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最終章:無双代行の結末

空中城塞攻略㉘・完封

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トリシアが操る死骸の塊に手足と翼をもがれたキネ・ヴァラードは腹から地面に叩きつけられる。

失った部位は焼き払われ、傷口は死骸の巨玉に蓋をされ、再生を防がれた。

巨玉を形成する死骸には、個々でトリシアが宿っており、傷口で抵抗する軍蟻種ハーレンメイルを殺し、その死骸に新しいトリシアが憑依することで、死骸の蓋は大きさを増し、徐々にキネ・ヴァラードの巨体を侵食してゆく。

こうなってはキネウラは、蟻でできた竜の体内で袋のネズミだ。

竜の肉体を捨て、形勢を立て直す以外に残された道はない。

断腸の思いでキネ・ヴァラードの肉体を捨てようとしたキネウラ。

しかし彼女を、死骸の鞭が捕縛した。

「逃ゲレルト思ッタカ?」

頭だけの死骸の顎をガチガチ鳴らしてトリシアがキネウラに告げる。

死骸の鞭はそのままキネウラをキネ・ヴァラードの身体から引きずり出した。

「まさか手ずから外に出してしまうとは・・・!!ご厚意に感謝します!!」

眷族召喚の魔能を使って軍蟻種ハーレンメイルのオスを数匹呼び出し、それから自分が飛ぶための翅を創ろうとするキネウラ。

だがその目論見は、呆気なく阻止される。

「なっ・・・!?!?」

死骸の塊からトヴィリンが飛び出し、キネウラが召喚したオスアリと、彼女の四肢を剣で斬り落とした。

再び軍蟻種ハーレンメイルを召喚しようとするキネウラ。

しかしどういう訳か、魔能を使うことができない。

よく見ると、トヴィリンが手にする剣は、ルイギから戴いたものではなかった。

「その剣・・・!!魔歴書院に所蔵されていた、❝魔能封じの妖剣❞ですか!?!?」

「逃がすもんか!!絶対に・・・!!!」

トヴィリンはキネウラの首を掴むと、イスラルフとヒューゴの許まで投げた。

キネ・ヴァラードの身体を形成していた一匹の軍蟻種ハーレンメイルと一緒に・・・。

「ヒューゴ様イスラルフ様!!お願いしますッッッ!!!」

「其方らの働きに敬意を表す。トヴィリン、トリシア。」

キネウラを奪還しようと、崩れかけのキネ・ヴァラードが迫ってくる。

「ヒューゴ、やれ!」

天級ヘヴン第五位・死の幻バーチャリティ・デス!!」

ヒューゴがイスラルフに魔能を行使し、その効果が彼の持つ軍蟻種ハーレンメイルへと流れ、更にキネ・ヴァラード、そしてキネウラに伝播した。

「うぐっ・・・!?!?」

キネウラは意識を失い、強力な精神魔能を浴びたキネ・ヴァラードは崩れ去り、戦場にいた全ての軍蟻種ハーレンメイルの動きが止まった。

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「おめでとうございます皆様。空中城塞・ヒメールシタデル・・・攻略完了です。」

ヒューゴの言葉を皮切りに、皆から歓声が上がった。

それは、死を体感し、意識を失ったキネウラの耳にも微かに届いていた・・・。




◇◇◇




わたくしの、負け・・・ですか・・・。

もうこれ以上あのお方の・・・アド様のお役に立つことができないのは、残念です。

ですが・・・喜んでおられるのも今の内です。

わたくしの尽力が無くとも、アド様は必ずや悲願を達成することができましょう。

最後に陽の目・・・を見るのはアド様です。

あとはあの方の勝利を信じ、そして託しましょう・・・。

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「何勝手に負けを認めようとしてるんだよ?」

あっ、アド様・・・!?

何もない暗闇で、あのお方のお声が聞こえる。

「僕様はね?自分の夢が叶う瞬間には、お前に隣にいてほしいって思ってんだよ。律儀なお前のことだ。僕様が勝っても、詫びの印として自害でもしようと考えてたんだろ?そんなこと・・・許すと思った?」

でっ、ですが・・・!!

わたくしには、もはや戦う術が・・・。

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「使ってもいいよ。僕様の力。」

え・・・?

「お前は僕様のことを好いている。そして僕様もお前を気に入っている。だったらかな?」

よっ、よろしいのですか・・・?

「お前は僕様のお気に入りだ。遠慮なんかしなくていいよ。長い付き合いだろ?」

・・・・・・・。

・・・・・・・。

勿体なきお慈悲・・・誠に感謝します。

ではお言葉に甘えて、喜んで・・・お使いいたします。




◇◇◇




「ッッッ!!!キネウラが・・・!!!」

エリガラードが突然声を上げ、皆の視線がキネウラに集まる。

意識を失っていたはずのキネウラが、ゆっくりと身体をもたげ始めた。

そして、失った手足を瞬きする間に再生させた。

己の軍蟻種子らを用いずに・・・。

「そんな・・・ウソでしょ・・・。」

エリガラード・・・否。

その場にいた誰もが戦慄した。

立ち上がったキネウラの身体は、赤茶色から白色へと変わっており、スキンヘッドだった頭にはショートカットの頭髪が生え、それはプラチナブロンドに煌めいていた。

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「これがアド様の御力ですか・・・。素晴らしい。」

両掌を見つめるキネウラは、自分の中に確かに感じる主の力の流れに、喜びに震える笑みをした。
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