上 下
482 / 514
最終章:無双代行の結末

空中城塞攻略 (終)・崩城

しおりを挟む
敗北の刹那に主であるアクメルとの共醒きょうせいへと至ったキネウラ。

「やっとの思いで勝ちをもぎ取ったというのに・・・このような展開・・・!!」

エリガラードは心から悔しそうに奥歯を噛み締める。

「ふぅむ・・・妙ですね。が起きません。」

キネウラは目を細めて訝しんだ。

女王である彼女は目覚めたのに、働きアリは微動だにしない。

否、のだ。

同じく共醒状態になったヒューゴの精神魔能は、今のキネウラには解除できず、そのせいで彼女の眷族達は未だ仮死状態だった。

「まぁいいでしょう。あのお方の力をお借りすることができたわたくしなら、一人で十分。」

そう言いながらキネウラは、新しく召喚した眷族から大鎌を造り出した。

祖級ディゾン第零位・絶空スペース・リッパー!」

キネウラの大鎌から、アクメルの、空間を切り裂くするな斬撃が振るわれる。

それはつい先程まで自分を追い詰めたトヴィリンに向けて放たれた。

絶対絶命かと思われたその時、ドーラが身を挺して庇い、キネウラの斬撃は彼女の胴を大きく横に切り裂くのみに留まれた。

絶空その魔能なら、一度すでに受けていますよ!!本体マスターにはそれが通りにくいこともご承知です!!」

ドーラはヒューゴに目配せすると、ヒューゴは大きく頷いた。

「共醒者でキネウラを囲って下さい!!それ以外は後方に避難ッッッ!!!」

ミラとの共醒状態になっている乙女の永友とラリーザの6人でキネウラを包囲した。

共醒状態になったキネウラが自分の眷族を動かせないのを見てヒューゴは思った。

と。

ミラはアクメルを打倒するために生まれた調定者エリクセル

彼女のみがアクメルと同じ土俵で戦える。

それは両者の共醒者も然り。

「参りましたね。でしたらから片付けましょうか。祖級ディゾン第零位・石星千堕カウントレス・メテオ。」

キネウラが詠唱すると、空から隕石群が降り注いだ。

エボルでアクメルが見せた数より少なかったが、それでもローマン・ヴェル・ハルド連合軍の空中艦隊の数隻を墜落させるには十分だった。

「コティライ大公!!イーニッド様!!無事ですか!?」

(だっ、大丈夫です!!)

(今のは一体何だったのだ!?)

幸いにも、旗艦には当たっていなかったようだ。

だがいつまで無事かどうか分からない。

一刻も早く勝負を着けなければ・・・!!

「俺が行く!!」

ラリーザが剣に刃を付けてキネウラに踏み込んだ。

両者の目で追えない剣戟が繰り広げられる。

「そこだッッッ!!!」

一瞬の隙を見つけ、ラリーザはキネウラの両腕を斬り飛ばす。

祖級ディゾン第零位・絶対回復アブソリュート・ヒーリング!!」

ラリーザに斬られた両腕が、瞬時に再生した。

「すごい・・・!!傷だけではなく、魔力も回復してしまいました!!これが・・・アド様の治癒魔能・・・。」

感嘆の声を上げたキネウラは、両手を横に広げ、数十匹の働きアリからチャクラムを造った。

従蟻主ワーカー・マスター絶空輪スペース・リッパーチャクラム!!」

絶空スペース・リッパー❞の効果が付与されたチャクラムがミラの友軍に四方八方へと飛んでゆく。

天級ヘヴン第五位・逆転魔能リバース・マジカ!!」

リリーナが咄嗟にチャクラムを元の軍蟻種ハーレンメイルに戻す。

しかし・・・。

「ダメ!!何個か零れたッッッ!!!」

リリーナの魔能が間に合わなかったチャクラムによって、ミラ側の兵士に犠牲者が出てしまった。

「貴様ぁ!!!」

激昂したローランドが、キネウラの頭上にメイスを振り下ろす。

「フフッ・・・。」

「なっ・・・!?!?」

鼻から上が埋没したキネウラが薄気味悪い笑みを浮かべる。

「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

グレースが突撃し、キネウラの腹に剣を突き刺した。

「諦めが悪い方々ですこ・・・ぐはっ!?!?」

ミラ大将がそうなんでなッッッ!!!」

背中側に回ったラリーザに背後を双剣で貫かれ、キネウラは身動きが取れなくなってしまった。

「ヒューゴ今だ!!やれえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」

ヒューゴは高く舞いキネウラの首を捉える。

「分かっていますよね!?わたくしを殺したら・・・!!」

「覚悟の上です!!あなたはもう・・・生かしてはおけないッッッ!!!」

ヒューゴの刃がキネウラの首に当てられたその瞬間・・・。

「あなた達を道連れにできること・・・心より願っております。」

それがキネウラの最期の言葉となった。

キネウラが死んだことにより、全ての軍蟻種ハーレンメイルが死に、空中城塞は土台から崩壊し始めた。

「全員城から離れて下さいッッッ!!!」

ヒューゴの決死の呼びかけにより、総員直ちに、空中城塞からできるだけ遠くに退避した。

しかし、降り注ぐ瓦礫は、逃げる者達を決して逃がすまいとする。

やがて先程までキネウラと戦っていた者達の上から、一際大きな瓦礫が降ってきた。

・・・・・・・。

・・・・・・・。

消失ヴァニシング。」

頭上から降ってきた瓦礫が、突然消え去った。

「あ・・・。」

何とか逃げることができたグレースは、軍蟻種ハーレンメイルの土台があった場所、比較的細かな瓦礫の山に、誰かが立っていることのを見つけた。

やがて土煙が晴れ、その場にいる誰もがその者に釘付けになった。

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「やっ♪」

吸血鬼の救世主。

❝救血の乙女・ミラ❞

全ての戦いに終止符を打つ者は、友に愛らしい笑みを見せた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

処理中です...