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最終章:無双代行の結末
オルテストの戦い⑲・二戦決着局面
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「急に大きな声で喚きおって・・・!!」
「魂を発見されたのと、その付近に一撃を与えられて驚きと痛みが同時に来たのでしょう。それにしても、あなたでもビックリすることはあるのですね。」
滞空しながら耳を塞ぐスドラの挙動に、エリガラードは「ププッ・・・!」と笑った。
「なんか・・・可愛らしい・・・ですねぇ・・・♪」
「たっ、戯けが!!我を誰だと思うておる!?今のはあまりにも耳障りだっただけだ!!決して驚いてなどおらぬッッッ!!!」
「はいはい。ではそういうことにしておきましょう♪」
「ニヤニヤしおって・・・!!本当に分かっておろうなぁ!?」
「勿論ですよ?そんなことよりいいのですか?ルクイヴ、相当焦ってますよ?」
「むっ・・・!!」
見ると四方八方から、今までの比ではないくらいの黒いインクが染み出ていた。
「つまらぬ話はこれまでにしておいた方が良いな!!ゆくぞ!!エリガラード!!」
「分かりました。」
エリガラードが凍結魔能で溢れ出るインクを固め、スドラがそれを破壊する。
「してスドラ。魂のある階層まで辿り着いたのはいいですが、ここから先はどうしますか?」
「奴の魂が張り巡らしている白い管があろだろう!?おそらくアレが、奴の魂とこの空間との繋がり!!アレを全て断ち切れば、奴の魂をこの空間から切り離すことができようッッッ!!!」
「全て断ち切るって、何本あると思っているのですか?」
「無謀が過ぎるがそれしか方法はない!!打って出るぞッッッ!!!」
「はぁ・・・。こんな出たとこ勝負、竜種との戦争以来ですよ。」
「ならいいではないか!?昔を思い出すだろう!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「それもそうですね!!」
スドラとエリガラードは覚悟を決め、ルクイヴの魂に向かっていった。
「そぉうれッッッ!!!それそれ!!」
「地級第一位・氷結晶の弾花。」
スドラは爪や牙で裂き、エリガラードは弾ける氷の刺々しい花を複数個設置して、白い管を破壊してゆく。
「3分の1・・・といったところでしょうか?」
「このまま押し切ればいずれ・・・ッッッ!!!」
突然ルクイヴの魂に歯が剥き出しになった口が『ボコッ!!』と複数浮かび上がり、そこから黒い霧が一気に放出された。
何か不吉な気配を察知したエリガラードが、すかさずスドラの周りに氷の防壁を展開する。
「大丈夫ですか!?」
「ああ。だが今のは一体・・・。」
「スドラ!!腕!!」
見るとスドラの下左腕が、モノクロになっており、それが侵食するかのように上に伸びているではないか。
スドラは慌ててモノクロになった腕を自切して、新しく生やす。
「魂の口が吐いた黒い霧・・・。あれにも液体と同じく、触れたり吸ったりした者を記録に変える力があるようですね。」
「ここぞと時に迂闊に近寄れぬとは・・・!!」
ルクイヴの魂に付いた口が、歯をガチガチとさせて震える。
「奴め・・・嗤っておる・・・!!」
「❝近づけるものなら近づいてみろ。❞とでも言いたいのですね。」
「どこまでも狡い奴だ。良かろう・・・。その高慢の魂の性根、文字通り全部断ち切ってやるわ!」
「私もです。小馬鹿にしてくれたツケ、まとめて払ってもらわなくては・・・。」
◇◇◇
『「ルクイヴ様の魂を、アイツ等見つけ・・・!?」』
「よそ見をするでないぞ。」
「え・・・がふっ!?!?」
リセはエンティの頭を鷲掴みにすると、そのまま塔に沿って飛び立った。
エンティ・・・もとい彼女が憑いているヘルヴェの頭がゴリゴリと削られる感触がリセの腕に伝わる。
塔の最上階まで到達すると、リセは掴んだエンティの頭を勢いよく放り投げた。
街並みを破壊しながら、エンティは塔からだいぶ距離が離れた場所まで吹っ飛んだ。
『「痛ったぁ~!ひどいよリセ姉ちゃん~。」』
