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第二章 誤解、とやらをされたらしくて

友情

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 午後の授業が終わった瞬間、俺はミラの肩を掴む。


「ミラ!」


「!?」


ミラは驚きながらも俺の方を向いてくれた。

内心、よかった、とホッとしながら言葉は続けようとするとパシッと手を叩かれる。


「き、気安く触らないで」


そう言うとミラは荷物を持って出て行った。

何が起きたのか分からずただ呆然と立ち尽くす。

周りからはクスクスと言う笑い声が聞こえて。



あぁ、やっぱり駄目だったんだ。

俺には友達は出来ない……



そう思った瞬間、いきなり名前を呼ばれた。


「「シンヤ!」」


ハッと我に返り声の聞こえた方を向くとそこにはファインとアースが立っていて。


「え、何で……」


「何でって……お前を迎えに来たんだよ!何落ち込んでんだ!ほら、早く帰るぞ!」


「話くらいは聞いてあげるよ、シンヤ。ほら早くおいで」


ファインとアースがいい兄ちゃんみたいに見えて思わず泣きそうになる。

それをグッと堪え荷物を持って二人の元に行く。

すると、クラスの誰かがやっぱり、デキてるんだ……と呟いて。

それが引き金となって教室中が騒ぎ出す。


「フォレストールの噂は本当だったんだ!」


「気を付けろ!男はみんな狙われるぞー!」


人間ヒューマン型の考えることは分かんねぇなぁ!」


そんなことを口々に言い出す。

俺が悔しくて唇を噛み締めていると突然教室中にドンッと言うものすごい音が響いた。

その音に驚いてみんなピタリと言葉を止める。

辺りを見回すと教室の壁が凹んでいて手の形までくっきり残っていた。

そして、ファインが口を開く。


「おい。楽しいかよ?」


口調は至って普通だが目は今にも人を殺しそうな目をしていて。

誰も喋らない。


「俺らとシンヤがデキてるだって?笑わせんな!シンヤはなぁ!俺らの兄弟なんだよ!今度変な噂流したり真偽も確かめずにこんな風にからかってみろ?お前ら、全員、消し炭になると思え!」


ファインはそう言うと俺をグイッと引っ張って教室を出る。


「あぁ、もう。これを誰が直すと思ってるんだよ……」


アースがそう言って壁を魔法で修復。

した直後に壊す。


「あ。間違えちゃった。あはは、ごめんね。すぐ直すから」


さっきファインは壁を凹ましただけだがアースは拳が壁を貫通していて。

笑いながら元通りにするアースが怖くてこの二人は怒らせないようにしようと心に誓った。

校門を出るとファインが大声を出す。


「あーあーっ!やりたりねぇ!パンチ一発で治まるかよ!シンヤも何黙ってんだ!ああ言う奴らには言い返してやれ!大抵の奴は言い返せねぇから!」


俺の迎えに来たら騒がれることなんて分かり切ってたはずなのにファインだけじゃなくて当番じゃないアースまで迎えに来てくれて正直嬉しかった。


「シンヤはファインと違って溜め込むタイプだよ。その分、爆発したらものすごく怖いかもね」


「あぁ、アースみたいにか。俺、お前には本気で喧嘩したら勝てる気がしねぇからな」


「……何なら、今喧嘩しても良いんだよ?ファイン」


「俺の話聞いてたか?勝てる気がしねぇ喧嘩なんかする訳ねぇだろ」


「だって、ほら。まだ怒り治まってないでしょ?僕も治まらないからさ、ちょっとボコボコにさせて」


「おい、待てよ。ボコボコにするって言ってんじゃねぇか。シンヤにしろよ」


「えっ!?何で俺なんだよ!?」


まさか自分の名前が出るとは微塵も思っていなかったので驚く。

ファインは知ったこっちゃないと言う感じでそっぽを向いて。

アースは笑顔で口を開いた。

グッと拳を握りしめて俺を見る。


「あぁ、良いかも知れない。シンヤのせいで溜まった怒りだからね。シンヤで晴らすか」


「えっ!?ちょっ、アース!目がマジなんだけど!俺、被害者だよな!?ファインも助けてくれよ!」


「いや、無理。その気になれば地震起こせる奴だぜ?敵う訳ねぇって」


こうなりゃ自棄だ!と思い目を瞑る。


「来い!!」


けど、いつまで経っても痛みはなくて恐る恐る目を開けると二人は笑いながらスタスタと先を歩いていた。


「ま、待てよ!二人とも!置いて行くなって!」


「いやぁ、根性だけはあるよなー」


「確かに。我慢する根性と根気だけはあるね」


やっとの思いで二人に追いつく。


「やっと!追いついた……」


「遅いぞーシンヤ」


「危うく置いて行くところだったよ」


「置いてったのお前たちだから!って言うかさ、何で俺の迎えなんか来たんだよ。からかわれるのなんて分かってただろ?」


「はぁ?」


「何を今更」


俺が首を傾げると二人はフッと笑って口を開いた。


「「友達見捨てて先帰るほど性格捻じ曲がってないんだよ」」


友達と言う言葉を聞いて少しジーンとする。


「それにあんな大勢の前で兄弟って言っちゃったしなー」


「本当、世話のかかる弟だよね」


俺は二人に駆け寄り口を開いた。


「ありがとな!兄ちゃんたち!」


二人はポカンとしていて俺は首を傾げる。

そして、よくよく考えたらファインたちの人間ヒューマン型は家に帰ったら元の小さいサイズに戻るんだった。



それなのに兄ちゃんとか呼ぶのはおかしいか……?

でも、俺よりは長く生きてるだろうし……



うーんと考えているとファインに声をかけられる。


「おい、シンヤ!あんまりボーっとしてっと置いてくぞ!」


「え、あ、待てよ!」


いつの間にか歩き出していた二人に追いつくといきなりファインに頭をわしゃっと掴まれた。


「っ!?」


俺は驚いてアタフタしているとファインはそのままわしゃわしゃと頭を撫でる。

訳が分からずされるがままになっているとファインが俺の頭から手を放す。

やっと解放されたと思ったら今度はアースが頭をポンポンとしてきてますます混乱する。



髪の毛はボサボサにされるわ、結局、ファインはさっさと先に歩くわ、何がしたかったんだ……?



その考えが思いっきり顔に出ていたらしくてアースが耳打ちしてきた。


「ファインは照れてるんだよ。兄呼ばわりされたことないから嬉しくて。もちろん、僕も嬉しいけどね」


それを聞いて納得。

どうやら、兄貴扱いしていいらしい。



そうか、さっきのは照れ隠しって奴か。



俺はクスッと笑い、少し先を歩く二人の後を追う。

追いつくと今度は俺のペースに合わせて歩いてくれた。


「……俺さー、兄ちゃんたちに相談があるんだけど」


二人は話くらいなら聞いてやると言って。

俺は二人にミラとのことを相談した――――
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