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第四章 恋愛、とやらをされたらしくて
両想い(3/3)
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俺は慌てて口を開く。
「な、なーんてな!冗談だよ!冗談!ミレイにとって俺は仲の良い男友達だもんな!分かってるから!」
「…………よ」
「え?」
ミレイが何か言ったが上手く聞き取れずに聞き返す。
僅かな期待に心を躍らせて。
「いいよって言ったの!ちゃんと言葉にしてくれなきゃ嫌だけど……」
そう言われてミレイの手を取ってしっかりと目を見る。
ミレイの目には真剣な顔をしている俺が映っていた。
少し恥ずかしく思いながらも手に入れられるならいくらでも恥ずかしい思いをしてやる。
やっと決心がついて口を開いた。
「ミレイ、俺はミレイが好きだ。だから……」
付き合ってほしい、そう言おうとして言葉を止める。
付き合う?
俺は元の世界に戻るのに?
カナはなんて言ってた?
絆を断ち切る?
それはつまり、記憶には残るってことだよな?
俺の記憶もミレイたちの記憶もなくなる訳じゃない。
そこまで考えて嘲笑が浮かぶ。
俺は何を勘違いしてるんだ?
何でこの世界を満喫してる?
俺はただ元の世界に帰るためにこの世界にいるだけなのに。
何がしたいんだ!俺は!
すごく、最低なことをしてるじゃないか!
「……ヤくん!…ンヤくん!シンヤくん!!」
ミレイの呼び声にハッとして我に返る。
「もう!シンヤくん!中途半端過ぎるよ!」
「あ、あぁ……悪い……」
「それで?続きは?」
「え?」
「だから!続き!私が好きで、だから何なの?」
ミレイが好きで。
だから……
だからこそ……
「付き合ってほしいけど、その前に俺の秘密をミレイにだけ話すよ。それを聞いてからミレイに決めてほしい」
「え?シンヤくんの秘密……?」
そして俺は話し始めた。
俺はこの世界の人間じゃなく人間界から来た人間だと言うこと。
元の世界に戻るために魔法学校に通って転送術を身につけようとしていること。
そのための手伝いをミレイにもしてほしいと思っていること。
仮にミレイと付き合ったとしても元の世界にミレイを連れて行くつもりはないと言うことも全て包み隠さず話す。
それをミレイは驚きながらも黙って聞いてくれた。
「……って訳だから多分、俺と付き合ってくれたとしてもすごく嬉しいけど俺じゃミレイを幸せに出来ないと思う。だから、付き合ってくれなくてもいいんだ!でも、友達のままでいてほしい」
全てを話し終えるとミレイはすぐに俺を睨み付けてくる。
そりゃそうか。
今まで騙してたみたいなもんだもんな……
只でさえ秘密が多かったのにさらにこんな重たい秘密を抱えてたんだ。
怒らない訳がない。
一発や二発殴らせろってなるよな……
俺は殴られる覚悟を決めてグッと歯を食いしばる。
「シンヤくんの馬鹿!!」
そう言ってパチンッと両頬を軽く叩かれた。
俺は拍子抜けして目を開ける。
「シンヤくんの言ってることは正直、信じられないし訳分かんないってなるけど……シンヤくんは嘘吐かないって知ってるから信じるよ。それに私、ミラほど頭良くないから理解してるかも怪しくて……でも、これだけは言わせて?シンヤくんに私の幸せがどうのこうの勝手に決められたくないんだけど!私の幸せは私が決めるの!」
「え?あ、あぁ……悪い……」
「だからね、例え、シンヤくんが元の世界に戻って私と離れ離れになるとしても私はそれまでシンヤくんの傍にいたいと思う。シンヤくんの最後の時まで隣にいるのはミラでもアーシャでもなく私がいい、ううん。私じゃなきゃ嫌だって思うんだ。シンヤくんの秘密を聞いたからこそ思ったよ。それでも、私はシンヤくんの彼女にはなれないの……?」
ミレイの目が潤んできているのが分かる。
俺が握った手を力強く握り返しているのも気付いた。
その手が微かに震えていることも。
好きな相手がこんなに必死に一生懸命勇気を振り絞っているのに俺がそれに答えない訳にはいかない。
俺もミレイの手をギュッと握る。
「!」
「そんなことない。すっげぇ嬉しいよ、ミレイ。俺、一目惚れだったんだ。ミラと勘違いしたけど。入学式初日、ミレイとぶつかったあの時からミレイがずっと好きで。だから、ミレイにそう思ってもらえて本当に嬉しい。だから、これからは俺の彼女として俺の傍にいてほしい。別れるその時まで」
「……うん。うん!私も嬉しいよ!シンヤくん!私、約束するね!シンヤくんの傍にいるって!」
無事にミレイと付き合えることになったがその一部始終をアースに聞かれていたため気まずさと恥ずかしさが襲ってきた。
挙句、アースにお説教を食らう。
アース曰く、ミラとアーシャがこっそり隠れて話を聞こうとしていたようで。
危うく、全員にバレるところだったともう少し周りに気を遣えと怒られた。
ミラはあの時のお返しだとしてもアーシャまでとは思わなかったからアースには感謝せざるを得ない。
まだ、あの二人に言うつもりはないからな……
アースは説教を終えると二人の邪魔をするつもりはないからと先に帰り、俺とミレイは照れながらも途中まで一緒に帰ったのだった――――
「な、なーんてな!冗談だよ!冗談!ミレイにとって俺は仲の良い男友達だもんな!分かってるから!」
「…………よ」
「え?」
ミレイが何か言ったが上手く聞き取れずに聞き返す。
僅かな期待に心を躍らせて。
「いいよって言ったの!ちゃんと言葉にしてくれなきゃ嫌だけど……」
そう言われてミレイの手を取ってしっかりと目を見る。
ミレイの目には真剣な顔をしている俺が映っていた。
少し恥ずかしく思いながらも手に入れられるならいくらでも恥ずかしい思いをしてやる。
やっと決心がついて口を開いた。
「ミレイ、俺はミレイが好きだ。だから……」
付き合ってほしい、そう言おうとして言葉を止める。
付き合う?