身体を再生させながら、エンティはゆっくり立ち上がる。
『「でも残念だったね。リセ姉ちゃんには、私は殺せない。」』
「当然だ。」
『「は?」』
「言ったであろう?魔族に冥府の魔能は効かぬと。お前は魂こそ人間であるが父上・・・冥王ヘルヴェという最高位の魔族の肉体を殻にしておる。つまり、お前に妾は殺せない。その逆も然り・・・ということだ。」
『「話が早いじゃん。で?それでどうするの?意味ない殺し合いをやって、時間稼ぎでもする?」』
「いや。そのつもりなど毛頭ない。」
『「え?」』
「殻で守られているのであらば、それごと燃やし尽くせば良いこと。この国の人間どもは城門の反対側に避難させているのは知っておる。まだ分からんのか?最初の位置に戻っておることを?」
見ると初めに戦った場所、つまり避難民がいる反対側に自分達は今いる。
『「なっ、何をするつもり?」』
「簡単なことよ。ただ一歩踏み出すだけだ。」
腹を括ったリセはそっと目を閉じ、意識を集中させ、かの魔能を詠唱する。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「天級第一位・冥王の降臨。」
次の瞬間、巨大な漆黒の火柱が上がり、リセの角、翼脚、尾は冥府の炎を帯びた。
「はっ、ははっ・・・!!まさか・・・上手くいくとは!!」
自分の手の平を見つめて、リセは喜びに震えた。
❝天級第一位魔能・冥王の降臨は、行使すると強大な力を得る代わりに理性を無くしてしまい、破壊の限りを尽くしてしまう禁忌の魔能。
だが、それは魔族以外の種族が使えばの話。
高位の魔族、つまり冥王ヘルヴェと血統が近ければ、理性を失わず、魔能の中断もできる。
これまでのリセは、冥王の娘でありながら、この魔能を使いこなすのに少々難があり、失敗する度に父であるヘルヴェに止められ、行使を躊躇った。
正直この局面でも、成功するかは五分五分だった。
しかし、二度に渡る復活を通じて、魔族として悟りの極致へと至ったリセは見事、父から授かったかの魔能を使いこなすことが成った。
手の平を上にし、親指以外を曲げて、リセはエンティを挑発した。
「来い。お前に魔族の本懐・・・とくと見せてやろう。」
「魂を発見されたのと、その付近に一撃を与えられて驚きと痛みが同時に来たのでしょう。それにしても、あなたでもビックリすることはあるのですね。」
滞空しながら耳を塞ぐスドラの挙動に、エリガラードは「ププッ・・・!」と笑った。
「なんか・・・可愛らしい・・・ですねぇ・・・♪」
「たっ、戯けが!!我を誰だと思うておる!?今のはあまりにも耳障りだっただけだ!!決して驚いてなどおらぬッッッ!!!」
「はいはい。ではそういうことにしておきましょう♪」
「ニヤニヤしおって・・・!!本当に分かっておろうなぁ!?」
「勿論ですよ?そんなことよりいいのですか?ルクイヴ、相当焦ってますよ?」
「むっ・・・!!」
見ると四方八方から、今までの比ではないくらいの黒いインクが染み出ていた。
「つまらぬ話はこれまでにしておいた方が良いな!!ゆくぞ!!エリガラード!!」
「分かりました。」
エリガラードが凍結魔能で溢れ出るインクを固め、スドラがそれを破壊する。
「してスドラ。魂のある階層まで辿り着いたのはいいですが、ここから先はどうしますか?」
「奴の魂が張り巡らしている白い管があろだろう!?おそらくアレが、奴の魂とこの空間との繋がり!!アレを全て断ち切れば、奴の魂をこの空間から切り離すことができようッッッ!!!」
「全て断ち切るって、何本あると思っているのですか?」
「無謀が過ぎるがそれしか方法はない!!打って出るぞッッッ!!!」
「はぁ・・・。こんな出たとこ勝負、竜種との戦争以来ですよ。」
「ならいいではないか!?昔を思い出すだろう!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「それもそうですね!!」
スドラとエリガラードは覚悟を決め、ルクイヴの魂に向かっていった。
「そぉうれッッッ!!!それそれ!!」
「地級第一位・氷結晶の弾花。」
スドラは爪や牙で裂き、エリガラードは弾ける氷の刺々しい花を複数個設置して、白い管を破壊してゆく。
