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最終章:無双代行の結末
オルテストの戦い⑭・切り拓かれた風穴
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我はこれまでのことを包み隠さず正直に話した。
ルクイヴの正体、ヴァリエルの記録との邂逅について・・・。
「そういうことが・・・。」
「魔能で作った書物に魂を移すとは・・・!!児鬼種たる余でも薄ら寒さを感じる所業ぞ!!」
「この書庫の主は、もはや人に在らずということかッッッ!!!」
皆口々にルクイヴに恐怖と怒りの混じった言葉を述べた。
我は恐る恐るエリガラードの方を見た。
奴はただ黙っているのみだった。
熱く、熱く愛し合い、無慈悲にも奪われてしまった伴侶が、偽物とはいえ同じ空間にいるのだ。
話す前は取り乱して、今すぐにでも会わせろと掴みかかってくると思ったが、結果はそうではなかった。
逆にそれが、我を不安にさせた・・・。
「プリクトス、アローグン、ゴルーヅ。あなた達はそれぞれ森精人、岩削人、リセの軍勢を率いてこの階層に留まって、守りを固めて下さい。またあの黒い水がいつこの空間から染み出るか分かりません。あれは極めて厄介です。触れただけでも命を奪われ、書物に変えられてしまう・・・。徹して油断をしないように。」
「エリガラード様は?」
「私は・・・スドラとともにルクイヴの魂を探します。魂こそがあの者の弱点です。おそらく、妨害も他の階層の比ではないでしょう。むしろ二人だけで行動した方が、お互いをカバーできて、かつ周りを気にせず事が進めるでしょう。それでいいですか?スドラ。」
「わっ、分かった。では各々配置に着け!!一刻でも早く奴を倒すと約束する!故にどうか持ちこたえてくれ!!」
我が檄を飛ばすと、皆再び襲い来る黒い液体に備えて陣形を整え始めた。
「スドラ、私達も行きましょう。」
「ああ。お前、いいのか?」
「何がですか?」
「無理をしておるのではないか?何だったら、奴のいる階層まで連れて行ってやるが・・・」
「スドラ。ヴァリエルは・・・あの人は死んだのです。今ここにいるのはあの人の記録に過ぎない・・・。どんなに姿形が似てても、声が同じでも、記憶があろうとも、死者の代わりにはならない。勿論怨みはあります。あの人を奪われた・・・。だけど未練はありません。ならば私達は、自分にできることを、やり遂げるまでです。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「そうだな。我としたことが、お前という女を甘くみていたようだ。お前は過去に囚われる程弱くはない。ゆくぞ!今の我々には、ともに背中を預けて戦う若き者達を守る責務があるのだから!!」
「ええ、その通りです。」
エリガラードを背中に乗せ、我は飛び立った。
ルクイヴの魂を見つけるために。
しかし何故か。
背中越しに、奴の手が震えている気がした。
◇◇◇
床に満たされた黒い液体の上を、ヴァリエルの記録は当たり前のように歩いていた。
元々この空間の記録である彼は、書物に変えられる心配がなかったのだ。
「このインクみたいな真っ黒な水・・・俺には効かないが明らかヤバいモンだってのは肌で感じる。奴も抵抗を始めたようだな。だがそれは、スドラの野郎が暴れ回ってくれた効果が出始めたってことだ!!おかげで綻びも見つかった!感謝するぜ!!」
ヴァリエルは持っていた剣を槍のように持ち変えて掲げた。
「天級第五位・空間を貫き投擲!!」
ヴァリエルの記録が投擲した剣は魔歴書院の天井に刺さり、そこから微かな光が漏れ出た。
「地級第二位・友魂探索。」
目を閉じ、精神を集中させ、現実世界のスドラの味方を探るヴァリエルの記録。
(どこだぁ?どこにいる?)
オルテスト中に意識を集中するヴァリエルの記録。
すると、波長に誰かが引っかかった。
(スドラに敵対心を持ってない奴が三人いる・・・。コイツ等か!?)
早速ヴァリエルの記録は、その内の一人の精神の中に自分の意識を流し込んだ。
「おい、俺の声が聞こえるか?」
(あっ、あなたは!?)
「スドラの古いダチ・・・とでも言っておくよ。」
(スドラ様の!?あの方は今ご無事で!?)
