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最終章:無双代行の結末
オルテストの戦い⑱・魂の根付く場所
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現世でリセが、冥府の姫として二度目の復活を果たす一方、魔歴書院ではスドラとエリガラードが階層を破壊しながら、その魂が隠された場所を見つけるために駆けずり回っていた。
しかし暴れれば暴れる程、階層の変動と、触れると記録になってしまう黒いインクによる妨害が激化の一途をたどる。
「うっ・・・!!この!!」
飛行するスドラの前に突然、白黒の建物の塊が飛び出てきた。
スドラはそれを強引に破壊して突破したが、続いて黒いインクが意思を持った滝となって襲い掛かる。
「任せて下さい。」
エリガラードが手から冷気を発生させると、黒いインクの滝は瞬く間に凍りつき、スドラはそれを拳で粉砕した。
「くそッッッ!!!一体どのページに魂があるというのだ!?どれだけ探させれば気が済む!?!?」
かれこれもうすでに一時間近く破壊と探索を継続しているが、一向に見つからないルクイヴの魂に、スドラは苛立ちを募らせる。
記録とインクによる妨害も受けているのだから、それは尚のこと。
「落ち着きなさいスドラ。ここで焦っては余計に発見が困難になってしまいます。」
「では悠長に構えておれというのか!?一刻も早く奴の魂を破壊しなければ他の者の身が持たんのだぞッッッ!!!」
スドラの言い分も一理ある。
迅速に事を成さなければ、自分達だけでなく、残してきた仲間が生き残る可能性もジリジリと削られていく。
「そうですね・・・。何かいい方法は・・・。」
焦燥感を必死に抑え込み、エリガラードは知恵を搾る。
一万年以上の時を経て培った経験と勘をフルに回転させて・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「スドラ。あなたの先程の話から、この空間を肉体、魂を病巣と考えていいのですよね?」
「それが何なのだ!?」
「では一つ聞きます。あなたがその病巣ならどこに隠れ潜みますか?」
突拍子のない例え話に、スドラは一瞬固まった。
「んんっ?そう、だな・・・。」
頭を暫し捻って、スドラはその問いの答えを思いついた。
「見つかりにくい場所・・・?いや違うな。厳密には、一見すると影響が見つけにくい場所に隠るな・・・。」
「やはり・・・!!!」
エリガラードは何か思いついたかのようにパッと目を見開いた。
「どうした?」
「あの人があなたに暴れるように言ったのは、ただ闇雲に魂を見つけさせるためではなかった!!抵抗してきた際の行動パターンを読み取らせるためだったのかッッッ!!!」
「どういうことだ?」
「人は何かを隠そうとする時、それを守ろうとあらゆる手段を講じて探索者を妨害します。ですが、敢えて本命の場所の守りをしなかったら?かなりのリスクを伴いますが、それは鉄壁の目くらましになります。宝が埋まっている場所を守ろうとしない馬鹿はいませんからね。」
「そうだとしても我のことを誤魔化せるとは思えんが?」
「あなたは興じたり焦ったりすると、周りが見えなくなる性分ですからね。あの人は私が同行することを見越して、あなたにその案を・・・。」
サラッと自分がディスられていると捉えたスドラはムッとした。
「ほっ、ほほう・・・。そう言うお前は、目ぼしい場所は見つけたのか?」
「上を見て下さい。」
スドラは上の階層を、目をよく凝らして見た。
そしてハッとした。
自分達の20階層上辺り、明らかに黒いインクがほとんど出ていない。
まるで、ほんの申し訳程度に守っているかのように・・・。
「なんと・・・!!」
「階層を移動される前にあそこを・・・!!」
「ブチ抜くのだな!?任せろッッッ!!!」
目的の階層へのダメージが最小限になるように、スドラは手加減して熱線を上層に向かって吐いた。
そして・・・見つけた。
四方八方に血管のように白いインクの枝を伸ばし、心臓のように鼓動を打つ赤黒い巨大な肉塊を。
それこそが、❝録魔雄・ルクイヴ=ミニステラ=ジェルテロス❞の本体にして魂であった。
次の瞬間、地鳴りのようだが、明らかに人の叫びとしか思えない低い轟音が魔歴書院全体に響き渡った。
◇◇◇
「今の音って・・・!!」
