受け入れることはすんなり出来たのはきっと俺が覚えていないだけで確かにカナは俺の両親を助けたんだ。
そのときに俺はカナに会っていて何か話したのかも知れない。
だから、俺はカナを信用したんだ。
そんなことを考えていると自然と涙が零れた。
あぁ、みんなに会いたいな……
出来るなら聖なる庭に帰りたい。
「はっ……無理に決まってるだろ……」
その証拠にやっぱり魔法が使えなかった。
母さんが死んでから一度だけ戻ろうとしたが失敗に終わったのだ。
俺は涙を拭うと再び歩き出す。
すると後ろの方から聞き覚えのある声がした。
思わず足を止めるが声は聞こえない。
「……空耳だろ……そうだよ、アイツらがいる訳がねぇ……ついに幻聴まで聞こえるようになったのか……」
自分に呆れて思わず失笑する。
今度こそ家に帰ろうと歩き出した。
するとまた後ろの方から今度はさっきよりハッキリと聞き覚えのある声がする。
そして、また立ち止まり思わず振り返った。
「シンヤくんっ!!」
「うわっ!?」
いきなり飛びつかれて思わず抱きとめるがバランスを崩し尻餅をつく。
痛いと思いながらも恐る恐る顔を上げると俺の腕の中にはミレイがいた。
「ミレイ……?」
「うん!そうだよ!会いに来たの!ううん!ちょっと違うかな。みんなでシンヤくんを迎えに来たんだよ!」
「え……?」
ミレイの言葉に驚きを隠せずにいると頭上から新たに聞き覚えのある声が聞こえる。
「お元気でしたか?シンヤくん」
「なんて顔してるんだよ。シンヤ」
「……アーシャ……ミラ……何で……」
「何でって……ミレイが言ったでしょ?」
「私たち、シンヤくんを迎えに来たんです」
「は……?迎え?何のために?」
「だって!シンヤくん、全然元気なさそうなんだもん!心配で迎えに来たの!」
「心配……?いや、そもそもどうやって俺のこと知って……」
俺が戸惑っているとミラがミレイを引き剥がす。
「あーんっ!ミラぁ!何で引き剥がすのぉ?」
「ちょっとミレイ邪魔。ちゃんと話が出来ない」
ミレイの首根っこを掴んだままアーシャに預けた。
「実はシンヤを転送した後、カナエールさんが学園長のところに飛び込んでシンヤの様子を見て!!って言うから見てもらったんだって。そしたら、失敗してることが分かって……でも、シンヤの目的のお母さんの元に戻るは達成出来たからシンヤにとっては人間界の方が良いかも知れないってしばらく様子を見ることにしたんだよ。けど、お母さんが亡くなってから毎日毎日機械のように過ごすシンヤを見たミレイが見かねて迎えに行くなんて言い出して……その意見に賛同した僕たちが迎えに来たって訳」
「……そうだったのか……」
「ちなみにカナエールさんたちも知らない。僕たち三人の独断で迎えに来たからね」
「……この世界じゃ魔法が使えないのにどうやって戻るんだよ?」
「シンヤくん。私たち、何の方法もなく迎えになんか来ないですよ」
「そうだよ!ちゃんと一緒に帰れるよ!」
「だから!どうやって!」
思わず大きな声を出す。
ミレイもアーシャも驚いていたがミラだけは平然としていた。
「そんなの簡単だよ。僕が神格を持ってるからね。人間界には名目上観光で来た」
「観光……?って言うか、神格!?」
俺が驚くとミラは勝ち誇ったようにふふんっと鼻を鳴らす。
「そうだよ。だから、シンヤが僕たちと一緒に来たいって言うなら連れて帰れる。でも、先に言っておくと人間界にはシンヤの記憶は消える。例えば……シンヤが今通ってる学校ではシンヤは元からいないことになる。シンヤが今暮らしてる家もそう。誰も住んでいないかもしくは誰か別の人が住んでることになる。それでも良い?」
「……俺の記憶はなくならないのか?」
俺の質問にミラは首を傾げる。
「それはどう言う意味?シンヤが人間界で暮らした記憶はシンヤの中に残るけど……それは消してほしいってこと?もちろん、消してほしいなら消すよ」
「あ、いや……消してほしい訳じゃない。俺の中から母さんたちの記憶が消えるのか不安になっただけだ」
「ふーん?それは大丈夫。人間界には神格を持たないと来れなくなるだけだよ。で?どうするの?シンヤ」
ミラの問いに俺はニッと笑う。
何だか久々に笑った気がする。
「決まってんだろ!人間界での俺の目的は果たした!だから、ミレイたちと戻る……いや、俺も連れて行ってくれ!」
俺の答えに三人が笑って手を差し出してくれた。
その手を取って立ち上がる。
そしてみんなで聖なる庭に戻ると待ちわびていたかのようにカナたちが待っていた。
『お帰り!シンヤ!』
「ただいま!」
俺は笑顔でその輪の中に飛び込んだ。
それから一ヶ月。
俺は人間界で高校生活を送っている。
満喫、とまではいかないが形式上の友達は増え充実しているとは思う。
いや、嘘だ。
本当は何で俺がここにいるのかさえ理解出来ていない。
朝起きてご飯を食べて学校に行き授業を受け家に帰りご飯を食べ風呂に入って寝ると言うことを機械のように今まで繰り返してきただけだ。
母さんとの約束は果たせていない。