「3分の1・・・といったところでしょうか?」
「このまま押し切ればいずれ・・・ッッッ!!!」
突然ルクイヴの魂に歯が剥き出しになった口が『ボコッ!!』と複数浮かび上がり、そこから黒い霧が一気に放出された。
何か不吉な気配を察知したエリガラードが、すかさずスドラの周りに氷の防壁を展開する。
「大丈夫ですか!?」
「ああ。だが今のは一体・・・。」
「スドラ!!腕!!」
見るとスドラの下左腕が、モノクロになっており、それが侵食するかのように上に伸びているではないか。
スドラは慌ててモノクロになった腕を自切して、新しく生やす。
「魂の口が吐いた黒い霧・・・。あれにも液体と同じく、触れたり吸ったりした者を記録に変える力があるようですね。」
「ここぞと時に迂闊に近寄れぬとは・・・!!」
ルクイヴの魂に付いた口が、歯をガチガチとさせて震える。
「奴め・・・嗤っておる・・・!!」
「❝近づけるものなら近づいてみろ。❞とでも言いたいのですね。」
「どこまでも狡い奴だ。良かろう・・・。その高慢の魂の性根、文字通り全部断ち切ってやるわ!」
「私もです。小馬鹿にしてくれたツケ、まとめて払ってもらわなくては・・・。」
◇◇◇
『「ルクイヴ様の魂を、アイツ等見つけ・・・!?」』
「よそ見をするでないぞ。」
「え・・・がふっ!?!?」
リセはエンティの頭を鷲掴みにすると、そのまま塔に沿って飛び立った。
エンティ・・・もとい彼女が憑いているヘルヴェの頭がゴリゴリと削られる感触がリセの腕に伝わる。
塔の最上階まで到達すると、リセは掴んだエンティの頭を勢いよく放り投げた。
街並みを破壊しながら、エンティは塔からだいぶ距離が離れた場所まで吹っ飛んだ。
『「痛ったぁ~!ひどいよリセ姉ちゃん~。」』
身体を再生させながら、エンティはゆっくり立ち上がる。
『「でも残念だったね。リセ姉ちゃんには、私は殺せない。」』
「当然だ。」
『「は?」』
「言ったであろう?魔族に冥府の魔能は効かぬと。お前は魂こそ人間であるが父上・・・冥王ヘルヴェという最高位の魔族の肉体を殻にしておる。つまり、お前に妾は殺せない。その逆も然り・・・ということだ。」
『「話が早いじゃん。で?それでどうするの?意味ない殺し合いをやって、時間稼ぎでもする?」』
「いや。そのつもりなど毛頭ない。」
『「え?」』
「殻で守られているのであらば、それごと燃やし尽くせば良いこと。この国の人間どもは城門の反対側に避難させているのは知っておる。まだ分からんのか?最初の位置に戻っておることを?」
見ると初めに戦った場所、つまり避難民がいる反対側に自分達は今いる。
『「なっ、何をするつもり?」』
「簡単なことよ。ただ一歩踏み出すだけだ。」
腹を括ったリセはそっと目を閉じ、意識を集中させ、かの魔能を詠唱する。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「天級第一位・冥王の降臨。」
次の瞬間、巨大な漆黒の火柱が上がり、リセの角、翼脚、尾は冥府の炎を帯びた。
「はっ、ははっ・・・!!まさか・・・上手くいくとは!!」
自分の手の平を見つめて、リセは喜びに震えた。
❝天級第一位魔能・冥王の降臨は、行使すると強大な力を得る代わりに理性を無くしてしまい、破壊の限りを尽くしてしまう禁忌の魔能。
だが、それは魔族以外の種族が使えばの話。
高位の魔族、つまり冥王ヘルヴェと血統が近ければ、理性を失わず、魔能の中断もできる。
これまでのリセは、冥王の娘でありながら、この魔能を使いこなすのに少々難があり、失敗する度に父であるヘルヴェに止められ、行使を躊躇った。
正直この局面でも、成功するかは五分五分だった。
しかし、二度に渡る復活を通じて、魔族として悟りの極致へと至ったリセは見事、父から授かったかの魔能を使いこなすことが成った。
手の平を上にし、親指以外を曲げて、リセはエンティを挑発した。
「来い。お前に魔族の本懐・・・とくと見せてやろう。」
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