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最終章:無双代行の結末
オルテストの戦い⑩・星の下、或いは異界の中
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下賤な人間め。
よりにもよって我が最大の宿敵たる森精人の救世主・ヴァリエルの記録を呼び出すとはな・・・。
生気のない目で剣を向ける奴を見て強く思う。
「消してやりたい。」と。
あいつは、そんな冷徹な目をするような男ではなかった!!
人と同じ大きさに縮み、我はヴァリエルの記録の頭を殴り潰しに行った。
ところが目の前のモノは我の一打を避け、剣で腕を斬り飛ばした。
殴りつけた腕ではなく、全ての腕をだ。
「速い。とてもじゃないが目で追えない。さすがは界竜王を滅ぼすために生まれた者だけはある。」
乾いた拍手をしながらヴァリエルの記録の動きを称賛する、この異界の書庫の主人。
我にはそれが、自画自賛のように思えてしまい、臓腑の全てが煮えくる。
良かろう。
まずは貴様から始末してくれようッッッ!!!
狙いを書庫の主に変えたが、寸でで奴の邪魔が入った。
コイツ・・・たかが記録のくせに、誰が主人か心得ているというのかぁ!!
頭に更に血が上った我は、ヴァリエルの記録の上下の胴を泣き別れさせるべく横に蹴る。
ところが奴は、それをいなし、我の首を刎ねた。
「バカが!!たとえ肉片一つになろうとも、我は復活できるのだぞッッッ!!!」
新しい首を生やした我は、上から書庫の主を狙おうと飛び立ったが、追ってきたヴァリエルの記録と異空間の空で激しく衝突する。
近づこうにも中々近づけぬもどかしさ。
そしてどこまでも虚に満ちた友の顔のせいで、我の苛立ちはいよいよ頂点に達した。
「魂のない記録の分際で動きを正確に真似しおって・・・!!少しは戦いの悦というのを味わったらどうだ!?!?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「そっちこそ、ちょっとは頭を冷やせよ?白黒の俺がそんなに嫌いかい?」
「え・・・?」
驚いた顔をする書庫の主。
「ちょっと、待って・・・。ただの記録が口を利くなんて・・・。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「フッ・・・!くくっ・・・。くはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
奴の懐かしいニヤケ面を見た瞬間、我は狂喜の笑いを上げた。
「あの人間の驚いた様!!やはり貴様はこの世の物差しでは計れぬ存在だったということだなッッッ!!!」
「そんな大層なモンじゃないよ。今の俺はあくまで記録。後世の人間達が書き連ねた文章がごちゃ混ぜになった結果生まれたただの残滓に過ぎない・・・。本物じゃないんだ。」
「そんな些末なことはどうでも良い!!こうして我はお前と同じ星の下・・・いや異界の中か!!再び巡り会えたのだ!あの時我が、友と認めたヴァリエルとな!!まっこと・・・狂える程に喜ばしいッッッ!!!」
「スドラ、お前ってヤツは・・・相変わらず純粋で嬉しいよ。」
「お前も大概だぞ!!さて、再会の悦も程よく味わえたところで・・・分かっておろうな?」
「ああ。久しぶりに・・・遊ぼうぜ?」
喜びに震えながら、我は元の大きさまで戻った。
すぐにヴァリエルは、巨躯となった我の全身を切り刻んだ。
身体に感じる無数の刀傷の痛みが、逆に我を恍惚へと溺れさせる。
おお、これだ。
先程の無機質な攻撃とは訳が違う。
斬撃を通じて、奴の心を、魂を感じるッッッ!!!
上空に舞い上がり、奴の頭上に巨大な拳を振り下ろす。
勿論毛加減なく、本気で殺すつもりで。
しかし奴は、我の腕よりも遥かに小さな剣の、それも一振りで二の腕から拳にかけて斬り飛ばしてみせた。
「これが・・・❝界竜王・スドラ❞と❝始まりの救世主・ヴァリエル❞・・・。こんな異次元の力のぶつかり合い・・・まともじゃない・・・。」
「あの人間の怯えた様・・・滑稽だな。」
「当たり前だ。傍から見たら天変地異だぜ?」
「くくっ!そうだな!ところでお前・・・先程から剣技しか使っておらぬが?」
「なんか知らねぇけど浮遊魔能しか使えねぇんだわ。大方、この空間にも再現できるモノに限界でもあるんじゃないの?」
「そうか・・・。」
「そんな凹んだ顔をすんな!久しぶりのケンカの〆はアレにしようぜ?」
「なんと・・・!!耐えられるのか?」
「俺なら大丈夫だぜ。勿論、魔歴書院もな。」
「本当か?」
「俺を誰だと思ってんだ?」
「そうだったな・・・。やろう!!」
胸の殻を開き、我は大きく息を吸い込んだ。
「一万年振りの再会の記念だ!!有り難く受け取れッッッ!!!」
光の波動を口から吐くと、ヴァリエルはそれを剣で分かちながらゆっくりと近づいてきた。
「しっかり貰ったぜ!!スドラ!!俺の親友ッッッ!!!」
奴と顔を合わせた瞬間、周囲は眩い白い光に包まれ、何も見えなくなった。
よりにもよって我が最大の宿敵たる森精人の救世主・ヴァリエルの記録を呼び出すとはな・・・。
生気のない目で剣を向ける奴を見て強く思う。
「消してやりたい。」と。
あいつは、そんな冷徹な目をするような男ではなかった!!