「安心しろ。奴等は無事だ。今のところ・・・だがな。名前は何ていうんだ?嬢ちゃん?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
(トヴィリンです。)
「そうか。じゃあトヴィリン。挨拶がてら互いに情報共有としようじゃねぇか。力を合わせて、このピンチを乗り越えようぜ?」
ルクイヴの正体、ヴァリエルの記録との邂逅について・・・。
「そういうことが・・・。」
「魔能で作った書物に魂を移すとは・・・!!児鬼種たる余でも薄ら寒さを感じる所業ぞ!!」
「この書庫の主は、もはや人に在らずということかッッッ!!!」
皆口々にルクイヴに恐怖と怒りの混じった言葉を述べた。
我は恐る恐るエリガラードの方を見た。
奴はただ黙っているのみだった。
熱く、熱く愛し合い、無慈悲にも奪われてしまった伴侶が、偽物とはいえ同じ空間にいるのだ。
話す前は取り乱して、今すぐにでも会わせろと掴みかかってくると思ったが、結果はそうではなかった。
逆にそれが、我を不安にさせた・・・。
「プリクトス、アローグン、ゴルーヅ。あなた達はそれぞれ森精人、岩削人、リセの軍勢を率いてこの階層に留まって、守りを固めて下さい。またあの黒い水がいつこの空間から染み出るか分かりません。あれは極めて厄介です。触れただけでも命を奪われ、書物に変えられてしまう・・・。徹して油断をしないように。」
「エリガラード様は?」
「私は・・・スドラとともにルクイヴの魂を探します。魂こそがあの者の弱点です。おそらく、妨害も他の階層の比ではないでしょう。むしろ二人だけで行動した方が、お互いをカバーできて、かつ周りを気にせず事が進めるでしょう。それでいいですか?スドラ。」
「わっ、分かった。では各々配置に着け!!一刻でも早く奴を倒すと約束する!故にどうか持ちこたえてくれ!!」
我が檄を飛ばすと、皆再び襲い来る黒い液体に備えて陣形を整え始めた。
「スドラ、私達も行きましょう。」
「ああ。お前、いいのか?」
「何がですか?」
「無理をしておるのではないか?何だったら、奴のいる階層まで連れて行ってやるが・・・」
「スドラ。ヴァリエルは・・・あの人は死んだのです。今ここにいるのはあの人の記録に過ぎない・・・。どんなに姿形が似てても、声が同じでも、記憶があろうとも、死者の代わりにはならない。勿論怨みはあります。あの人を奪われた・・・。だけど未練はありません。ならば私達は、自分にできることを、やり遂げるまでです。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「そうだな。我としたことが、お前という女を甘くみていたようだ。お前は過去に囚われる程弱くはない。ゆくぞ!今の我々には、ともに背中を預けて戦う若き者達を守る責務があるのだから!!」
「ええ、その通りです。」
エリガラードを背中に乗せ、我は飛び立った。
ルクイヴの魂を見つけるために。
しかし何故か。
背中越しに、奴の手が震えている気がした。
◇◇◇
床に満たされた黒い液体の上を、ヴァリエルの記録は当たり前のように歩いていた。
元々この空間の記録である彼は、書物に変えられる心配がなかったのだ。
「このインクみたいな真っ黒な水・・・俺には効かないが明らかヤバいモンだってのは肌で感じる。奴も抵抗を始めたようだな。だがそれは、スドラの野郎が暴れ回ってくれた効果が出始めたってことだ!!おかげで綻びも見つかった!感謝するぜ!!」
ヴァリエルは持っていた剣を槍のように持ち変えて掲げた。
「天級第五位・空間を貫き投擲!!」
ヴァリエルの記録が投擲した剣は魔歴書院の天井に刺さり、そこから微かな光が漏れ出た。
「地級第二位・友魂探索。」
目を閉じ、精神を集中させ、現実世界のスドラの味方を探るヴァリエルの記録。
(どこだぁ?どこにいる?)
オルテスト中に意識を集中するヴァリエルの記録。
すると、波長に誰かが引っかかった。
(スドラに敵対心を持ってない奴が三人いる・・・。コイツ等か!?)
早速ヴァリエルの記録は、その内の一人の精神の中に自分の意識を流し込んだ。
「おい、俺の声が聞こえるか?」
(あっ、あなたは!?)
「スドラの古いダチ・・・とでも言っておくよ。」
(スドラ様の!?あの方は今ご無事で!?)
「安心しろ。奴等は無事だ。今のところ・・・だがな。名前は何ていうんだ?嬢ちゃん?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
(トヴィリンです。)
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