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最終章:無双代行の結末
空中城塞攻略㉗・影改
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「あの竜の欠片・・・つまり、キネウラが入っている蟻の竜から軍蟻種を一匹でも取ってこれば、こちらの逆転勝利・・・ということですね。」
「ああ。ただし生きたままでな。死骸を持ってきたところで、それとはもうキネウラとの魂の繋がりはない。あくまでも生きた従属種が必要・・・。それが魔能発動の条件だ。」
皆に沈黙が広がる・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「じゃあとっとと捕まえて来ようぜ?いつまでもあんな蟻野郎に構ってヒマなんかねぇ!!」
ラリーザは両手に剣を持ってキネ・ヴァラード目指して駆け出した。
「ラリーザ様!!早まってはいけませんッッッ!!!」
ヒューゴが止めるのを聞かず、ラリーザはキネ・ヴァラードのすぐ足元まで迫った。
「その気色悪ぃ働きアリ頂くぜ!!」
ラリーザが双剣で足の指を構成する軍蟻種を削ぎ落そうとした時だった。
指が縮んで凹み、その穴に無数の毒針がズラリと並んだ。
「なっ・・・!?!?」
毒針の膜がラリーザを包み込む寸前のところで、彼女は回避し、事なきを得た。
「あなた達の策にわたくしが抵抗しないとでもお思いでしたか?キネ・ヴァラードを形作るわたくしの働きアリに触れようものなら・・・命はないと思った方がよろしいですよ?」
竜の身体を使って、キネウラはニヤリと笑った。
向こうが迂闊な動きができないのならば、このまま持久戦に持ち込もうという魂胆らしい。
「俺達が下手に出てるからっていい気になってんじゃねぇぞッッッ!!!」
苛立ちを抑えきれないラリーザは、キネウラに対し怒号は飛ばした。
「手出しがままならず、大きな損傷を与えれる攻撃も出来ずとは・・・憤懣やるかたないな。」
身体の一部をもぎ取れず、相手の守りを打ち破れる一撃も打てないことに、皆が歯がゆい思いをした。
すると・・・。
「私とトリシアに任せてくれませんか?」
トヴィリンが名乗りを上げた。
「あなたが?」
「あの竜の身体から、蟻一匹捕まえてくればいいのですよね?私とトリシアだったら、それが出来るかもしれません。」
「その根拠は?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ありません。ただ・・・そんな気がする・・・と思っただけです。」
文字通りの、根拠のない自信を投げかけるトヴィリンを、イスラルフはじっと見据える。
「人間の娘。エリガラードから聞いたぞ。お前がヘルヴェの亡骸を弔ったようだな?」
「はい。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「手も足も出ない状況よりも、不確かな活路に賭けるのがマシだ。やるだけやってみるが良い。」
「ありがとうございます!!」
トヴィリンは感謝の意を込めて頭を深々と下げ、剣を抜いてキネ・ヴァラードの前に立ちはだかった。
彼女の影から、トリシアが這い出て来る。
「姉貴・・・。」
「ぶっつけ本番で不安なのは解ってるよ。だけど何もできないよりは、まだいいでしょ?トリシアなら・・・きっとできる!!私を信じて、道を開いて!!」
「不安ニナンカナッチャイネェヨ。妹ガ姉ニタヨラレテンダ。ダッタラソレニ、コタエテヤルシカアルメェ。」
「フフッ。ありがと。それじゃあ・・・お願いッッッ!!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「天級第三位・死屍使いの魂宿り・影改ッッッ!!!」
トリシアが詠唱した途端、彼女の身体が霧散し、そこら中に転がる軍蟻種の死骸に宿った。
その直後、軍蟻種の死骸が不定形の塊になって、トヴィリンを包み込んだ。
「ジャア行クゼ!!シッカリ掴マッテロヨッッッ!!!」