人と同じ大きさに縮み、我はヴァリエルの記録の頭を殴り潰しに行った。
ところが目の前のモノは我の一打を避け、剣で腕を斬り飛ばした。
殴りつけた腕ではなく、全ての腕をだ。
「速い。とてもじゃないが目で追えない。さすがは界竜王を滅ぼすために生まれた者だけはある。」
乾いた拍手をしながらヴァリエルの記録の動きを称賛する、この異界の書庫の主人。
我にはそれが、自画自賛のように思えてしまい、臓腑の全てが煮えくる。
良かろう。
まずは貴様から始末してくれようッッッ!!!
狙いを書庫の主に変えたが、寸でで奴の邪魔が入った。
コイツ・・・たかが記録のくせに、誰が主人か心得ているというのかぁ!!
頭に更に血が上った我は、ヴァリエルの記録の上下の胴を泣き別れさせるべく横に蹴る。
ところが奴は、それをいなし、我の首を刎ねた。
「バカが!!たとえ肉片一つになろうとも、我は復活できるのだぞッッッ!!!」
新しい首を生やした我は、上から書庫の主を狙おうと飛び立ったが、追ってきたヴァリエルの記録と異空間の空で激しく衝突する。
近づこうにも中々近づけぬもどかしさ。
そしてどこまでも虚に満ちた友の顔のせいで、我の苛立ちはいよいよ頂点に達した。
「魂のない記録の分際で動きを正確に真似しおって・・・!!少しは戦いの悦というのを味わったらどうだ!?!?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「そっちこそ、ちょっとは頭を冷やせよ?白黒の俺がそんなに嫌いかい?」
「え・・・?」
驚いた顔をする書庫の主。
「ちょっと、待って・・・。ただの記録が口を利くなんて・・・。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「フッ・・・!くくっ・・・。くはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
奴の懐かしいニヤケ面を見た瞬間、我は狂喜の笑いを上げた。
「あの人間の驚いた様!!やはり貴様はこの世の物差しでは計れぬ存在だったということだなッッッ!!!」
「そんな大層なモンじゃないよ。今の俺はあくまで記録。後世の人間達が書き連ねた文章がごちゃ混ぜになった結果生まれたただの残滓に過ぎない・・・。本物じゃないんだ。」
「そんな些末なことはどうでも良い!!こうして我はお前と同じ星の下・・・いや異界の中か!!再び巡り会えたのだ!あの時我が、友と認めたヴァリエルとな!!まっこと・・・狂える程に喜ばしいッッッ!!!」
「スドラ、お前ってヤツは・・・相変わらず純粋で嬉しいよ。」
「お前も大概だぞ!!さて、再会の悦も程よく味わえたところで・・・分かっておろうな?」
「ああ。久しぶりに・・・遊ぼうぜ?」
喜びに震えながら、我は元の大きさまで戻った。
すぐにヴァリエルは、巨躯となった我の全身を切り刻んだ。
身体に感じる無数の刀傷の痛みが、逆に我を恍惚へと溺れさせる。
おお、これだ。
先程の無機質な攻撃とは訳が違う。
斬撃を通じて、奴の心を、魂を感じるッッッ!!!
上空に舞い上がり、奴の頭上に巨大な拳を振り下ろす。
勿論毛加減なく、本気で殺すつもりで。
しかし奴は、我の腕よりも遥かに小さな剣の、それも一振りで二の腕から拳にかけて斬り飛ばしてみせた。
「これが・・・❝界竜王・スドラ❞と❝始まりの救世主・ヴァリエル❞・・・。こんな異次元の力のぶつかり合い・・・まともじゃない・・・。」
「あの人間の怯えた様・・・滑稽だな。」
「当たり前だ。傍から見たら天変地異だぜ?」
「くくっ!そうだな!ところでお前・・・先程から剣技しか使っておらぬが?」
「なんか知らねぇけど浮遊魔能しか使えねぇんだわ。大方、この空間にも再現できるモノに限界でもあるんじゃないの?」
「そうか・・・。」
「そんな凹んだ顔をすんな!久しぶりのケンカの〆はアレにしようぜ?」
「なんと・・・!!耐えられるのか?」
「俺なら大丈夫だぜ。勿論、魔歴書院もな。」
「本当か?」
「俺を誰だと思ってんだ?」
「そうだったな・・・。やろう!!」
胸の殻を開き、我は大きく息を吸い込んだ。
「一万年振りの再会の記念だ!!有り難く受け取れッッッ!!!」
光の波動を口から吐くと、ヴァリエルはそれを剣で分かちながらゆっくりと近づいてきた。
「しっかり貰ったぜ!!スドラ!!俺の親友ッッッ!!!」
奴と顔を合わせた瞬間、周囲は眩い白い光に包まれ、何も見えなくなった。
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