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最終章:無双代行の結末
空中城塞攻略⑮・奥射
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グレースとノイエフとの間には、生半可ではない覚悟や決意をも以ってしても埋まらない明確な力の差が存在していた。
両者の実力の壁は、先の第二次ミラ討伐戦において、グレースがノイエフを敗北寸前まで追い込んだ時から既に決していた。
尚且つ今のグレースには、共醒によるミラからの力の流入があるため、実力差を埋めることは、最早不可能。
だがしかしノイエフには、それを一切無視できる必中必殺の絶技が手持ちにある。
❝天級第三位魔能・叛因果の絶矢。❞
因果を捻じ曲げ、弓を構えた時点で矢が敵に命中している運命が決定付けられている、弓手にとってまさに究極の技。
言わずもがなノイエフは、この魔能で黎明の開手の裏切り者である義理の姉を殺し、最大の怨敵たるミラをも一時的に殺した。
だが、魔能の行使には膨大な魔力を消費し、弓を構えるまではおよそ30秒の時間を有する必要があり、その間にノイエフは完全な無防備状態になる。
それくらいの時間があれば、グレースが先制攻撃を仕掛け、ノイエフの敗北が決定するには十分だ。
グレースもノイエフのこの魔能の危険性を重々理解しているため、魔能行使の段階に移った時点でカウンターを行なうだろう。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
だがノイエフはこの弱点を、既に克服していた。
「ッッッ!!!」
グレースは驚いた。
なんとノイエフが、手にしていた双剣を捨て、素手のまま自分に向かってきたからだ。
グレースは困惑するが、それと同時に油断していた。
相手は武器を一切持っていないのだ。
ならば慢心し、そこから隙が生じてしまうのは当然のこと。
ノイエフはそれを見逃さなかった。
ノイエフは右手でグレースの脇腹辺りに触れ、そのまま彼女の奥で転がっている自分の弓の許で駆けこんだ。
弓を手にするや否や、ノイエフは矢をつがえ、グレースへと向けた。
「祖級第零位・裁的の射手!!」
詠唱とともにノイエフは一発の矢を放った。
グレースは剣でそれを弾こうとしたが、信じられないことが起こった。
なんとノイエフの矢が剣をすり抜けたのだ。
ノイエフの矢はそのまま・・・彼が先程触れたグレースの脇腹に命中した。
「がはっ・・・!?」
生命活動に必要な臓器を射貫いてしまったらしく、グレースは矢が刺さった腹を押さえて片膝を付いた。
「ぶっつけでやったがしっかり効いたな。俺の新しい必中の一矢。」
「なっ、何ですって・・・?」
ノイエフの編み出したオリジナル魔能。
❝祖級第零位・裁的の射手❞
魔腕となった利き手で触れた部分に目に見えない的を刻み、放った矢がその的を射貫くことを決定付けることができる。
ベースとなったのは勿論、これまでノイエフの必殺魔能だった、❝叛因果の絶矢❞だ。
これなら魔力の消費量も抑えられ、魔能の行使が完結するまでの無防備状態も無くすことができる。
ただし発動には、必ず的を刻む部分に触れなければならず、放った矢が防御魔能で防がれれば意味がない。
グレースが魔能ではなく、通常の剣撃で矢を防ごうとしたことにも、ノイエフにとっては運が良かった。
「天級第五位・雨矢の鉄槌!!」
ノイエフが天井に矢を放つと、鮮やかな弧を描き、落下していく直前に何千本もの数に一瞬で増殖した。
あれは天級魔能。
グレースがミラからもらっている攻撃無効を貫通してしまう。
今のグレースは、痛みのせいで集中力が低下しており、回避することも防御魔能を展開することもできない。
急いで脇腹に刺さった矢を抜こうとするが、深々と突き刺さってしまったせいで、中々引き抜くことができない。
無理に抜こうとすると、臓物まで引きずり出されそうな激しい痛みが全身を駆け抜け、苦痛に満ちた声を思わず上げる。
「結局お前とミラの絆なんか俺の復讐心に勝てないんだよ。」
勝利を確信したノイエフが勝ち誇った顔をグレースに見せつける。
「私は・・・まだ・・・!!」
「いい加減諦めろ。俺の勝ちだ。お前はここで・・・死ぬ。ざまあみろ!!くははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
