上 下
455 / 514
最終章:無双代行の結末

オルテストの戦い⑱・魂の根付く場所

しおりを挟む
現世でリセが、冥府の姫として二度目の復活を果たす一方、魔歴書院ルクイヴの本体ではスドラとエリガラードが階層を破壊しながら、その魂が隠された場所を見つけるために駆けずり回っていた。

しかし暴れれば暴れる程、階層の変動と、触れるとになってしまう黒いインクによる妨害が激化の一途をたどる。

「うっ・・・!!この!!」

飛行するスドラの前に突然、白黒の建物の塊が飛び出てきた。

スドラはそれを強引に破壊して突破したが、続いて黒いインクが意思を持った滝となって襲い掛かる。

「任せて下さい。」

エリガラードが手から冷気を発生させると、黒いインクの滝は瞬く間に凍りつき、スドラはそれを拳で粉砕した。

「くそッッッ!!!一体どのページ階層に魂があるというのだ!?どれだけ探させれば気が済む!?!?」

かれこれもうすでに一時間近く破壊と探索を継続しているが、一向に見つからないルクイヴの魂に、スドラは苛立ちを募らせる。

記録とインクによる妨害も受けているのだから、それは尚のこと。

「落ち着きなさいスドラ。ここで焦っては余計に発見が困難になってしまいます。」

「では悠長に構えておれというのか!?一刻も早く奴の魂を破壊しなければ他の者の身が持たんのだぞッッッ!!!」

スドラの言い分も一理ある。

迅速に事を成さなければ、自分達だけでなく、残してきた仲間が生き残る可能性もジリジリと削られていく。

「そうですね・・・。何かいい方法は・・・。」

焦燥感を必死に抑え込み、エリガラードは知恵を搾る。

一万年以上の時を経て培った経験と勘をフルに回転させて・・・。

・・・・・・・。

・・・・・・・。

「スドラ。あなたの先程の話から、この空間を肉体、魂を病巣と考えていいのですよね?」

「それが何なのだ!?」

「では一つ聞きます。ますか?」

突拍子のない例え話に、スドラは一瞬固まった。

「んんっ?そう、だな・・・。」

頭を暫し捻って、スドラはその問いの答えを思いついた。

「見つかりにくい場所・・・?いや違うな。厳密には、に隠るな・・・。」

「やはり・・・!!!」

エリガラードは何か思いついたかのようにパッと目を見開いた。

「どうした?」

があなたに暴れるように言ったのは、ただ闇雲に魂を見つけさせるためではなかった!!を読み取らせるためだったのかッッッ!!!」

「どういうことだ?」

「人は何かを隠そうとする時、それを守ろうとあらゆる手段を講じて探索者を妨害します。ですが、ら?かなりのリスクを伴いますが、それは鉄壁の目くらましになります。宝が埋まっている場所を守ろうとしない馬鹿はいませんからね。」

「そうだとしても我のことを誤魔化せるとは思えんが?」

「あなたは興じたり焦ったりすると、周りが見えなくなる性分ですからね。は私が同行することを見越して、あなたにその案を・・・。」

サラッと自分がディスられていると捉えたスドラはムッとした。

「ほっ、ほほう・・・。そう言うお前は、目ぼしい場所は見つけたのか?」

「上を見て下さい。」

スドラは上の階層を、目をよく凝らして見た。

そしてハッとした。

自分達の20階層上辺り、明らかに黒いインクがほとんど出ていない。

まるで、に守っているかのように・・・。

「なんと・・・!!」

「階層を移動される前にあそこを・・・!!」

「ブチ抜くのだな!?任せろッッッ!!!」

目的の階層へのダメージが最小限になるように、スドラは手加減して熱線を上層に向かって吐いた。

そして・・・

四方八方に血管のように白いインクの枝を伸ばし、心臓のように鼓動を打つ赤黒い巨大な肉塊を。

それこそが、❝録魔雄ろくまゆう・ルクイヴ=ミニステラ=ジェルテロス❞の本体にして魂であった。

次の瞬間、地鳴りのようだが、明らかに人の叫びとしか思えない低い轟音が魔歴書院全体に響き渡った。




◇◇◇




「今の音って・・・!!」

スドラの予想通り、ルクイヴのは現実世界にまで及び、トヴィリンとリセはそれを確かに聞き取った。

「リセさんッッッ!!!」

「ああ、はしかと受け取った。ここからが正念場ぞ!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...