軍蟻種の死骸の塊は、蛇のようにのたくり、キネ・ヴァラードに突進する。
「あなた・・・それは反則でしょうよッッッ!!!」
向かってくる死骸の塊に対して、何故かキネ・ヴァラードは戦う意志を持たず逃げ出した。
「どうなってんの!?なんでキネウラは戦おうとしないの!?」
「ッッッ!!!なるほどそういうことか!!」
「どういうことですか?」
驚くリリーナに、イスラルフは語りだした。
「あの蟻の竜の武器は軍蟻種の酸性の毒・・・。だがその毒は、同じ軍蟻種の身体には害が一切ない。あの娘は、おそらくそれを予見して・・・!!」
目をカッと見開き推測するイスラルフだったが、彼にはまだ、分からないことがあった。
「しかしあの娘・・・いや彼奴の影の妹だ。どうやって蟻どもの死骸を操って・・・。」
「それならおおよそ見当が付く。」
「貴様は・・・噂に聞いたヘルヴェの娘か?」
血縁上叔父にあたるイスラルフに、リセは軽く会釈した。
「見当が付くとは?」
「トリシア・・・トヴィリンの影の妹は、父上の亡骸を操っていた奴を、父上の亡骸ごと食ろうた。トリシアの操る魔能はそ奴の魔能じゃった。おそらくトリシアは、その際に・・・。」
リセの考察は正しかった。
エンティをヘルヴェの肉体ごと食らった際に、トリシアは彼女の持っていた魔能を獲得したのだ。
❝影の使魂❞の新たな可能性。
それは・・・影の別人格が魔能を持つ者を取り込んだ場合、その者が扱っていた魔能を使うことができ、魔能の種類によっては、より高度に拡大発動できるというもの。
トヴィリンとトリシアは、漠然としたイメージでそこに至り、キネウラを臆させることができたのだ。
「地上では分が悪いですね!!こうなったら・・・!!」
キネ・ヴァラードは翼を使って空に逃げようとした。
「トリシア!!」
「アイヨ!!逃ガスカッッッ!!!」
軍蟻種の細長い塊が二又に分かれ、先端に鋭利は刃を形成し、キネ・ヴァラードの腕と足、そして翼を斬り飛ばした。
すかさずそれぞれの部位から新しいキネ・ヴァラードが生まれないようにヘルヴェから獲得した冥府の炎で滅却し、本体の方も部位が再生しないように、トリシアの一部が宿った軍蟻種の死骸でできた肉玉を飛ばし、断面にしっかり蓋をした。
「ああ。ただし生きたままでな。死骸を持ってきたところで、それとはもうキネウラとの魂の繋がりはない。あくまでも生きた従属種が必要・・・。それが魔能発動の条件だ。」
皆に沈黙が広がる・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「じゃあとっとと捕まえて来ようぜ?いつまでもあんな蟻野郎に構ってヒマなんかねぇ!!」
ラリーザは両手に剣を持ってキネ・ヴァラード目指して駆け出した。
「ラリーザ様!!早まってはいけませんッッッ!!!」
ヒューゴが止めるのを聞かず、ラリーザはキネ・ヴァラードのすぐ足元まで迫った。
「その気色悪ぃ働きアリ頂くぜ!!」
ラリーザが双剣で足の指を構成する軍蟻種を削ぎ落そうとした時だった。
指が縮んで凹み、その穴に無数の毒針がズラリと並んだ。
「なっ・・・!?!?」
毒針の膜がラリーザを包み込む寸前のところで、彼女は回避し、事なきを得た。
「あなた達の策にわたくしが抵抗しないとでもお思いでしたか?キネ・ヴァラードを形作るわたくしの働きアリに触れようものなら・・・命はないと思った方がよろしいですよ?」
竜の身体を使って、キネウラはニヤリと笑った。
向こうが迂闊な動きができないのならば、このまま持久戦に持ち込もうという魂胆らしい。
「俺達が下手に出てるからっていい気になってんじゃねぇぞッッッ!!!」
苛立ちを抑えきれないラリーザは、キネウラに対し怒号は飛ばした。
「手出しがままならず、大きな損傷を与えれる攻撃も出来ずとは・・・憤懣やるかたないな。」
身体の一部をもぎ取れず、相手の守りを打ち破れる一撃も打てないことに、皆が歯がゆい思いをした。
すると・・・。
「私とトリシアに任せてくれませんか?」
トヴィリンが名乗りを上げた。
「あなたが?」