本当はカナが戻れないと言った時点で何となく俺にはもう家族がいないんじゃ、とは思っていた。
実際は少しの間だけど一緒に生活することは出来たけどやっぱり、家族がいなくなることに変わりはなく……
突然俺を召喚した酷い奴のはずなのに何故かカナの言葉を受け入れることはすんなり出来たのはきっと俺が覚えていないだけで確かにカナは俺の両親を助けたんだ。
そのときに俺はカナに会っていて何か話したのかも知れない。
だから、俺はカナを信用したんだ。
そんなことを考えていると自然と涙が零れた。
あぁ、みんなに会いたいな……
出来るなら聖なる庭に帰りたい。
「はっ……無理に決まってるだろ……」
その証拠にやっぱり魔法が使えなかった。
母さんが死んでから一度だけ戻ろうとしたが失敗に終わったのだ。
俺は涙を拭うと再び歩き出す。
すると後ろの方から聞き覚えのある声がした。
思わず足を止めるが声は聞こえない。
「……空耳だろ……そうだよ、アイツらがいる訳がねぇ……ついに幻聴まで聞こえるようになったのか……」
自分に呆れて思わず失笑する。
今度こそ家に帰ろうと歩き出した。
するとまた後ろの方から今度はさっきよりハッキリと聞き覚えのある声がする。
そして、また立ち止まり思わず振り返った。
「シンヤくんっ!!」
「うわっ!?」
いきなり飛びつかれて思わず抱きとめるがバランスを崩し尻餅をつく。
痛いと思いながらも恐る恐る顔を上げると俺の腕の中にはミレイがいた。
「ミレイ……?」
「うん!そうだよ!会いに来たの!ううん!ちょっと違うかな。みんなでシンヤくんを迎えに来たんだよ!」
「え……?」
ミレイの言葉に驚きを隠せずにいると頭上から新たに聞き覚えのある声が聞こえる。
「お元気でしたか?シンヤくん」
「なんて顔してるんだよ。シンヤ」
「……アーシャ……ミラ……何で……」
「何でって……ミレイが言ったでしょ?」
「私たち、シンヤくんを迎えに来たんです」
「は……?迎え?何のために?」
「だって!シンヤくん、全然元気なさそうなんだもん!心配で迎えに来たの!」
「心配……?いや、そもそもどうやって俺のこと知って……」
俺が戸惑っているとミラがミレイを引き剥がす。
「あーんっ!ミラぁ!何で引き剥がすのぉ?」
「ちょっとミレイ邪魔。ちゃんと話が出来ない」
ミレイの首根っこを掴んだままアーシャに預けた。
「実はシンヤを転送した後、カナエールさんが学園長のところに飛び込んでシンヤの様子を見て!!って言うから見てもらったんだって。そしたら、失敗してることが分かって……でも、シンヤの目的のお母さんの元に戻るは達成出来たからシンヤにとっては人間界の方が良いかも知れないってしばらく様子を見ることにしたんだよ。けど、お母さんが亡くなってから毎日毎日機械のように過ごすシンヤを見たミレイが見かねて迎えに行くなんて言い出して……その意見に賛同した僕たちが迎えに来たって訳」
「……そうだったのか……」
「ちなみにカナエールさんたちも知らない。僕たち三人の独断で迎えに来たからね」
「……この世界じゃ魔法が使えないのにどうやって戻るんだよ?」
「シンヤくん。私たち、何の方法もなく迎えになんか来ないですよ」
「そうだよ!ちゃんと一緒に帰れるよ!」
「だから!どうやって!」
思わず大きな声を出す。
ミレイもアーシャも驚いていたがミラだけは平然としていた。
「そんなの簡単だよ。僕が神格を持ってるからね。人間界には名目上観光で来た」
「観光……?って言うか、神格!?」
俺が驚くとミラは勝ち誇ったようにふふんっと鼻を鳴らす。
「そうだよ。だから、シンヤが僕たちと一緒に来たいって言うなら連れて帰れる。でも、先に言っておくと人間界にはシンヤの記憶は消える。例えば……シンヤが今通ってる学校ではシンヤは元からいないことになる。シンヤが今暮らしてる家もそう。誰も住んでいないかもしくは誰か別の人が住んでることになる。それでも良い?」
「……俺の記憶はなくならないのか?」
俺の質問にミラは首を傾げる。
「それはどう言う意味?シンヤが人間界で暮らした記憶はシンヤの中に残るけど……それは消してほしいってこと?もちろん、消してほしいなら消すよ」
「あ、いや……消してほしい訳じゃない。俺の中から母さんたちの記憶が消えるのか不安になっただけだ」
「ふーん?それは大丈夫。人間界には神格を持たないと来れなくなるだけだよ。で?どうするの?シンヤ」
ミラの問いに俺はニッと笑う。
何だか久々に笑った気がする。
「決まってんだろ!人間界での俺の目的は果たした!だから、ミレイたちと戻る……いや、俺も連れて行ってくれ!」
俺の答えに三人が笑って手を差し出してくれた。
その手を取って立ち上がる。
そしてみんなで聖なる庭に戻ると待ちわびていたかのようにカナたちが待っていた。
『お帰り!シンヤ!』
「ただいま!」
俺は笑顔でその輪の中に飛び込んだ。
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