復讐の一歩を成し遂げ、歓喜の笑いをノイエフがするとともに、幾千本もの矢がグレースに降り注いだ。
両者の実力の壁は、先の第二次ミラ討伐戦において、グレースがノイエフを敗北寸前まで追い込んだ時から既に決していた。
尚且つ今のグレースには、共醒によるミラからの力の流入があるため、実力差を埋めることは、最早不可能。
だがしかしノイエフには、それを一切無視できる必中必殺の絶技が手持ちにある。
❝天級第三位魔能・叛因果の絶矢。❞
因果を捻じ曲げ、弓を構えた時点で矢が敵に命中している運命が決定付けられている、弓手にとってまさに究極の技。
言わずもがなノイエフは、この魔能で黎明の開手の裏切り者である義理の姉を殺し、最大の怨敵たるミラをも一時的に殺した。
だが、魔能の行使には膨大な魔力を消費し、弓を構えるまではおよそ30秒の時間を有する必要があり、その間にノイエフは完全な無防備状態になる。
それくらいの時間があれば、グレースが先制攻撃を仕掛け、ノイエフの敗北が決定するには十分だ。
グレースもノイエフのこの魔能の危険性を重々理解しているため、魔能行使の段階に移った時点でカウンターを行なうだろう。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
だがノイエフはこの弱点を、既に克服していた。
「ッッッ!!!」
グレースは驚いた。
なんとノイエフが、手にしていた双剣を捨て、素手のまま自分に向かってきたからだ。
グレースは困惑するが、それと同時に油断していた。
相手は武器を一切持っていないのだ。
ならば慢心し、そこから隙が生じてしまうのは当然のこと。
ノイエフはそれを見逃さなかった。
ノイエフは右手でグレースの脇腹辺りに触れ、そのまま彼女の奥で転がっている自分の弓の許で駆けこんだ。
弓を手にするや否や、ノイエフは矢をつがえ、グレースへと向けた。
「祖級第零位・裁的の射手!!」
詠唱とともにノイエフは一発の矢を放った。
グレースは剣でそれを弾こうとしたが、信じられないことが起こった。
なんとノイエフの矢が剣をすり抜けたのだ。
ノイエフの矢はそのまま・・・彼が先程触れたグレースの脇腹に命中した。
「がはっ・・・!?」
生命活動に必要な臓器を射貫いてしまったらしく、グレースは矢が刺さった腹を押さえて片膝を付いた。
「ぶっつけでやったがしっかり効いたな。俺の新しい必中の一矢。」
「なっ、何ですって・・・?」
ノイエフの編み出したオリジナル魔能。
❝祖級第零位・裁的の射手❞
魔腕となった利き手で触れた部分に目に見えない的を刻み、放った矢がその的を射貫くことを決定付けることができる。
ベースとなったのは勿論、これまでノイエフの必殺魔能だった、❝叛因果の絶矢❞だ。
これなら魔力の消費量も抑えられ、魔能の行使が完結するまでの無防備状態も無くすことができる。
ただし発動には、必ず的を刻む部分に触れなければならず、放った矢が防御魔能で防がれれば意味がない。
グレースが魔能ではなく、通常の剣撃で矢を防ごうとしたことにも、ノイエフにとっては運が良かった。
「天級第五位・雨矢の鉄槌!!」
ノイエフが天井に矢を放つと、鮮やかな弧を描き、落下していく直前に何千本もの数に一瞬で増殖した。
あれは天級魔能。
グレースがミラからもらっている攻撃無効を貫通してしまう。
今のグレースは、痛みのせいで集中力が低下しており、回避することも防御魔能を展開することもできない。
急いで脇腹に刺さった矢を抜こうとするが、深々と突き刺さってしまったせいで、中々引き抜くことができない。
無理に抜こうとすると、臓物まで引きずり出されそうな激しい痛みが全身を駆け抜け、苦痛に満ちた声を思わず上げる。
「結局お前とミラの絆なんか俺の復讐心に勝てないんだよ。」
勝利を確信したノイエフが勝ち誇った顔をグレースに見せつける。
「私は・・・まだ・・・!!」
「いい加減諦めろ。俺の勝ちだ。お前はここで・・・死ぬ。ざまあみろ!!くははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
復讐の一歩を成し遂げ、歓喜の笑いをノイエフがするとともに、幾千本もの矢がグレースに降り注いだ。
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