俺は元の世界に戻るのに?
カナはなんて言ってた?
絆を断ち切る?
それはつまり、記憶には残るってことだよな?
俺の記憶もミレイたちの記憶もなくなる訳じゃない。
そこまで考えて嘲笑が浮かぶ。
俺は何を勘違いしてるんだ?
何でこの世界を満喫してる?
俺はただ元の世界に帰るためにこの世界にいるだけなのに。
何がしたいんだ!俺は!
すごく、最低なことをしてるじゃないか!
「……ヤくん!…ンヤくん!シンヤくん!!」
ミレイの呼び声にハッとして我に返る。
「もう!シンヤくん!中途半端過ぎるよ!」
「あ、あぁ……悪い……」
「それで?続きは?」
「え?」
「だから!続き!私が好きで、だから何なの?」
ミレイが好きで。
だから……
だからこそ……
「付き合ってほしいけど、その前に俺の秘密をミレイにだけ話すよ。それを聞いてからミレイに決めてほしい」
「え?シンヤくんの秘密……?」
そして俺は話し始めた。
俺はこの世界の人間じゃなく人間界から来た人間だと言うこと。
元の世界に戻るために魔法学校に通って転送術を身につけようとしていること。
そのための手伝いをミレイにもしてほしいと思っていること。
仮にミレイと付き合ったとしても元の世界にミレイを連れて行くつもりはないと言うことも全て包み隠さず話す。
それをミレイは驚きながらも黙って聞いてくれた。
「……って訳だから多分、俺と付き合ってくれたとしてもすごく嬉しいけど俺じゃミレイを幸せに出来ないと思う。だから、付き合ってくれなくてもいいんだ!でも、友達のままでいてほしい」
全てを話し終えるとミレイはすぐに俺を睨み付けてくる。
そりゃそうか。
今まで騙してたみたいなもんだもんな……
只でさえ秘密が多かったのにさらにこんな重たい秘密を抱えてたんだ。
怒らない訳がない。
一発や二発殴らせろってなるよな……
俺は殴られる覚悟を決めてグッと歯を食いしばる。
「シンヤくんの馬鹿!!」
そう言ってパチンッと両頬を軽く叩かれた。
俺は拍子抜けして目を開ける。
「シンヤくんの言ってることは正直、信じられないし訳分かんないってなるけど……シンヤくんは嘘吐かないって知ってるから信じるよ。それに私、ミラほど頭良くないから理解してるかも怪しくて……でも、これだけは言わせて?シンヤくんに私の幸せがどうのこうの勝手に決められたくないんだけど!私の幸せは私が決めるの!」
「え?あ、あぁ……悪い……」
「だからね、例え、シンヤくんが元の世界に戻って私と離れ離れになるとしても私はそれまでシンヤくんの傍にいたいと思う。シンヤくんの最後の時まで隣にいるのはミラでもアーシャでもなく私がいい、ううん。私じゃなきゃ嫌だって思うんだ。シンヤくんの秘密を聞いたからこそ思ったよ。それでも、私はシンヤくんの彼女にはなれないの……?」
ミレイの目が潤んできているのが分かる。
俺が握った手を力強く握り返しているのも気付いた。
その手が微かに震えていることも。
好きな相手がこんなに必死に一生懸命勇気を振り絞っているのに俺がそれに答えない訳にはいかない。
俺もミレイの手をギュッと握る。
「!」
「そんなことない。すっげぇ嬉しいよ、ミレイ。俺、一目惚れだったんだ。ミラと勘違いしたけど。入学式初日、ミレイとぶつかったあの時からミレイがずっと好きで。だから、ミレイにそう思ってもらえて本当に嬉しい。だから、これからは俺の彼女として俺の傍にいてほしい。別れるその時まで」
「……うん。うん!私も嬉しいよ!シンヤくん!私、約束するね!シンヤくんの傍にいるって!」
無事にミレイと付き合えることになったがその一部始終をアースに聞かれていたため気まずさと恥ずかしさが襲ってきた。
挙句、アースにお説教を食らう。
アース曰く、ミラとアーシャがこっそり隠れて話を聞こうとしていたようで。
危うく、全員にバレるところだったともう少し周りに気を遣えと怒られた。
ミラはあの時のお返しだとしてもアーシャまでとは思わなかったからアースには感謝せざるを得ない。
まだ、あの二人に言うつもりはないからな……
アースは説教を終えると二人の邪魔をするつもりはないからと先に帰り、俺とミレイは照れながらも途中まで一緒に帰ったのだった――――
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