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第10話:1年7組 悠里 唯誓(1)
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人は誰しも、自らの未来について、不安を感じてしまう。
幼い頃は、やれ「スポーツ選手になりたい。」、やれ「歌手になりたい。」、やれ「芸人になりたい。」とあれこれ自分の将来について夢を膨らませていたのに、それが気付けば言い様のない、恐怖に似た感情にすげ替わるというのだから不思議なものだ。
例えるなら、ポイント切り替えが全くできず、ブレーキも備えられていないトロッコに乗っていて、超加速で暗黒に包まれた坑道をひたすらに突き進むのを止められない、それに近いのかもと僕は思う。
一体何故、そう感じてしまうのか?
それは、僕達に、未来があるからだ。
先に述べた夢を語っていた頃は10年、20年先の未来なんて全く想像がつかなかった。
だが、小学生、中学生、高校生とそんなに長くはないが生涯において様々なことを経験する内に理解してしまうのだ。
「人生何が起こるか分かったものじゃない。」と。
小学生の間に、親の急な転勤で慣れ親しんだ町と別れることになった。
中学生の間に、突発性の病に罹って一時生死の狭間を彷徨うことになった。
高校生の間に、自分が何の気なしに描いた絵が国が主催するコンクールで金賞を取り、結果何百万単位の賞金を獲得した。
他にも具体例を挙げるとキリがないのでここで割愛させてもらうが、このように人生には、プラスマイナス問わず様々なイベントが起こり得、その度に自分は振り回される。
そうすることを繰り返す内に、先の将来について漠然とした不安を抱いてしまい、幼少の頃に抱いた夢は、霞にでも溶けるかのように掻き消えてしまう。
不安を抱くのも無理はない。
今の時節で言えば、この国では18歳を迎えたら公的に成人、つまり大人の仲間入りを果たす訳だが、その時点でも様々な場数を踏んで、自分がこの先、今までの年数の2倍、3倍以上もの時間を生きていくと思ってしまったら、不安は払拭されすどころか益々肥大化してしまう。
ここまで長ったらしく言ったが、結論として、人生一寸先は闇なのだからくよくよしないで何か起こったらその都度考えればいい、ということである。
自分で言ってるのに、向こう見ずな考えに思ってしまうので、あまり説得力は感じないが・・・
さて、将来について不安を感じてしまうのは、我々が未来を生きるからだと言ったが、では、死者についてはどうだろうか?
死者には、未来がない。
それを生きる前にこの世から消えてしまったので、将来について夢を抱いたり、不安を感じることはない。
そういう風に今まで思っていた。
しかし、今回僕が経験した出来事によって、その考えは“NO”へと変わった。
死者も、死者なりに、我が身の行先について諸々思うことがあるのだ。
それはもしかしたら、今この世を生きる生者よりも大きく、そして複雑で奇跡的な要因でない限り払拭どころか軽減することすらできないの僕は痛感した。
それが今回僕が出会った、自らの将来について不安を持った相談者、悠里 唯誓の件を通しての結論である。
幼い頃は、やれ「スポーツ選手になりたい。」、やれ「歌手になりたい。」、やれ「芸人になりたい。」とあれこれ自分の将来について夢を膨らませていたのに、それが気付けば言い様のない、恐怖に似た感情にすげ替わるというのだから不思議なものだ。
例えるなら、ポイント切り替えが全くできず、ブレーキも備えられていないトロッコに乗っていて、超加速で暗黒に包まれた坑道をひたすらに突き進むのを止められない、それに近いのかもと僕は思う。
一体何故、そう感じてしまうのか?
それは、僕達に、未来があるからだ。
先に述べた夢を語っていた頃は10年、20年先の未来なんて全く想像がつかなかった。
だが、小学生、中学生、高校生とそんなに長くはないが生涯において様々なことを経験する内に理解してしまうのだ。
「人生何が起こるか分かったものじゃない。」と。
小学生の間に、親の急な転勤で慣れ親しんだ町と別れることになった。
中学生の間に、突発性の病に罹って一時生死の狭間を彷徨うことになった。
高校生の間に、自分が何の気なしに描いた絵が国が主催するコンクールで金賞を取り、結果何百万単位の賞金を獲得した。
他にも具体例を挙げるとキリがないのでここで割愛させてもらうが、このように人生には、プラスマイナス問わず様々なイベントが起こり得、その度に自分は振り回される。
そうすることを繰り返す内に、先の将来について漠然とした不安を抱いてしまい、幼少の頃に抱いた夢は、霞にでも溶けるかのように掻き消えてしまう。
不安を抱くのも無理はない。
今の時節で言えば、この国では18歳を迎えたら公的に成人、つまり大人の仲間入りを果たす訳だが、その時点でも様々な場数を踏んで、自分がこの先、今までの年数の2倍、3倍以上もの時間を生きていくと思ってしまったら、不安は払拭されすどころか益々肥大化してしまう。
ここまで長ったらしく言ったが、結論として、人生一寸先は闇なのだからくよくよしないで何か起こったらその都度考えればいい、ということである。
自分で言ってるのに、向こう見ずな考えに思ってしまうので、あまり説得力は感じないが・・・
さて、将来について不安を感じてしまうのは、我々が未来を生きるからだと言ったが、では、死者についてはどうだろうか?
死者には、未来がない。
それを生きる前にこの世から消えてしまったので、将来について夢を抱いたり、不安を感じることはない。
そういう風に今まで思っていた。
しかし、今回僕が経験した出来事によって、その考えは“NO”へと変わった。
死者も、死者なりに、我が身の行先について諸々思うことがあるのだ。
それはもしかしたら、今この世を生きる生者よりも大きく、そして複雑で奇跡的な要因でない限り払拭どころか軽減することすらできないの僕は痛感した。
それが今回僕が出会った、自らの将来について不安を持った相談者、悠里 唯誓の件を通しての結論である。
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