スドラの予想通り、ルクイヴの叫びは現実世界にまで及び、トヴィリンとリセはそれを確かに聞き取った。
「リセさんッッッ!!!」
「ああ、合図はしかと受け取った。ここからが正念場ぞ!!」
しかし暴れれば暴れる程、階層の変動と、触れると記録になってしまう黒いインクによる妨害が激化の一途をたどる。
「うっ・・・!!この!!」
飛行するスドラの前に突然、白黒の建物の塊が飛び出てきた。
スドラはそれを強引に破壊して突破したが、続いて黒いインクが意思を持った滝となって襲い掛かる。
「任せて下さい。」
エリガラードが手から冷気を発生させると、黒いインクの滝は瞬く間に凍りつき、スドラはそれを拳で粉砕した。
「くそッッッ!!!一体どのページに魂があるというのだ!?どれだけ探させれば気が済む!?!?」
かれこれもうすでに一時間近く破壊と探索を継続しているが、一向に見つからないルクイヴの魂に、スドラは苛立ちを募らせる。
記録とインクによる妨害も受けているのだから、それは尚のこと。
「落ち着きなさいスドラ。ここで焦っては余計に発見が困難になってしまいます。」
「では悠長に構えておれというのか!?一刻も早く奴の魂を破壊しなければ他の者の身が持たんのだぞッッッ!!!」
スドラの言い分も一理ある。
迅速に事を成さなければ、自分達だけでなく、残してきた仲間が生き残る可能性もジリジリと削られていく。
「そうですね・・・。何かいい方法は・・・。」
焦燥感を必死に抑え込み、エリガラードは知恵を搾る。
一万年以上の時を経て培った経験と勘をフルに回転させて・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「スドラ。あなたの先程の話から、この空間を肉体、魂を病巣と考えていいのですよね?」
「それが何なのだ!?」
「では一つ聞きます。あなたがその病巣ならどこに隠れ潜みますか?」
突拍子のない例え話に、スドラは一瞬固まった。
「んんっ?そう、だな・・・。」
頭を暫し捻って、スドラはその問いの答えを思いついた。
「見つかりにくい場所・・・?いや違うな。厳密には、一見すると影響が見つけにくい場所に隠るな・・・。」
「やはり・・・!!!」
エリガラードは何か思いついたかのようにパッと目を見開いた。
「どうした?」
「あの人があなたに暴れるように言ったのは、ただ闇雲に魂を見つけさせるためではなかった!!抵抗してきた際の行動パターンを読み取らせるためだったのかッッッ!!!」
「どういうことだ?」
「人は何かを隠そうとする時、それを守ろうとあらゆる手段を講じて探索者を妨害します。ですが、敢えて本命の場所の守りをしなかったら?かなりのリスクを伴いますが、それは鉄壁の目くらましになります。宝が埋まっている場所を守ろうとしない馬鹿はいませんからね。」
「そうだとしても我のことを誤魔化せるとは思えんが?」
「あなたは興じたり焦ったりすると、周りが見えなくなる性分ですからね。あの人は私が同行することを見越して、あなたにその案を・・・。」
サラッと自分がディスられていると捉えたスドラはムッとした。
「ほっ、ほほう・・・。そう言うお前は、目ぼしい場所は見つけたのか?」
「上を見て下さい。」
スドラは上の階層を、目をよく凝らして見た。
そしてハッとした。
自分達の20階層上辺り、明らかに黒いインクがほとんど出ていない。
まるで、ほんの申し訳程度に守っているかのように・・・。
「なんと・・・!!」
「階層を移動される前にあそこを・・・!!」
「ブチ抜くのだな!?任せろッッッ!!!」
目的の階層へのダメージが最小限になるように、スドラは手加減して熱線を上層に向かって吐いた。
そして・・・見つけた。
四方八方に血管のように白いインクの枝を伸ばし、心臓のように鼓動を打つ赤黒い巨大な肉塊を。
それこそが、❝録魔雄・ルクイヴ=ミニステラ=ジェルテロス❞の本体にして魂であった。
次の瞬間、地鳴りのようだが、明らかに人の叫びとしか思えない低い轟音が魔歴書院全体に響き渡った。
◇◇◇
「今の音って・・・!!」
スドラの予想通り、ルクイヴの叫びは現実世界にまで及び、トヴィリンとリセはそれを確かに聞き取った。
「リセさんッッッ!!!」
「ああ、合図はしかと受け取った。ここからが正念場ぞ!!」
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