「あの竜の身体から、蟻一匹捕まえてくればいいのですよね?私とトリシアだったら、それが出来るかもしれません。」
「その根拠は?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ありません。ただ・・・そんな気がする・・・と思っただけです。」
文字通りの、根拠のない自信を投げかけるトヴィリンを、イスラルフはじっと見据える。
「人間の娘。エリガラードから聞いたぞ。お前がヘルヴェの亡骸を弔ったようだな?」
「はい。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「手も足も出ない状況よりも、不確かな活路に賭けるのがマシだ。やるだけやってみるが良い。」
「ありがとうございます!!」
トヴィリンは感謝の意を込めて頭を深々と下げ、剣を抜いてキネ・ヴァラードの前に立ちはだかった。
彼女の影から、トリシアが這い出て来る。
「姉貴・・・。」
「ぶっつけ本番で不安なのは解ってるよ。だけど何もできないよりは、まだいいでしょ?トリシアなら・・・きっとできる!!私を信じて、道を開いて!!」
「不安ニナンカナッチャイネェヨ。妹ガ姉ニタヨラレテンダ。ダッタラソレニ、コタエテヤルシカアルメェ。」
「フフッ。ありがと。それじゃあ・・・お願いッッッ!!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「天級第三位・死屍使いの魂宿り・影改ッッッ!!!」
トリシアが詠唱した途端、彼女の身体が霧散し、そこら中に転がる軍蟻種の死骸に宿った。
その直後、軍蟻種の死骸が不定形の塊になって、トヴィリンを包み込んだ。
「ジャア行クゼ!!シッカリ掴マッテロヨッッッ!!!」
軍蟻種の死骸の塊は、蛇のようにのたくり、キネ・ヴァラードに突進する。
「あなた・・・それは反則でしょうよッッッ!!!」
向かってくる死骸の塊に対して、何故かキネ・ヴァラードは戦う意志を持たず逃げ出した。
「どうなってんの!?なんでキネウラは戦おうとしないの!?」
「ッッッ!!!なるほどそういうことか!!」
「どういうことですか?」
驚くリリーナに、イスラルフは語りだした。
「あの蟻の竜の武器は軍蟻種の酸性の毒・・・。だがその毒は、同じ軍蟻種の身体には害が一切ない。あの娘は、おそらくそれを予見して・・・!!」
目をカッと見開き推測するイスラルフだったが、彼にはまだ、分からないことがあった。
「しかしあの娘・・・いや彼奴の影の妹だ。どうやって蟻どもの死骸を操って・・・。」
「それならおおよそ見当が付く。」
「貴様は・・・噂に聞いたヘルヴェの娘か?」
血縁上叔父にあたるイスラルフに、リセは軽く会釈した。
「見当が付くとは?」
「トリシア・・・トヴィリンの影の妹は、父上の亡骸を操っていた奴を、父上の亡骸ごと食ろうた。トリシアの操る魔能はそ奴の魔能じゃった。おそらくトリシアは、その際に・・・。」
リセの考察は正しかった。
エンティをヘルヴェの肉体ごと食らった際に、トリシアは彼女の持っていた魔能を獲得したのだ。
❝影の使魂❞の新たな可能性。
それは・・・影の別人格が魔能を持つ者を取り込んだ場合、その者が扱っていた魔能を使うことができ、魔能の種類によっては、より高度に拡大発動できるというもの。
トヴィリンとトリシアは、漠然としたイメージでそこに至り、キネウラを臆させることができたのだ。
「地上では分が悪いですね!!こうなったら・・・!!」
キネ・ヴァラードは翼を使って空に逃げようとした。
「トリシア!!」
「アイヨ!!逃ガスカッッッ!!!」
軍蟻種の細長い塊が二又に分かれ、先端に鋭利は刃を形成し、キネ・ヴァラードの腕と足、そして翼を斬り飛ばした。
すかさずそれぞれの部位から新しいキネ・ヴァラードが生まれないようにヘルヴェから獲得した冥府の炎で滅却し、本体の方も部位が再生しないように、トリシアの一部が宿った軍蟻種の死骸でできた肉玉を飛ばし、断面にしっかり蓋をした。
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